【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第693話 迷宮都市 ポーションの価格変更&サヨさんとメンバーのLv上げ&Lv50の恩恵

公開日時: 2024年2月11日(日) 12:05
更新日時: 2024年6月4日(火) 13:22
文字数:3,272

 それから5日間の攻略は無事終了。

 心配していたダンジョン内での犯行もなく、ピリピリとしていた冒険者達も落ち着いた雰囲気ふんいきに変わった。

 解体場のアレクおじさんからミノタウロスの肉を1体引き取り、オリビアさんに会いに行く。

 受付嬢から案内された会議室で待っていると、直ぐにオリビアさんが入ってきた。


「サラさん。今日は、どうされましたか?」


「誓約書へ署名をしに来ました」 


 私がそう答えるとオリビアさんは驚いた表情をし、少ししてあぁと納得した顔になる。


「クランに入っていない冒険者の署名は、サラさん達のパーティーには不要です。あれは最近、迷宮都市へ来た冒険者に対するものですから」


 そうなんだ。

 じゃあもう用事は済んだから帰ろう。


「あっ15階で捕まえた犯人ですが、ダンクさんのパーティーを襲った冒険者でした。盗られたマジックバッグも回収済みなので、安心して下さいね」


 さっさと部屋から出ようとした所に、オリビアさんが報告をしてくれる。

 ダンクさんも、ほっとしているだろう。

 

「教えてくれてありがとうございます。新しい政策のお陰か、あれからダンジョン内での犯行が止まり冒険者達も喜んでいますよ」


「今回は王都の冒険者ギルド統括本部へ掛け合ったんです。変な噂を鵜呑うのみにした冒険者が、これ以上迷宮都市に来られると困りますから。犯人の刑も既に行いました。今後は、より一層厳しく取り締まる心算つもりです」


 オリビアさんが覚悟を決めたかのように、真剣な表情で口にする。

 迷宮都市を統べるギルドマスターとしての矜持きょうじ垣間かいま見えた。

 その両肩には、私が及び付かないくらい重い責任を背負っているんだろう。

 迷宮都市の安全は、ひとえに彼女の采配さいはいに掛かっていると言っても過言ではない。

 日々重圧に耐え頑張ってくれている彼女へ感謝の気持ちを込めて一礼し、部屋を後にした。


 肉屋でミノタウロスの肉を部位別に仕分けてもらい、子供達の家へ寄り渡しに行く。

 ミノタウロスの肉を受け取った子供達は、「今夜はステーキだ!」と大喜びしてくれた。

 『肉うどん店』と『製麺店』、『お菓子の店』にも肉をお裾分すそわけする。

 リュートさんが高価な肉に恐縮していたけれど、子供達や他店にも渡してある話をすると笑顔になり、『ハンバーグ』を作るよとアリサちゃんに言っていた。

 おっと、その単語を言っても大丈夫?

 かなで伯父さんの方をそっと見たけど、ダンジョン内で日本と同じ料理を食べている所為せいか疑問には思わなかったようだ。


 ホームへ戻り、それぞれの家に帰った後で夕食の準備を始める。

 あかねからビーフシチューを食べたいとリクエストされたので、ミノタウロスの肉を赤ワインにひたし、大きく切った材料と一緒に圧力鍋で煮込む。

 時間がない時は圧力鍋を使用すれば、肉が柔らかくなるから便利だよね。

 コーンサラダを作ってバゲットを軽くリベイクしたら完成だ。

 リビングでTVを見ている兄達を呼び食べ始める。

 お肉がゴロゴロ入ったビーフシチューに茜は満足そう。


 お店で食べるビーフシチューは高い癖に、肉の割合が少ない事が多い。

 口に入れるとほろほろ崩れるお肉が美味しいなぁ~。

 パン屋のバゲットも皮がパリパリとして香ばしい。

 私とセイさん以外はお代わりし、8皿分作ったビーフシチューは綺麗になくなった。

 デザートに各自好きなケーキを出して、コーヒーをれる。

 茜は選んだ抹茶ケーキを堪能していた。

 ダンジョンマスターをしていた13年分、好きな物を沢山食べさせてあげよう。

 

 翌日、土曜日。

 兄と旭を連れ奏屋かなでやで果物を卸した後、しずくちゃんのお母さんと一緒に薬師ギルドへ向かう。

 通された応接室で3人がポーションへ浄化とヒールを掛けている間、私は受付嬢からポーションとハイエーテルを大量に購入した。


 ポーションの値段が、銅貨5枚(5,000円)から銅貨1枚(1,000円)に変更されて嬉しくなる。

 これで子供達も気軽に購入出来るだろう。

 他領では銀貨3枚(3万円)のポーションだけど、これを転売する冒険者はいないよね?

