納得いかないが、既に14歳なのはどうしようもない。
事実を受け入れ何とかして生活基盤を整えよう。
俺は寝室から沙良のいるダイニングへ戻った。
沙良と日本での俺がどうなったのか考察しつつ、両親にはとても申し訳ない気持ちになった。
多分、行方不明扱いされるとは思うが、子供を2人も亡くし更には俺までとなるとかなり心労をかける事になる。
それに残された茜や双子達に負担がいくのを考えると、どうにもやりきれない。
しかし異世界で知り合いもなく、たった1人で今まで過ごした妹を思うと、自分を召喚したのは良い判断だと言えた。
味方は1人でも多い方が、生きていく上で役に立つ筈だ。
幸い沙良から異世界物の小説を読まされたお陰で、この不測の事態にもなんとか適応出来るだろう。
俺を召喚するに当たり、事前に準備していた夕食は好物の豚カツだった。
こういう用意周到な所は、やはり妹らしく納得してしまう。
まっ大概怒られる前提で、少しでも怒りの矛先が自分に向かないよう考えての行動だったが……。
食事をしながら、沙良が異世界転移後の話をし出す。
早々に公爵邸を抜け出し、冒険者をしていると聞き驚いた。
まぁ、こいつに12歳の公爵令嬢の振りは無理だろう。
しかも、後妻が12歳の少女を虐待していたらしい。
父親に虐待されていた事実を告白し、後妻と連れ子を追い出したと言うから良くやったと褒めてやった。
もし俺が同じ立場なら同じようにしただろうと思う。
貴族なんて面倒臭い生活なんか誰が送れるか。
たとえ裕福な生活だとしても、沙良のホームより快適な家はない。
食材も家族が住んでいた11部屋分が365日あるんだ。
日本食も食べられるし、風呂が入れず困る事もない。
それにしても、妹の能力が高すぎないか?
ホーム内は日本での生活がそのまま送れる仕様になっているし、アイテムBOXは異世界へいったら必ず欲しい能力だ。
マッピングは地図代わりに使え、召喚は規格外も甚だしい。
食後にコーヒーと苺のショートケーキを出された時は、ここが本当に異世界かどうか思わず疑ってしまう。
風呂に入っている間、違和感ありまくりの異世界に可笑しくなり笑ってしまった。
これじゃ日本に住んでいるのと変わらない。
14歳になった体より、生活環境が変わらない事に安心する。
ただこの体に慣れるのと(やたらお腹が空く)、沙良の外見に慣れるまでは時間が掛かるだろう。
あ~、でも俺のマンションと車と貯金がなくなったのは恨むぞ!
LV10毎にホームに出来る拠点が増えるらしいから、絶対マンションをホームにしてもらわないと割に合わない。
突然異世界へ召喚され14歳になり、冒険者として一緒にパーティーを組むんだ。
それぐらいしてくれないと困る。
風呂から出た後で、沙良から【召喚された方へ】と書かれた封筒を手渡された。
読んでみると、俺に与えられた能力が記入されている。
『椎名 沙良様から、召喚された方へ
すべての元凶は私です。
この責任を取り、出来うる限りの保障をさせて頂きました。
まず、いま貴方がいる世界は地球ではありません。
剣と魔法の、ファンタジーである所の異世界です。
椎名 沙良様にあわせ、年齢は設定させて頂きました。
また、異世界の能力3つをご確認下さい。
椎名 賢也様の能力
【光魔法】
●ヒール 怪我を治す事が出来ますが、病気を治す事は出来ません。
●ホーリー HPを回復したり、アンデッド系を攻撃します。
●ライトボール 攻撃魔法。照明代わりにもなります。
まずは「ステータス」と唱え、能力の確認をお勧めします。
最後に、このような不幸な目に遭わせてしまいましたが、これからの貴方の人生が幸多き事でありますよう、お祈り申し上げます。』
どうやら光魔法が使えるらしい。
冒険者をする上で回復する手段があるのは助かる。
これは医者だったのが関係しているんだろうか?
早速「ステータス」と唱え自分の能力を確認した。
椎名 賢也 14歳
レベル 0
HP 50
MP 50
魔法 光魔法(ヒールLv0・ホーリーLv0・ライトボールLv0)
うん?
随分シンプルな内容だな。
回復魔法と攻撃魔法がある分、いくらかマシか……。
残念ながらアイテムBOXは俺になかった。
沙良に召喚されたその日。
初の異世界を全く感じる事なく、俺は眠りに就いたのだった。
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