あれ?
でも色の付いた呪具が、安全地帯で取り出した事で効力がなくなったのは何故かしら。
安全地帯に魔物が入ってこれないのは、単純にそういう仕様だと思っていたんだけど……。
ダンジョンを攻略する冒険者のために設定されている感じの……。
う~ん、これは冒険者なら当たり前に知っている情報なのかしら?
今更聞くのはまずいかなぁ~。
『毒消しポーション』を使用しなくても、見付けた呪具をマジックバッグに入れて安全地帯で取り出せば問題は解決するんじゃ?
でも呪いの品と同じなら、触れると何か問題が起きそうだよね。
マジックバッグは、直接対象に触らないと中に入れられないから難しいのかも知れないな。
アイテムBOXは視界に入った物なら、なんでも収納出来ちゃうんだけど……。
つらつらとそんな事を考えていると、驚きから立ち直ったアマンダさんが私の顔を凝視する。
「サラちゃん、『毒消しポーション』の量はどれくらいあるのかい?」
「ええっと、今日販売になる分が60本で私が持っている在庫は23個です」
「販売許可が下りたなら、浄化をしたのはお兄ちゃんだね。呪具に効果があるか試す必要がある。今から攻略を中止して、冒険者ギルドマスターと薬師ギルドマスターに会いに行こう。これは迷宮都市の存続に係わる緊急事態だ」
「あの~、まだ効果のある呪具を触ったらどうなるんですか?」
「その場で昏倒するから、絶対に触れたら駄目だ」
じゃあマジックバッグに入れて、安全地帯で解除を行うのは無理か……。
「ちなみに、その禁制品の呪具って高いですよね? 数が限られていると思うんですけど……」
「楽観視は出来ないよ。ダンジョン内でこんな事をする連中だ。何が目的か知らないけど組織立ってしているなら、ある程度数が揃っている可能性がある」
いつになく真剣な表情をするアマンダさんに、私達も協力した方がよいだろう。
「分かりました。こちらも直ぐに出発する準備をします」
「あぁ、手伝わせて悪いね」
2人がテントから出て行った後、兄達と今後どうするか方針を決める。
呪具が沢山あれば、2人で浄化して回るだけでは手遅れになるかも知れない。
『毒消しポーション』で効果が消えるなら、冒険者総出で人海戦術を行った方が効率的だ。
兄は、そんな物騒な呪具がダンジョン内にある事は危険だと『毒消しポーション』を試す事に賛成らしい。
旭も同意見だったので、私達はテントから出てマジックテントを回収した。
「お待たせしました。時間がないので、シルバーに2人乗りして地上に帰還します。私の後ろに乗って下さい」
既に準備を済ませていたアマンダさんに、そう声を掛けるとギョッとされる。
「確かにその方が早いだろうけど……。なるべく急ぎたいからね。ケン、お前達はここで待機だ。地下14階の冒険者達に呪具の事を伝え、クラン全体に話がいくようにしておくれ」
「了解しました!」
「じゃあ、後は頼んだよ!」
アマンダさんがシルバーの背に飛び乗ると、こちらも出発だ。
シルバーを先頭にして、後ろから兄と旭を乗せたフォレストが付いてくる。
私はマッピングをフル活用し、魔物がいない階段までの距離を最短で選びシルバーに伝える。
今日は後ろにアマンダさんがいるから、吹き飛ばされる事はないだろうと思い少し速度を上げてくれるようにお願いした。
結果、地下14階から地上まで僅か1時間で駆け抜ける。
私1人を乗せている時は、大分手加減して走っているみたいね……。
そこから冒険者ギルドまで10分。
今までで、最速に辿り着いた。
「サラちゃん、いつもこんな無茶な走りをしているんじゃないだろうね?」
シルバーから降りたアマンダさんが、呆れたように聞いてくる。
「今回は、時間を優先してシルバーに速く走ってもらったんです。普段は、もう少しゆっくり走るので大丈夫ですよ?」
「……そうかい。じゃあ、早くギルドマスターに話を伝えにいこう」
「はい!」
冒険者ギルドの中に入ると、受付嬢が私達を見て不思議そうにしている。
いつも金曜の夕方に換金作業を行うので、月曜日のこの時間に現れた事で困惑させてしまったみたいだ。
アマンダさんが急ぎ足で受付に向かい、ギルドマスターに会いたい旨を話す。
「ギルドマスターと話がしたい。急を要する案件だと伝えておくれ」
「はい、サラさんのパーティーもご一緒ですか?」
いつもの受付嬢が、後ろにいた私達の方を見たので頷いておく。
特に担当が付いている訳じゃないんだけど、私達の対応はこの女性がしてくれるんだよね。
薬草を常設依頼に直ぐに追加してくれたのも彼女だった。
「では会議室に案内します」
部屋の席に座って3分程で、オリビアさんが息を切らして入ってきた。
かなり急いできてくれたらしい。
「時間が惜しいから、挨拶は抜きだよ。サラちゃん、呪具をテーブルの上に出しておくれ」
私は言われた通り、アイテムBOXから無色の丸い玉を6個取り出した。
それを見た瞬間、オリビアさんの表情ががらりと変わる。
「見た通りの禁制品が、地下14階と地下13階のダンジョン内で発見された。色は赤紫・赤緑・黒だよ。この6個は、もう効果が切れている。今日地下1階から地下14階まで攻略中に、魔物の数が異様に多かった原因だろう。まだ他にもありそうだけど、ギルドマスターに伝えるために帰還してきた」
「情報ありがとう。ダンジョン内の冒険者には連絡済みだろうか?」
「あぁメンバーに伝えるよう指示を出しておいたから、数時間もすれば全員に伝わるよ」
「対応が早くて助かった。呪具の数が多いと大変な事になるな……。効果が切れるまで6時間。いつ設置したのかも不明だから、後手に回るとまずい。えっと、サラさんはどうしてここに?」
「発見したのが私なんです。それで、今回の呪具に『毒消しポーション』が対応可能か相談にきました」
「あぁ、薬師ギルドが今日から発売した商品ね……」
何故か、オリビアさんが困っているような感じがする。
『毒消しポーション』に何か問題でもあるのかしら?
両手を組み頭を下げ暫く黙り込んだ後、オリビアさんは顔を上げてきっぱりと言った。
「試してみましょう! これから薬師ギルドに行くわ!」
ポイントを押して下さった方、ブックマークを登録して下さった方、作品を応援して下さった方。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。
これからもよろしくお願いします。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!