そう言えばと、気になっていた事を聞いてみる。
「私達地下14階は今日が初めてなんですけど、冒険者の皆さんがテント前で治療を待っていたんです。今日だけで3人治療しました。どうして私達がいる事を知っていたんですかね?」
「サラちゃん。自分達が、かなり有名だって分かんないのか? 全員が魔法使いで、その内の2人が凄腕の治癒術師なんだぞ? そもそもダンジョンで単独行動出来るくらい強い冒険者なんていないから!」
「そうそう。あんた達は、ダンジョンで薬草採取したり果物収穫したりと目立ちすぎさ」
ダンクさんとアマンダさんから理由を言われ、成程と思ってしまった。
3人パーティーだけでも目立つのに、兄と旭が治療したお陰で有名になったのね~。
「目立つのは避けたいんですけど、もう無理でしょうか?」
「あのなぁ孤児達に家を買って、『肉うどん店』と『製麺店』を経営している時点でそりゃあ無理だろう」
「う~ん、じゃあなるべく大人しくしてます」
そうは言ったけど、今日はもうトレントの森を丸裸にしてしまった後だった。
マンゴーがどうしても食べたくて、気が付いたら1本も無くなっていたのよね。
私達が持っているマジックバッグ30㎥(金貨410枚・4億1千万円)3個じゃ、全部入らないかしら?
数学は苦手だからよく分からない。
アイテムBOXに収納してあるけど、換金出来る本数を計算しておいた方がいいかも……。
兄に相談したら計算してくれるかな?
旭には聞くだけ時間の無駄な気がする。
全員が食事を終えたら初披露のキウイフルーツを、ゴールデンとグリーンの各3個配った。
「地下14階で収穫したキウイフルーツです。どちらの色も美味しいので食べ比べてみて下さい」
皮を剥いて横に輪切りにすると、綺麗な模様が美しく見える事をリリーさんとケンさんに教える。
「珍しい果物だね。うん、私はグリーンの方が好きな味だよ」
アマンダさんがキウイフルーツを食べてニコニコしている。
「私は甘い黄色の方がいいわ」
甘い物好きなリリーさんは、ゴールデンの方が好みに合ったらしい。
男性達は黙々と食べている。
私も両方食べたいので2個ずつカットした。
酸味の強いグリーンも、甘みの強いゴールデンも完熟していて美味しい。
マンゴーは奏屋で、高値が付くと予想されるので出すのは控えた。
兄はマンゴーを食べたいだろうけど我慢してもらおう。
家に戻ったら剥いてあげるので待ってて下さい。
「サラちゃん。昨日の人形劇は子供達に喜んでもらえたから、また別の話を聞かせてくれないかい?」
アマンダさんにそう言われて、即答出来なかった。
えっ、また勝手にアレンジした童話を披露する心算なんですか!?
ううっ、原作者の方に申し訳ない程の改変はしないでほしいんですが……。
夢と希望が詰まった物語は別物になりそうな予感がしたので、恩返し系の物語を披露する事にした。
『鶴の恩返し』と『ごんぎつね』も迷ったけれど、鶴が人間に変身する事が受け入れられないかもしれないし、ごんぎつねの最後はかなりショッキングな内容なので子供達が泣いてしまうかもしれないと思い直した。
そして決まったのが、『浦島太郎』だ。
虐められていた亀を助けたお礼に竜宮城で持て成されるが、開けてはいけないと言われた玉手箱を開けて老人になる話は理解出来るだろうか?
前回、紙芝居用に購入した物の中にあったので皆の前で話し始める。
亀に乗って竜宮城に入ると、女性達が舞を踊り贅沢な料理が出てくる所で男性陣が反応した。
綺麗な女性が集団で舞を踊る姿には見惚れちゃうよね。
そして時間を忘れ時を過ごした後で、住んでいた村に戻ると知り合いは誰もいなくなっており、絶望した主人公が玉手箱を開けお爺さんになって終了。
色々な教訓が入っていた物語だけど、皆理解出来たかしら?
「最後がなんだか、さっぱりしない終わり方だねぇ」
「俺は乙姫様と結婚して幸せになる方がいいな~」
そりゃそうだけど、肝心なのはそこじゃないのよ!
そしていつものように配役を決め出した。
何故か亀役に人気が集中している。
最後はお爺さんになる主人公は、誰もやりたがらない。
リリーさんは乙姫に決定したようだ。
これは無難な選択で安心する。
ダンクさんが乙姫役だったら、断固抗議する所だ!
そんな歓待は誰も喜ばないから主人公が早く竜宮城から帰ってしまい、知り合いは全員いる状態で玉手箱の出番が無くなってしまう。
そして助けた亀は恨まれるだろう。
それじゃあ、全然恩返しにならない。
アマンダさんは、リーダーの特権を使って亀役をするみたいだ。
はぁ……。
亀が主人公の浦島太郎って、どんな話になるんだろうか。
主役はちゃんと出てくるのか?
そしてダンクさんが主人公の話も恐ろしいよ!
今日も長い夜になりそうだった。
地下14階ダンジョン攻略の初日なのに、どうやら寝かせてくれないらしい。
兄がマンゴーを食べたがっているんだけどなぁ~。
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