【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第332話 迷宮都市 夢に出て来た妹 2

公開日時: 2023年4月7日(金) 18:05
更新日時: 2023年8月19日(土) 16:31
文字数:2,163

 1日で2つの町を回り、流石さすがに疲れていたのかお風呂に入ったらそのまま湯舟で眠ってしまったみたいだ。


 寒さで目が覚める。 


 そしてまた妹の夢を見た。

 前回見た夢とは違い、始めの方は香織かおりちゃんの気持ちが寂しさであふれていた。


『お母様、滅多に会えなくて寂しいよ。お父様は仕事で忙しいから、いつもご飯を独りで食べてるんだよ。お茶会にも行きたい、私も友達が欲しいのに……』


 妹が何処どこにいるのか、夢の中では景色が見えず声のみだったのが歯がゆくて仕方が無い。


 母親と滅多に会えない環境ってどういう事?

 聞いた感じからすると、この子はまだ幼い。

 母親の愛情が充分に必要な時期だろう。


 父親は仕事で忙しく、娘と一緒にご飯を食べる時間もないのか……。

 母親とも父親とも会えず、どうやら香織ちゃんは家で一人きりで過ごしているみたいだ。


 お茶会に参加したいと言っているので、裕福な生まれらしい。

 でも、お友達が居ないと泣いている。


 もしこの世界に生まれ変わっているのならば、貴族なのかも知れないな。


『お父様から誕生日プレゼントを貰った。毎年、同じぬいぐるみだ。私の事をいつまで、ぬいぐるみを欲しがる子供だと思っているんだろう。そんな事より、せめて誕生日くらい一緒に遊んでくれたらいいのに……』


 父親は子供が欲しい物も把握していないのか……。


 そして、母親からはプレゼントも貰えないらしい。

 この子は兄妹も居ない様だから、毎年寂しい誕生日を過ごしているみたいだ。


 うちの子に生まれていれば、誕生日はお母さんがご馳走ちそうを作って誕生日ケーキを焼き、家族全員からのプレゼントを貰う事が出来たのに……。


 お誕生日会は、とても楽しい思い出になったはずだ。


 誕生日ケーキの上に飾られた年齢分のロウソクが毎年増えていく事も、お母さんの弾くピアノに合わせて家族全員にハッピーバースデーの歌を歌ってもらい、ロウソクを吹き消す瞬間も私はとても好きだった。


 30歳を過ぎる頃には、ロウソクの数を嬉しい物だとは思えなくなってしまったけど……。

 39歳の時は、飾られたロウロクまみれの誕生日ケーキに気分がえたよ。


 まぁそれでも、毎年誕生日を祝ってくれる家族には感謝しているし、ケーキはとても美味しく頂いた。


 そして場面が変わる。


『私何も悪い事してないのに……。毎日棒で打たれて痛い……。それにお腹が空いてるの、いつまで耐えればいいのかな……。お父様、私こんなに痩せちゃったのに気付いてもくれないのね。何度も、視線を送ったのに……』


 また虐待されている……。


 子供を棒で打つなんて、一体誰がそんな事をするのか!

 母親とは滅多に会えないと言っていたからきっと別人だろう。

 そしてお腹が空くまで、食事を抜かれているの?


 仕事で忙しいという父親は、一体何をしているんだ。

 自分の子供が虐待されているというのに気付かないなんて!


 痩せている事くらい、普段からしっかり娘の状態を把握していれば簡単に分かる事でしょう?

 助けてほしいと願い視線を送るという事は、香織ちゃんが言えない状況にあるみたいだ。


 虐待している本人が近くに居るのか……。


 以前にも見た、この夢は一体何なのだろう?

 産まれる事が出来なかった、妹の香織かおりちゃんから助けを求める声なの?


 これが現在進行形で起きている事なら、ダンジョンを攻略している場合じゃない。


 でもこの世界に生まれてきている確証もなければ、夢の中の声だけでは手掛かりも無くどうやって探せばいいのか……。


 本当だったら今すぐにでも駆けつけて助け出してあげたいくらい、夢の中の香織ちゃんは追い詰められている。


 とても気になる夢だったので、お風呂から上がった後も中々寝付けなかった。


 翌日。

 私は久し振りに寝坊した。


 兄に起こされて、6時半だと言われ飛び起きる。

 7時には教会で炊き出しの準備を始めなければいけない。

 

 朝食を作っている余裕が無かったので、アイテムBOX内にあるコンビニ弁当を2人に渡して先に食べてもらった。


 私は急いで外出着に着替え、朝の準備を済ませる。

 アイテムBOX内のお握りを1個食べたら、シルバーとフォレストを呼んで教会の炊き出しに向かった。


 5人の母親達と今日は子供達も一緒だ。


 私達がスープを作っている間、子供達はシルバーとフォレストの背に乗って楽しそうに遊んでいる。

 2匹には、ゆっくり走ってあげるようにお願いしてあるので振り落とされる心配はない。


 大人の母親達より、子供達の方が従魔に慣れるのが早いのかな?

 

 8時になると子供達がやって来た。

 今日も1時間早い集合だ。


 兄と旭が小さな子供から順番に、シルバーとフォレストの背に乗せてあげている。


 2匹は子供達に大人気らしい。


 9時になり、パンと具沢山スープを配り始める。

 全員に行き渡った所で「頂きます」と挨拶をして皆が食べ始めた。


 今日は家持ちの冒険者達も来るので、劇が終わったら皆で『バーベキュー』をする予定だ。


 9時30分頃、アマンダさんとダンクさんのパーティーが到着。

 その後、家持ちの冒険者パーティーがぞくぞくと教会に集まってくる。


 サヨさんも、編み物教室の仲間と一緒に劇を見に来てくれた。

 母親達のいる隣の場所をキープしたようだ。


 こんな大勢に見られて、果たして劇の内容は大丈夫かしら?

 前回みたいな事にならないといいんだけど……。


 物語を知っているサヨさん、ごめんなさい。

 多分、別物になると思います……。

ポイントを押して下さった方、ブックマークを登録して下さった方、作品を応援して下さった方。

読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。


応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート