【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第362話 【闇ギルド】からきた冒険者達 1

公開日時: 2023年4月22日(土) 20:05
更新日時: 2023年8月23日(水) 21:59
文字数:2,528

 【闇ギルド】

 

 その日、俺達は所属している闇ギルドから『暗殺』の仕事を受けた。

 王都にある【闇ギルド】では毎日様々な依頼が届くが、その内容によって仕事を割り振られる。


 それは店の情報だったり、ある特定の人物の調査をするというものや、代理で物を購入してほしいという依頼もある。


 俺達のチームは殺しが専門だ。

 闇ギルドでは最も高額な依頼になる。


 依頼者からの条件が合えば、基本的に断る事はない。


 今回は迷宮都市で地下14階を拠点にしている、サラという名前の少女がターゲットだった。

 担当者から処理の仕方について書かれた羊皮紙を受け取り詳細を確認する。


 この依頼は既に1度失敗しているらしい……。

 金額が上がっていた。


 依頼主は迷宮都市のあるリザルト公爵の甥だった。

 一体、この少女は何をして甥に暗殺依頼を出されたんだろうか?


 まぁ俺達は相手の事情なんか気にする必要はないがな。

 依頼主の希望によると、ダンジョン内で片付けてほしいらしい。


 冒険者なら、ダンジョンで魔物に襲われ命を落とす事なんて日常茶飯事だ。

 具体的な方法まで内容に書いてあった。


 地下14階に出現するキングビーに魔物寄せを使用してトレインし、そのまま魔物をなすりつけてほしいとある。

 禁制品である魔物寄せのポーションは、【闇ギルド】が手配済みだったようで直ぐに貰う事が出来た。


 殺しを専門に請け負う俺のチームは、ターゲットが冒険者の場合でも対応可能なようにメンバー全員がB級冒険者で構成されている。

 ダンジョンにはC級以上でないと入れないし、大型ダンジョンを攻略する冒険者はB級冒険者が普通だからだ。


 迷宮都市のダンジョンには入った事はないが、王都にある大型ダンンジョン攻略は一応経験がある。

 階層毎の魔物の強さは、どこのダンジョンでもあまり変わらないだろう。


 地下14階を攻略しているという少女のパーティーは3人組らしい。

 6人組で攻略するのが基本の冒険者にしては珍しいな……。


 王都から迷宮都市まで馬車で2週間はかかるので、今回は馬で行ってほしいと言われた。

 馬での移動なら1週間で行けるだろう。


 1週間後、迷宮都市に到着。

 その日は移動で疲れていたので宿に泊まり、明日ターゲットに接触する予定だ。


 翌日、月曜日。

 冒険者ギルドでダンジョン内の魔物情報を確認し、地下1階から地下14階まで順調に攻略する。


 これまでは特に問題ない。

 王都で地下20階層まで攻略経験がある俺達が、討伐に困る魔物の出現はなかった。 


 地下10階層以降は、ダンジョン独自の魔物が出現するので俺達にとっては初見の魔物ばかりだ。

 トレインするキラービーも、王都のダンジョンでは出現しない。


 前回仕事を受けた者は、どんな理由で失敗したんだ?

 サラという少女は、無謀むぼうにもダンジョン内を単独で行動しているらしい。


 ターゲットをパーティーメンバーから引き離す手間が省けたのは嬉しいが、俺はその実力を思ってぞっとした。


 直接、手に掛ける依頼じゃなくて良かったな。

 1人でダンジョンを攻略出来る相手を殺すには、こちらにも相当被害が及びそうだ。


 さて、長居は禁物。

 俺達は地下14階の安全地帯には行かず、このまま仕事を遂行して本日中に迷宮都市を出る心算つもりでいる。


 顔を見られるリスクを極力減らしたい。

 まずはキングビーを探すか……。


 依頼主からの指示はキングビーに魔物寄せを掛けてトレインし、トレントの森付近にいる少女の下へ魔物を誘導するとある。


 少女の死亡を確認したら仕事は完了。

 これで依頼料は金貨80枚(8千万円)だった。

 

 王都から迷宮都市まで往復2週間。

 仕事の遂行に1日と考えると、割の良い条件だ。

 

 しかし、冒険者の行動が駄々洩だだもれしてるな……。

 依頼主のオリーという人物は、彼女に相当恨みがあるらしい。


 ダンジョン攻略中の冒険者の情報を買い取るとは、かなりの金額が必要になっただろうに。

 下手したら、俺達の暗殺依頼と同程度は支払っているかも知れない。


 公爵の甥みたいだから、金は幾らでもあるんだろう。

 厄介やっかいな男に目をつけられた少女は、結局命の対価を払う事になるのか……。


 事前に渡されたダンジョンの地図をもう一度確認して、トレントの森がどの方角にあるか頭に入れておく。

 逆方向にトレインしたら時間の無駄になってしまう。


 襲ってくるフォレストウサギを狩りながら、キングビーの集団を発見した。

 全部で8匹か……。


 本当に、この魔物に魔物寄せを掛けて大丈夫なんだろうか?

 普通に考えたら、この倍の数を相手にする事になる。


 魔物の情報に関しては、それぞれのクランが秘匿ひとくしている場合が多いので詳細については分からない。

 冒険者ギルドで調べた限りじゃ、必ず集団で居る事と攻撃に毒針を使用されるとあった。


 この毒の強さも曖昧あいまいだ。

 エクスポーションで治療出来るといいんだが……。


 今回の仕事は一度失敗しているので、【闇ギルド】も面子めんつを守るために俺達に仕事を急がせた。

 充分な下準備がないままでの仕事は予想外の事が起こりやすい。


 このまま、何事もなく無事に迷宮都市を出ていく事が目標だ。


 わずかばかりの不安を胸に抱えたまま、俺は1匹のキングビーに魔物寄せのポーションをかけた。

 途端、俺達を認識したキングビーが襲いかかってくる。


 俺達は6人、魔物は8匹なので戦闘に余裕がない!

 そうこうしている内に、キングビーが魔物寄せの効果で集まってきた。


 俺はトレントの森に撤退する合図を送り、かなり久し振りに全力疾走した。

 

 ヤバイ!

 この仕事、受けるんじゃなかった。


 空中を自由に飛び回る魔物相手に、俺達の攻撃手段は剣と槍しかない。

 人間相手の仕事だから、俺のチームには魔法を使えるやつがいないのだ。


 もう既に仲間の1人が毒針を刺されている。

 くそっ、一度依頼を失敗している時点で地雷案件だと気付くべきだった。


 ターゲットが少女だからと油断していたらしい。

 それでも全員がなんとかトレントの森まで逃げる事が出来た。


 肝心かんじんな少女は一体何処どこにいるんだ?

 早く、このキングビーの集団から離れたくて焦りながらも姿を探す。


 情報通りなら、この辺りにいると書いてあったのに居ないじゃないか!!

 あぁ駄目だ、この計画は失敗だ。


 相手が居ないんじゃ、自分達でキングビーの集団を倒すしかない。

 俺は、このまま討伐すると仲間に伝える事にしたのだった。

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