【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第398話 ガーグ老 13 治癒術師の序列&教会での楽しい警護

公開日時: 2023年5月10日(水) 20:05
更新日時: 2024年1月13日(土) 00:07
文字数:2,433

 家具職人の工房で働き出してから、毎週土曜日に息子から御子の様子を聞く事にした。

 中には思慮すべき内容が含まれているので、息子も儂に意見を求めたいのだろう。


 地下12階でのダンジョン攻略中に、御子が全身を石化された冒険者達を発見されたらしい。


 その姿を見てショックを受けておられたようだが、その後親しくしている冒険者の両親だった事が分かると、治癒術師の御二方おふたかたが治療されてしまったそうだ。


 20年も石化された状態の人間を治療なさるとは……。

 教会の枢機卿すうききょうクラスでない限り無理だというに。


 エルフの王宮では序列2位の使い手となる。

 これ程まで高名な治癒術師は見た事がない。


 益々、警護を慎重にせねばならなくなった。

 

 エルフでも光魔法の適性を持つものは少ない。

 そもそも光の精霊は、あまり加護を付けようとはせん。


 余程位の高い精霊の加護を受けていらっしゃるのか?

 光の精霊王は、精霊の中でも特に清廉潔白せいれんけっぱくな人物を好むと聞く。


 御二方は心根の正しい者のようだ。

 御子の傍におられるに相応ふさわしい。


 ただ、この能力を知られてはまずい。

 教会の権力は多岐に渡り、別大陸にまで及ぶ。

 あれは人族最大の勢力と言っていいだろう。


 石化の治療をした事は秘密にする約束をしたようだが、万が一の時は我らで未然に防ぐしかあるまいな。


 しかし御子達よ、曲がりなりにも冒険者をしているというのにテントを張る事が出来ないとは……。


 もう少し普通の冒険者をよそおう努力をして下され。

 テントを張れない冒険者など聞いた事もありませんぞ?


 その後、御子達は地下13階に拠点を移されたらしい。

 息子達は付いていくのに必死で毎回死にそうだと言っておった。


 そして次々と新しい料理が披露ひろうされるので、夕食時の警護が一番つらいとも……。


 その内のひとつ『ミートパスタ』が、店で期間限定メニューとして販売された。

 勿論もちろん、儂らも食べにいく。


 このパスタという料理は、フォークでくるくると巻きながら食べるらしい。

 うどんとはまた違った食感で、トマトソースの味も旨い!


 こちらは女性や子供に人気の料理で、いままで男性客が多かった店内に家族連れが増えた。

 御子は一体どれだけの料理を知っておられるのか……。


 姫様が食べたがっていらした『ハンバーガー』や『フライドポテト』も、作る事が出来るのだろうか?


 息子に夕食時披露ひろうされた料理の名前を聞くと、『フィッシュバーガー』と『フライドポテト』の名が出てきた。


 同じ『バーガー』と付いているが……。

 『フライドポテト』の作り方は、大量のオリーブ油に切ったじゃがいもを入れ高温で揚げた料理らしい。


 確かに太りそうな料理だな。

 でも冒険者達は、美味しそうに食べていたらしい。


 日曜の炊き出し後、御子が何か企画をするようなので儂ら引退組も護衛に就いた。

 集まる人数が多くなれば危険度も増えるからな。


 御子は子供達に踊りを教えて、楽しそうにされている。

 簡単な踊りなので儂らでも見ているだけで出来そうだ。


 2人一組で踊る方は、本来男女ペアになってするもののようだ。

 背の高い男性同士が踊る時に、気まずい空気が流れておった。

 全員で手をつなぎ輪になって踊る方は問題なさそうだな。

 

 その後は昼食だ。

 そして初めて見る『フィッシュバーガー』に目が釘付けになる。


 迷宮サーモンにパンくずを付けて、大量のオリーブ油で揚げた物と刻んだキャベツを『ナン』に挟んで食べる料理らしい。


 なんとも旨そうな料理だわ。

 姫様は、このような物が食べたかったのだろう。


 子供達も大きく口を開けて一生懸命食べておる。

 気温の暑さを思ってか、御子は紅茶に氷を入れて冷たくしていらした。


 冷たい飲み物など、初めて飲むのではないかの?

 飲んだ子供が驚いているではないか。


 食事をした後は、物語を読まれていらしたが……。

 儂も全然知らない物語だった。


 御子が読み聞かせをした『白雪姫』。

 儂が鏡であれば、それは御子の事だと間違いなく言うだろう。


 しかし、最後がどうにもせん。

 何故なぜ、キスをした王子と結婚するのだ。


 それまで白雪姫を守ってきた、じじいである小人の1人と結ばれるのが当然だろうに。

 ぽっと出の若造が、最後に美味しい所を持っていったではないか!


 して小人とは妖精のコロボックルとは、また違う種族であるのかの?

 あ奴らは、滅多に人前に姿をあらわさん種族だが……。


 人族の王族とは縁を切ってほしい。

 御子が、この物語に変な共感を覚えない事を願おう。


 御二方の物語も、また不思議な内容だったらしい。


 これで終わりかと思っておれば、御子が巨大な氷の迷路を作りあげた。


 その膨大ぼうだいな魔力量を披露ひろうしても大丈夫だろうか?

 ここに居るのは、ダンジョンで親しくなった冒険者達と支援をしている子供達だけであるが心配だ。


 冒険者達を見てみると、皆が苦笑しておった。

 なんとなく、この者らは言いふらす事はないだろうと感じる。

 御子は、意外と人心掌握しょうあくけておるのかも知れんな。


 氷の迷路をゴールした子供達に、ハニービーの蜂蜜水を手渡しておられた。

 また高価な飲み物を配られて……。


 御子は本当に子供達の事が好きなのだろう。

 

 夕食は『バーベキュー』をするらしい。

 その頃になると、子供達の家の支援者がぞくぞくと集まってくる。


 例の『焼肉のタレ』も渡しておられた。

 子供達もコカトリスとミノタウロスの肉は一度も食べた事がないだろう。


 夕食後に全員が輪になってまた踊り出す。

 見ていてなんとも心が温かくなる光景だった。

 

 そして最後には、御二方が夜空に大きな光の花を咲かせて目を楽しませてくれる。

 御子が花が咲くタイミングに合わせて「た~まや~」・「か~ぎや~」と掛け声をかけていらしたが……。


 うちの白ふくろうの『タマ』と何か関係があるんだろうか?


 一日中はしゃぎ疲れたのか、小さな子供は眠そうにしている。

 少し帰りが遅くなったので、支援者の冒険者が子供達を送っていくようだ。


 今日は儂らにとっても楽しい1日であった。

 そして過去最大に、お腹の空く警護であった事は間違いない。


 御子よ、儂らも『フィッシュバーガー』と『バーベキュー』を食べてみたいですぞ!!

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