【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第597話 迷宮都市 犯人の動向 2

公開日時: 2023年11月7日(火) 12:05
更新日時: 2024年2月29日(木) 02:42
文字数:1,896

 儂が与えた指示は、少女の支援している子供達をさらい身代金目的の誘拐犯に成りすます事だ。

 その際、実行犯とは直接やり取りせず、足が付かないよう他領の人間を使えと命令する。

 迷宮都市の現状を知っている人間は、子供達の誘拐に尻込みするだろう。

 冒険者達が支援しているからの。

 金の受け渡しは第三者に任せ、王都へ配送依頼を出すよう伝える。

 そして金は受け取らず、主犯が誰であるか辿たどり着かぬようにした。


 実行犯へは情報を隠し、馬車を2台用意し潜伏場所も準備しておく。

 後は、ある事さえやってもらえば良い。

 治癒術師が使用する魔法がヒールなのかハイ・・ヒールなのか、それで分かるであろう。

 浄化の魔法については、機会を待ち確認するとしよう。

 子飼いの者へ、くれぐれも慎重に行動せよと注意し儂はその日を待った。


 当日。

 金の受け渡し場所に少女ではなく、子供達の保護者である冒険者が現れたらしい。

 ダンジョンを攻略中だと思い失念しておった。

 毎週子供達へ炊き出しをするため帰還する少女とは違い、基本的に冒険者たちは3ヶ月~半年は地上へ戻らないからだ。

 しかも様子を見る心算つもりだった子供達は、少女の従魔が発見し既に助け出したという。

 

 更に誤算であったのは、その保護者である冒険者がリザルト公爵令嬢だった件だ。

 儂は公爵の娘が冒険者をしているとは知らず、庶民の誘拐に衛兵や冒険者ギルドが動くのを想定しておらんかった。

 それにしても……。

 リザルト公爵に娘などいたであろうか?


 実行犯は翌日、迷宮都市へ移送され冒険者ギルドマスターが斬首刑にしよった。

 他領であれば、これ程まで重い刑にならず精々せいぜい鉱山送りであったものを……。

 主犯が儂であると分かれば、教会の司教といえど罪をまぬがれるのは難しくなりそうじゃ。

 容易に辿り着かんよう何人も無関係の者を介しておるが、念には念をと子飼いの者へ迷宮都市から移動するよう命令を出す。

 今回の件で分かったのは、子供達に手を出すのはまずいという事だけで何の収穫もありはせん。 

 迷宮都市から半日以上離れた場所へ用意した隠れ家が、直ぐに見付かってしまうとはの……。

 治癒術師の能力も、犯人達が躊躇ためらったのか子供全員が無傷の状態では知りようがない。

 流石さすがに、エクストラ・・・・・ヒールで治療済みではないだろう。


 金の移送先である王都の宿屋から受取人が移動した直後、連絡が入っておったのか捕まったようだ。

 儂の予想以上に動きが早く冷や冷やしたが、この者は荷物を受け取りにいっただけである。

 いくら尋問された所で、何も答えられんであろう。

 安心していたその夜、再びアシュカナ帝国の使者が屋敷に訪れた。

 

「ヘインズ司教。勝手な真似をされては困りますね。貴方が下手な行動をしたため、こうして私がくる羽目はめになった」


 使者の第一声に肝を潰す。

 あれ程まで用意周到に策を練ったというに、どこでバレたのだ!?


「……申し訳ありません。早計な判断でした」


 儂は自分の過ちを素直に認め、使者に対して頭を下げた。

 

「ええ、本当にそうですよ。その罪は、ご自身の命であがなって頂きます」


「なっ、何ですと!」


 信じられない言葉に急いで顔を上げると、無表情の使者が何かを口へ入れる。

 思わず吐き出そうとしたが、口を塞がれてしまう。

 その内、意識が朦朧もうろうとし立っていられず床へ倒れこんだ。


「あぁ、そのまま眠って下さい。二度と目覚めないでしょうけど」


 儂を見下ろす使者の言葉を最後に、意識が途絶えた――。



 動かなくなったヘインズ司教の死亡を確認したアシュカナ帝国の使者は、屋敷から出ると姿替えの魔道具を起動させ宵闇よいやみまぎれ姿を消した。

 その後、薬師ギルドに入っていく。


「やれやれ、我らの巫女姫の手をわずらわせるとは教会の人間は厄介やっかいだの。やはり、早々に潰しておくべきか……」


「ゼリア様、お手数をおかけしました」


「いや、今回はそなた達で犯人を見付けるのは無理であったろう。指示を出した者を捕まえてくれたお陰で匂いを辿る事が出来た。まさか教会の司教だとは思わんかったが……。うちの次代が、はよう巫女姫のそばに付いてくれると良いがな」


「世界樹の精霊王に記憶を封印されておりますから、直ぐにとはいかないのでしょう。今は獅子王の次代がおそばにおられるようですし、そのうち巫女姫のもとへ全員がつどうと思います」


「それもまた、難儀なんぎな事であるわ。転生先で、どのような人生を送っているのかの……」


「さて、それは私共では知るよしもありません。巫女姫の身近にいた可能性が高いですがね」


白頭鷲はくとうわしの、引き続き巫女姫の周辺を警戒しておくれ。アレに気付かれないような」


「承知しております」


 ゼリアと言葉を交わしていた男性は、薬師ギルドを出ると大きな白頭鷲の姿に変態し空高く飛び去っていった。

ポイントを押して下さった方、ブックマークを登録して下さった方、作品を応援して下さった方。

読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。


応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート