【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第770話 迷宮都市 摩天楼のダンジョン(101階~110階) 他国に繋がる移転陣

公開日時: 2024年4月28日(日) 12:05
更新日時: 2024年8月20日(火) 13:33
文字数:2,061

「ここを調べてみましょ。私の予想ではダンジョンじゃなく、別の場所に移転したんだと思う。もしかしたら他国の可能性もあるわね。住人に話し掛ければ何処どこか分かるんじゃないかしら?」


「言葉が通じるといいけど……。私が話そう。姉さんは、もし敵対行動を取られた場合、逃げてくれ」


「容姿を見る限り、普通の人間に見えるから大丈夫よ。帝国人の特徴はないわ。アシュカナ帝国じゃない事だけは確かね」


「それでも用心した方がいい」


 あかねはそう言うと、ダイアンに方角を指示し人がいる地上へと降りていく。

 その後ろをシルバーに付いていかせる。

 茜は畑が広がる場所を選んだようだ。

 野菜の収穫をしている女性に笑顔で話し掛ける。


「こんにちは、少し話をいいかな? 他国から来たので、この辺りの地理を教えてほしい」


 どうやら男性と間違えているみたいで、妹を見た女性が頬を染める。

 そして言葉は通じているようだ。


「ええ、喜んで。ここはエンカの町よ。貴方は冒険者でしょ? 大型ダンジョンへ潜りに来たのね。ドワーフの国だから、良い武器も沢山あるわ。あぁ、でも残念ね。国一番の名匠めいしょうでもあるシュウゲン王は、他国に行ってしまい不在なの」


 ちょっと待った!

 ドワーフの国というのも驚いたけど、シュウゲン王って祖父の事!?

 

「あぁ、それは残念だ。是非ぜひ、シュウゲン王の鍛えた剣が欲しかったな」


「あの方は別大陸にいらっしゃるから、会うのは難しいと思うわ」


「どの国にいるんだい?」


 茜は祖父の名に表情を変えず、確認するため質問を続ける。


「確か今は、カルドサリ王国だったはずよ。数百年前、妻を探しに行くと言ったきり国へは戻っていないの」


「カルドサリ王国か……、教えてくれてありがとう」


 あぁ、これは決定だ。

 シュウゲンさんは、王だと何故なぜ黙っていたんだろう?

 それに、北大陸からカルドサリ王国まで来た方法が気になる。

 もしかして、ドワーフ国のダンジョンにも同じような移転陣があるのかも?

 後で話を聞いてみよう。 


「あのっ、一緒にいる女性は恋人ですか?」


 この女性は積極的だなぁ。

 最初に恋人の有無を確認するとは……。

 偽装とはいえ、茜には旦那さんがいるけどね。


「私の姉だよ」


「姉!? あぁ種族が……。この町にあるダンジョンは100階層を超えると言われてるから、攻略するまでしばらく滞在されますよね?」


「一度潜ってしまえば半年以上は帰還しないと思う」


 寂しそうな表情をした女性にお礼を伝え、妹はさっさとダイアナに騎乗してしまう。

 向けられた好意に気付いてないのかしら?

 私もその場を後にした。

 それにしても、国だけじゃなく大陸が違うとは思わなかった。

 

「ドワーフの国とは予想外だ。しかも祖父は、この国の王だったらしい。長い間、王が不在の状態で問題ないんだろうか?」


「驚いたわよね~。シュウゲンさんはサヨさんを探していたみたい。一応、居場所も伝えているようだしドワーフの王は鍛冶の腕が重要なのかも? 101階層の場所は分かったけど、この分だと102階層も他国の可能性が高いわね。きっと近くに大型ダンジョンがある場所へ移転するんだと思うわ。この移転陣を上手く使えば、別大陸へ簡単に行けそう」


「全ての移転先を調べる必要があるな。中には南大陸のアシュカナ帝国につながる階層もありそうだ」


 この移転陣を使用すればマッピングより距離が稼げる。

 私達は再び小屋に戻り、摩天楼ダンジョン99階へ移転した。


「茜。この小屋は、他の人に見えないと思う。多分ベヒモスを討伐した私達だけしか入れないし、宝箱と同じ仕様になってるんじゃないかしら?」


 実際倒したのは私だけど、パーティーを組んでいた茜も対象者になったんだろう。

 

「父さん達が戻ってきたら、その辺りは確かめよう。この隠し部屋の件は、正直に報告した方がいい。他の大型ダンジョンにも移転陣があるかも知れない」


「そうね。隠しておくには事が大きすぎるわ。戻ってくるまで何処どこへ繋がっているか、出来るだけ多く調べておきましょ」


「あぁ、そうしておこう」


 その後、時間ぎりぎりまで繋がっている階層先に移転を繰り返す。

 結果、分かったのは101~110階層は北大陸にあるそれぞれの国だった。

 111階層から先は、また別大陸かも知れない。

 31階の安全地帯へ戻り、何事もなかったようにテント内で兄達の帰りを待つ。


「沙良、機嫌がよさそうだな。何かいい事でもあったか?」


 私を見た瞬間、鋭い兄から突っ込まれあせってしまう。

 

「姉さんと土曜日、出掛ける予定なんだ。今から楽しみにしてるんだろう」


 茜がすかさずフォローをして兄の疑問を受け流すと、


「えっ? 2人で外出するの? 俺も一緒に行きたい!」


 旭が横から口を挟み手を挙げる。


「こら、妹達の邪魔をするな」


 兄は旭が挙げた手をつかみ降ろさせた。

 恨めしそうな表情をして兄を見つめる旭には悪いけど、2人で色々調べたいから付いてこられると困る。


「ごめんね、女同士で行きたい場所なの」


「そうなの? じゃあ、また今度一緒に出掛けようね」


 兄と仲良くジムでも行って下さい。

 シュウゲンさんを実家に送り届け、迷宮都市ダンジョン15階の安全地帯へ戻った。

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