【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第641話 迷宮都市 武術稽古 お礼の『酢豚』と『肉まん』&飛翔魔法

公開日時: 2023年12月21日(木) 12:05
更新日時: 2024年4月13日(土) 12:09
文字数:2,118

 ガルムを10匹テイムしてしまい動揺する気持ちを、なんとか料理に没頭ぼっとうする事で抑えていたらいつの間にか出来上がっていた。

 庭にはテーブルと椅子が準備され、待っている間ご老人達と男性陣が将棋を指している。

 料理が完成したのに気付いた三男のキースさんが、すかさず配膳を手伝ってくれので、完成した料理をしずくちゃんのお母さんと木の下へお供えにいく。

 

「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『酢豚』と『肉まん』です。『肉まん』は蒸し立てで熱いから注意して下さいね。それでは頂きましょう」


「頂きます!」


 ハイオーク肉を消費するため、豚肉を使用した料理を作った。

 『肉まん』は1個じゃ足りないと思い1人2個ずつ用意。

 前回焼売を作った時は蒸し器が足りず待たせてしまったから、数を増やしておいたのだ。

 『酢豚』にはダンジョン産のパイナップルを入れたけど、酸味がある食べ物は大丈夫だろうか?


「おおっ! これが『肉まん』かぁ。姫様が冬になると食べたがっておったわい」


 そう言って、嬉しそうにガーグ老が『肉まん』へかぶり付く。


「この白いモチモチとした部分が美味しいのぅ~。さぁ、お前も遠慮せず食べるがよい。サラ……ちゃんの料理は絶品だぞ?」


 ガーグ老は隣に座った、騎獣を運んできた男性へ『肉まん』を手渡している。


「お言葉に甘えて頂きます」


 彼は恐縮した様子で『肉まん』を両手で受け取り、不思議そうにながめると口にした途端とたん


「美味しい!」


 と声を上げ、あっという間に完食してしまう。


「姫様が食べたがっていた理由が分かりました。……良かったですね」


 男性は少し目をうるませ2個目に手を伸ばす。

 泣くほど、味に感動してくれたのかしら?

 そんな風に思っていると、今日もドサドサッと木から落ちる音がした。

 妖精さんは、あまり見られたくないだろうと思い知らぬ振りをする。

 雫ちゃんのお母さんがバスケットに何の料理を入れたのか、聞くのを忘れてしまったので分からない。

 音がした方に何気なく視線を向けたいつきおじさんが、落ちた妖精さんを見てあんぐりと口を開いていた。


結花ゆか? バスケットに何を入れたんだ?」


「今日はホットドックと果物よ~」


 あぁ、また激辛な物を……。

 粒マスタードではなく、辛子がたっぷり入っていそうだ。

 それさえ入ってなければ美味しかっただろうに……。

 

「そっ、そうか今朝の朝食と同じなんだな……」


 同じ物を食べた樹おじさんと雫ちゃんが遠い目になる。

 

「『ホットドック』も、姫様から聞いた事のある食べ物ですね」


「あら、まだ残っているから食べますか?」


 男性がそう口にしたのを聞き、雫ちゃんのお母さんがアイテムBOXから出そうとするのを樹おじさんが止めた。


「沙良ちゃんの料理が冷めちゃうから、彼が食べ終えてまだお腹に入るようなら出してあげなさい」


 言った後、小声で男性に「妻の料理は刺激が強いから食べない方がいい」と注意する。

 

!? ……あぁ、そうでいらしたのですか」


 聞いた男性は少女に見える雫ちゃんのお母さんを見て驚き、しばらくして納得したようにうなずいていた。

 見た目年齢の差が激しい夫婦だもんね~。

 食後に木の下へいくと、2通の羊皮紙が残されている。


 『ユカ様。私達は刺激物が苦手なので、果物を沢山食べたいです。』


 ……大量の辛子入りホットドックが辛ったかのか、要望が書いてある。

 ちゃんと希望が届くといいけど……。

 私宛の羊皮紙には、料理のお礼と追加のショートブレッドが欲しいとあった。

 冒険者にも妖精さんにも、ショートブレッドは大人気のようだ。


 将棋の続きをすると言う父とかなで伯父さん、シュウゲンさんと樹おじさんを残し私達はお礼を言いホームに帰った。

 いつもより元気な旭が、「今日はあんまり厳しくなかったよ~」と嬉しそうに報告する。

 そう言えば、なんだか息子さん達と御嫁さん2人は疲れているようだったな。

 いつもより精彩せいさいを欠いているように見えた。

 逆に仕事を休業すると言っていたガーグ老達は元気な様子。

 近衛の仕事を休職している息子さん達は、何で疲れていたのかしら?


 これから勉強する兄達を病院へ送り届け、私は通信の魔道具にセイさんへ居場所と必要な物を連絡して欲しいと書いた羊皮紙を送った。

 返事がくるまで、今日の出来事を振り返る。

 テイム魔法と魅了の組み合わせは、かなり危険らしい。

 意図せずテイムしてしまった10匹のガルム達を、どうしたらいいのか悩んでしまう。

 そしてテイムLvで見られる、従魔のステータス内容もあの男性は把握していなかった。


 飛翔魔法かぁ。

 ガルム達にお願いして掛けてもらえば、私も習得出来そうだけど……。

 それに、新しい火魔法のファイアーウォールも覚えたい!

 父達を迎えにいく時、こっそりお願いしてみよう。

 あぁ、でもまた秘密にしなきゃいけない事が増えたよ。


 セイさんから食べたい物のリクエストが届いたので準備をし、再びガーグ老の工房へ向かった後、ガルちゃん1号のリーダーから飛翔魔法を掛けてもらい無事習得した。

 ファイアーウォールの魔法は何度お願いしても首を横に振られてしまい、火傷を心配しているのか主人に対し掛けられないようだ。

 まぁ、それは仕方ないからあきらめよう。

 飛翔魔法を覚えただけで充分だし、後で練習しなくちゃ!

ポイントを押して下さった方、ブックマークを登録して下さった方、作品を応援して下さった方。

読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。


応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート