【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第712話 旭 樹 再召喚 4 Lv上げ&武器と防具の購入&冒険者登録

公開日時: 2024年3月1日(金) 12:05
更新日時: 2024年6月23日(日) 09:53
文字数:3,092

 沙良ちゃんに剣と槍のどちらの武器がいいか聞かれ、槍と答える。

 どちらも使用出来るが、今回は間合いの取れる槍を選んだ。

 娘が持っていた短槍を渡してくる。

 

「あ~、ちょっと俺には短いなぁ。長槍は持ってない?」


 そう言うと、賢也けんや君が自分の長槍と交換してくれた。


「じゃあ、最初にLv上げをするのでスライムを突き刺し倒して下さいね」


 どこに魔物がいるんだ?

 これから魔物が出現する場所へ移動するのか?


「出しますよ!」


 彼女の言葉と同時に、突然スライムが3匹出現した。

 魔物を見たら問答無用で攻撃するのが身に付いている俺は、条件反射で即座に動き槍を振るう。

 やってから、しまったと思ったがもう遅い。

 ひびき、フォローは任せた!


「お父さん! いつきおじさんは槍を習っていたの?」


「樹は剣も槍も、そこそこ使えるぞ」


 驚いた娘からの疑問に、響が当然のように返事をしていた。

 日本でサラリーマンだった俺が、武器を使用出来るのはおかしいだろう。

 その返事で大丈夫か?

 心配して2人の様子をうかがうと、彼女は納得したのかそれ以上質問してこなかった。

 きっと、響が先に同じような事をやらかしたに違いない。

 二番せんじになった俺は助かったな。


「おじさん。次は猪の魔物だよ、大きいから気を付けてね!」


 武器を使用可能だと知り、沙良ちゃんが魔物をスライムからファングボアに変更する。

 いきなり魔物が強くなるな……、娘は意外とスパルタなのか?

 魔物との距離があったので、槍を投擲とうてきし仕留めた。


「次は人型のトカゲです。武器を持っているから注意して下さいね」


 槍を持ったリザードマンには接近し、その武器を絡め取り首を切り裂く。

 冒険者ギルドで換金する際、魔石を取り出す必要がある魔物もいるらしく、魔石取りの練習もさせられる。

 これは正直苦手な作業だ。

 その後、3時間。

 沙良ちゃんが出す魔物を次々と倒し、現在のLvを聞かれてあせった。

 Lv70の俺は何と答えればいい?

 フォロー役の響へ視線を移すと、両手を広げ伸びあがるような仕草しぐさをしている。


「Lv10になったよ」


 響が右手の親指を立てたので、合図をんだのは正解だったようだ。

 沙良ちゃんがテイムした従魔を紹介すると言い、連れてきたのは5匹の大型魔物で唖然あぜんとする。

 魔物をテイムするには、こちらが強いと分からせる必要があるし、殺さないよう戦うのはさじ加減が難しい。

 しかも魔物の種類が違っている。

 違う魔物のテイムは、魔物同士が反発するから出来ないと聞いているのに……。


「大型の魔物を5匹もテイムしてるのか!? 娘が強すぎるんだけどっ!」


 思わず大声を上げた俺をなだめるためか、


「あぁ……。沙良のテイム方法は、かなり特殊なんだ。ちなみに結花ゆかさんも、2匹の魔物をテイムしているぞ」


 響が妻も魔物をテイムしていると教えてくれた。

 しかしテイム魔法は、そんな簡単に習得出来ないはずなんだが……。

 俺は2匹の白ふくろうをテイムした時を思い出す。

 あの時は確かポチをテイムするまで、半日以上掛かった。

 つがいのタマはポチがテイムされた後、大人しく受け入れてくれたんだよなぁ。

 最初はポチが中々慣れず、何度もくしばしで突っつかれたし。


 紹介された従魔の様子を見る限り、娘に従順であるみたいだ。

 調教も上手くいっているらしい。

 ふとポチとタマが気になった。

 ガーグ老が生きているなら、権限を譲渡した2匹もまだ元気でいるだろう。

 俺よりLvが高いから、主人が変わり強くなっているよな。

 新しい魔法を何か覚えているかも知れない。

 可愛がっていた2匹の白梟に会えると思うと、気分が高揚した。


 シルバーと名付けられた従魔に娘と二人乗りし、更に機嫌が良くなる。

 何故なぜか、毛並みがゴールドなのが不思議だった。

 今いるのは迷宮都市のようで、王都とはまた違う雰囲気ふんいきがある。

 武器屋に入ると、ドワーフがおらずがっかりした。

 やはり武器の性能はドワーフが鍛える物が一番高いのだ。

 特に名匠めいしょうと呼ばれるドワーフの得物えものは、体に合わせ作ってもらえるから馴染なじみがいい。

 店内に陳列された既製品の武器を見渡し溜息を吐く。


「俺の武器……。響は何を持ってるんだ?」


 森の家にある愛剣が手元にないのは寂しいな。

 そう思いながら親友に尋ねると、剣を見せてくれた。

 あぁ、その剣は!

 俺がドワーフの爺さんに頼み込んで注文した響専用の物だ。

 ガーグ老が受け取ってくれたのか……。

 ちゃんと本人の手に渡ったようで嬉しくなる。


「いい剣だな……」


「あぁ、気に入っている」


 その短い言葉で、俺からのプレゼントだと分かっていると気付く。

 ありがとうと込められた言外の台詞せりふに、照れ隠しするよううなずいた。

 この店で売っている武器なら、どれも一緒だと思いミスリル製の槍を選ぶ。

 きっとガーグ老が俺の愛剣を渡してくれるに違いない。

 防具屋ではワイバーン製の革鎧を購入。

 冒険者の経験がない俺は、防具を身に着ける習慣がない。

 加護を与えた精霊が常に周囲を結界で守ってくれるからだが……。


 あの王族を守護する額飾りは、何処どこにあるんだろう?

 流石さすがに女官長達は亡くなっているだろうし……。

 宝飾品のたぐいは森の家に残ったままかもな。


 次はいよいよ、冒険者登録だ!

 迷宮都市のギルドマスターは、武をになうハーレイ家が担当している。

 さぞかし迷惑を掛けているだろうが済まない。

 初めて冒険者ギルドに入ると、中には数人の冒険者がおりカウンターには3人の受付嬢の姿があった。

 沙良ちゃんが、その中の1人に声を掛ける。

 受付嬢は、にこやかに笑い俺達を別室まで案内してくれた。

 その後、ギルドマスターと思わしき人物が部屋に入ってくる。

 世代交代したのか、彼女はハーフエルフのようだ。


「新しいパーティーメンバーの冒険者登録とスキップ制度を受けにきました。旭のの旦那さんです」


 娘にそう紹介され、妻は息子の妹になっている設定を思い出す。

 見た目年齢から母親だとは言えず、俺の家族はかなりややこしい関係になっていた。


結花ゆかの夫のいつきです。よろしくお願いします」


「……えっ? ユカさんの夫って……」


 妻との年の差が気になるのか、彼女は驚き固まっている。

 20歳と42歳じゃ仕方ない。

 今の俺の姿を見て、ハイエルフの王女だとは気付けないだろう。

 ステータス表記も旭 樹となっているしな。

 人物鑑定をすれば、その高いステータス値に驚くかも知れないが……。

 沙良ちゃんが、渡された登録用紙を記入し冒険者カードを渡される。

 偽造防止のための血液を垂らすと、F級冒険者と表記されたカードに喜ぶ。

 ずっとあこがれていた冒険者に、やっとなれた!


 ダンジョンに入るにはC級冒険者の資格が必要らしく、これからダンジョンに入りスキップ制度を受けるそうだ。

 ギルドの馬車に乗り込み、ダンジョンへ向かう。

 揺れの少ない馬車での移動は快適だった。

 この馬車は見た目より、かなり魔道具が使われているな。

 絶対、ギルドの馬車じゃないだろう。

 王族のために余分な経費を使わせてしまったようだ。

 後で王宮の財務官に請求するよう伝えておこう。

 ダンジョンへ到着し、中に入るとテンションが上がる。


「これから、ファングボアとリザードマンを見付けて1匹ずつ討伐する様子を見ます。制限時間はありませんので準備が出来次第、移動を開始して下さい」


 スキップ制度は、2匹の魔物を討伐する様子を見せたら合格した。

 再び冒険者ギルドに戻り、今度はC級の冒険者カードを受け取る。

 その際、小声でギルドマスターに馬車の経費は王宮へ請求してくれと伝えると、マジックバッグと冷凍倉庫の賃料も請求していいか返された。

 よく分からないが承諾すると、彼女は嬉しそうにし目には涙をにじませる。

 そっ、そんなに経費が掛かっていたのか?

 娘は自分の出自を知らないから、冒険者ギルドに大分無理をさせていたようだ。

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