 ダンジョン攻略するC級冒険者はポーションよりエクスポーションが必要だし、『MAXポーション』が販売された今、ポーションを使用するのはD・E級の子供達か都市に住む人達だけだ。

 応接に入ると、ゼリアさんがポーション瓶をマジックバッグに仕舞っている所だった。

 

「ゼリアさん、おはようございます。早速さっそくですが、癒し草から出しますね」


「おはよう、サラちゃん。マジックバッグを追加購入したからの、今日は全部入るだろう」


 そう言って、ゼリアさんが2つのマジックバッグを用意する。

 私は片付けられたテーブルの上へ、癒し草を次々と出していった。

 1つ目のマジックバッグが一杯になった所で、2つ目のマジックバッグへ。

 テーブルの上に出す癒し草がなくなると、魔力草に変更。

 換金されなかった魔力草が3週間分ある。

 半分を出した所で、ゼリアさんから待ったの声が掛かった。

 

「サラちゃん。申し訳ないけど、もうマジックバッグが一杯のようだわ。また追加が必要か……。一日中、薬草採取をしておるのかの? まぁ、よく飽きないものだ」


「魔物を倒すより楽しいから、薬草採取は趣味ですよ!」


 出した薬草の量にあきれた様子のゼリアさんに話を合わせ、各自お金を受け取った。  

 部屋を出る際、呼び止められる。


「サラちゃん。新しいメンバーは増えたかい?」


「えぇ、妹がメンバーに加わりましたよ」


「それは良い事じゃ。一度、顔を見せに来てもらえんかの?」


 ? 妹は浄化の魔法を使用出来ないけど……。

 色々とお世話になっているゼリアさんの頼みとあらば断われない。

 

「じゃあ、来週連れてきますね」


「待っておるよ」


 どうして妹に会いたいのか、理由は分からないまま薬師ギルドを出る。

 一度ホームに戻り食事を済ませたら、サヨさんを呼んで午後からは5人のLv上げだ。

 今日で全員がLv50になるだろう。

 ホーム内の広いグランドに移動し、摩天楼まてんろうダンジョン31階の魔物を出す。

 私は飛翔魔法の練習をしよう。

 保護者付きで、Lvが上がる気がしないけどね!


 兄とあかねに両手をつかまれ高く浮かびあがると、シルバー達も浮遊魔法で同じ高さになり周囲を囲む。

 前後にはセイさんと旭が付いている。

 今日も厳重な警戒態勢の中、飛翔魔法の練習開始。

 自転車より速いスピードを出すと、2人に両手を引っ張られ速度を調整される。

 渋々しぶしぶスピードを落とし、時速20kmくらいで空中を移動した。


 下を見ると、サヨさんが魔物相手に薙刀なぎなたで無双している。

 基礎値が78と高いので、Lv45のサヨさんはHP/MPが3,588もある。

 異世界の冒険者基準ではLv300くらいのステータスになっているから、力も相当強くなっているはずだ。

 母の方を見ると、体を動かす事は避けているのか魔物を昏倒させてから魔法で安全に倒している。

 しずくちゃんとお母さんは、2人で連携し倒していた。

 いつきおじさんは単独で剣を振るっている。


 私は様子を見ながら魔物を出し、危険な状態にならないよう注意した。

 それにしても、皆楽しそうだな~。

 やはりLvが上がるのは嬉しいんだろうか?

 ステータスが見える分、遣り甲斐がいはあると思うけど……。


 5時間後、Lvが50になったのを確認してもらいLv上げは終了。

 夕食は私達と食べると言って外出したサヨさんが、実家で母と料理を作ってくれた。

 サヨさんの料理を食べたシュウゲンさんが笑み崩れている。

 また少し若返った姿を見て目を細めていた。


 ちなみにLv50の恩恵は雫ちゃんのお母さんがハイヒールを覚え、母が複製という緑魔法を覚えた。

 複製は種をLv×1増やせるらしい。

 例えば、小豆なら50個増やす事が出来るのかな?

 使用用途が限られる魔法だけど、母は嬉しそう。

 交配で出来た野菜の種を増やす心算つもりみたい。


 転生組のサヨさんと雫ちゃんには恩恵がなく、何故なぜか召喚した樹おじさんは何も覚えられなかったようだ。

 父同様、特殊魔法を与えられた所為せいだろうか?

 皆でにぎやかな夕食を過ごし、サヨさんを茜と一緒に華蘭からんへ送り届け自宅に帰る。

 竜の卵に魔力を与えたら、そのまま就寝。

 茜に抱き抱えられベッドへ降ろされる、ぼんやりとした記憶を最後に意識を失った。

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