ヤクザの親分……違ったウォーリーさんが、驚いて叫んでいる。
どうやってって、魅了魔法を使用して普通にとしか言いようがない。
けれど魔物の魔法を覚えられる事は秘密だ。
普通は魅了魔法を使えないと思った方がいい。
異世界の人はテイム魔法で魔物をテイムするんだろう。
う~ん、実際のところが分からない……。
そしてテイムした相手が男性だと確認したのは何故なのか。
それが普通だから?
女性の人はテイム出来ない?
「勿論、企業秘密です」
結局、冒険者は手の内を晒さない事を思い出し無難に答えた。
「それは分かるが、1人で2匹とは恐れ入った。アレクに、毎週とんでもない量の魔物を狩ってくる冒険者がいると聞いてはいたんだ。まさかたった3人のパーティーだとは思わなかったぞ? しかもテイムも使えるなんてどんな冒険者かと思ったら、とんだ嬢ちゃんだ」
それは一応、褒めてくれているんですかね?
「ギルマス、早いとこ従魔登録してやってくれ。さっきから2匹の魔物が俺を睨んでくるんだ。そいつらは相当Lvの高い魔物だな。よくテイムもされているし、問題ないだろう?」
ウォーリーさんにそう言われ後ろを振り返って2匹を見たけど、いつもと同じ様子にしか見えない。
?
「ええ、お待たせしてごめんなさい。これが従魔登録に必要な首輪です。付いている魔石に従魔の血を登録すれば、首輪のサイズは自動調整されるから」
「ありがとうございます」
ギルドマスターのオリビアさんから手渡された首輪を受け取った。
自動でサイズ調整出来る首輪かぁ~。
これも魔道具なんだろうな。
結界や自動調節機能が付けられる魔石の価格は高そうね。
今まで気にした事がなかったけど、どんな魔物の魔石なんだろう?
兄に首輪を渡して、魔石に血を登録するのは任せる。
血液を採るには傷を付けないといけないけど、私じゃ最小の傷を付ける事は出来ないからね。
兄はライトボールを極細の針のようにし、シルバーとフォレストを刺して血を1滴採取すると直ぐにヒールを掛けて治療してあげていた。
痛みは、ほんの一瞬で済んだ事だろう。
「ではこちらが従魔登録の用紙になります。魔物の種類、テイムした人の名前を書いて下さい」
テーブルの上に置かれた2枚の羊皮紙に、それぞれ自分の名前と『ゴールデンウルフ』・『迷宮タイガー』と記入して提出した。
今朝ステータスを確認したら、シルバーが進化を終えてゴールデンウルフに変わっていたのだ!
そしてMP消費も140になっていた。
毛皮は輝くばかりの黄金色でとても美しい。
こころなしかシルバーも、得意げな表情をしていた。
記入した登録用紙をオリビアさんが確認しながら一瞬目を見張ったけれど、特に問題なく処理されるようだ。
「以上で従魔登録は終了です。従魔が他人に害を及ぼした場合、責任の所在はテイムした人間になりますので注意して下さい。それと今回の首輪は迷宮都市のみ有効となります。他の町や都市で連れて歩く場合は、その町の冒険者ギルドで新しく首輪の登録が必要になります。王都の冒険者ギルドで首輪の登録をすれば、金貨1枚(100万円)必要になりますがカルドサリ王国内全都で有効になります。ただしS級冒険者の場合、登録料は不要です。貴方はC級冒険者だからS級になるのはまだ先ね。スキップ制度もあるから利用しても問題ないですよ」
スキップ制度?
旭がミリオネの町でC級冒険者になるために受けた物だよね?
C級冒険者から先に上がる制度もあるんだ……。
私は興味を覚えて、詳しい説明を聞く事にする。
「ありがとうございます。ちなみにスキップ制度は、どういうものですか?」
「C級冒険者がB級に年数を待たずに昇格試験を受けられる制度です。迷宮都市でいえば地下10階の魔物の討伐をB級冒険者に見てもらい、合格判定を受ける事が出来ればB級冒険者になれます」
「そんな制度があるんですね。教えて下さりありがとうございます。一度検討します」
従魔登録も無事終了し、私達は会議室を後にした。
登録料と首輪代はC級冒険者以上なら無料らしい。
これでシルバーとフォレストといつでも一緒に行動出来るよ!
ハニーの登録は当分しない事にしよう。
2匹で驚かれたんだから3匹目は止めた方がいい。
冒険者ギルドを出ると、兄から少しお小言をもらった。
「沙良、あまり無駄に相手を怒らせるような事はするなよ? ああいう手合いは、粘着質だから気を付けろ」
「そうだよ沙良ちゃん、俺みててヒヤヒヤしたんだから。どうしてそんな好戦的なの? あの人きっと冒険者ギルド首になるよ! あんまり心配させないでね」
「だって、態度が悪かったんだもの。年下の少女でC級冒険者だからって舐めすぎよ!」
「まぁ確かにあの態度はないな。でも忘れるなよ? 今の俺達は20そこそこの年齢なんだから、年長者は敬え」
「は~い、気を付けます。それよりさっき聞いたスキップ制度、B級冒険者に直ぐなれるんだって」
「ああ、俺達は知らなかったな。あまり利用者がいない制度なんじゃないか? 地下10階ならナイトメア(男性体)とアウラウネがいるから魔石取りも問題なさそうだ。来週受けてみるか?」
「うん、試験官のB級冒険者は地下10階を拠点にしてる人達かな? 全員知り合いだからやり易いね」
「さあな、試験官は冒険者ギルドが決めるんだろう」
私達は来週月曜日にスキップ制度を受ける事に決めた。
本来ならC級からB級に上がるには、5年間の経験年数が必要になる。
私達はまだ2年以上残っていたので、早く昇格出来るならしておきたい。
B級冒険者となれば、もう侮られる事はないだろう。
先程失礼な態度を取った秘書のオリーさんも、B級冒険者だったらならあんな態度は取らなかったかも知れないな。
まぁ相手を見て態度を変えるような人は、どのみちB級冒険者だろうが少女である私を見て見下した対応をすると思う。
さて秘書のオリーさんが、ギルドマスターに首を切られるのはいつだろう。
もしかして態と私達にぶつけたのかな?
元々、不要な人材だったとか……。
それにしては、秘書として雇っていた事が不思議だけど。
コネ入社かな?
貴族の三男辺りか……。
断れずに雇い入れたはいいけど、プライドばかり高くて使えない人材だったって感じかしらね。
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