【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第303話 迷宮都市 子供達にシルバーとフォレストのお披露目

公開日時: 2023年3月24日(金) 12:05
更新日時: 2023年3月26日(日) 16:48
文字数:2,532

 時間も7時を過ぎる事なく換金出来たので、ホームの自宅に兄と2匹を迎えに行き教会の炊き出しの準備を母親達と始めた。


 母親達は体長3mもある魔物を初めて見ると少し怖がっていたけど、私と兄が2匹をでても大人しくしている様子を見て安心したようだ。


 今日は子供達にシルバーとフォレストを紹介してあげよう。

 皆テイムされた魔物を見るのは初めてだから喜ぶだろうなぁ。


 8時45分。

 子供達が炊き出しの列に並び出す。

 そこに大きな2匹の魔物がいるのを見て目を輝かせた。


 テイムされているため、2匹に狂暴性や獰猛どうもう性はまったくない。


 近付いてもシルバーやフォレストはえたりしないので、子供達にも安心して見せてあげられる。


「お姉ちゃん。この魔物は誰がテイムしたの? 大きくてかっこいいね!」


「こっちはシルバーで、兄の隣にいるのがフォレストよ。2匹とも私がテイムしたの!」


「2匹もテイムしたなんてすごいね~。僕、少しだけ触っても大丈夫?」


「優しくでてあげれば大丈夫よ。ビックリしないように、そっとしてあげてね」


「うん、分かった!」


 そう言って子供達が2匹の周りを取り囲む。

 今日ばかりは炊き出しのスープより2匹が人気のようだった。


 子供達は怖がる事なく、シルバーとフォレストをでている。

 スープが出来上がり配る時間になると、名残なごしそうに離れて食べ出した。

 

 食べながら、2匹の方をじっと見つめているのが分かり苦笑してしまう。

 小さな子供はどうしても気になってしまうのか、スプーンを口に入れずにこぼしてしまっている。

 

 それを見た年長者の子供が、あわてて口の周りをいてあげていた。

 血はつながっていないけれど、兄妹のように親身に世話を焼いている姿が微笑ましく映る。

 

 子供達に親はいない。

 代わりに、同じ家に住んでいる事で沢山の家族が出来ようだ。

 

 パンとスープを食べ終わっても帰ろうとしないので、私はシルバーとフォレストにお願いし、背中に子供達を乗せてゆっくり走ってもらう事にした。


 2匹がそれぞれ子供を5人乗せて走り出す。

 子供達は背中に乗って楽しそうにはしゃいでいる。


 こんな子供らしい姿を見る事が出来て嬉しい。

 我慢してばかりの子供達は我儘わがままひとつ言わないのだ。


 全員が騎乗を終えると、兄が大きなみかんを手渡して手を振る子供達を見送った。


 少し待ち合わせの時間に遅れてしまったけど、サヨさんはそんな子供達の様子を見ながら教会で待っていてくれたようだ。


「遅くなってしまいすみません」


「いいのよ。この子達が、サラさんがテイムした魔物なのね?」


「はい、大人しくて2匹とも良い子ですよ」


「ちゃんと言う事を聞くのね。私もテイムされた魔物を見るのは人生で初めてですよ。少しでさせてもらっても良いかしら?」


「はいどうぞ。んだりしないので大丈夫です」


 サヨさんは動物好きらしく2匹に近付くと、躊躇ためらいもせずでていた。


 その後、全員でホームの自宅に移転する。

 私とサヨさんは用事があるので、兄達には外食してもらう事にしよう。


 サヨさんに2人の仲を気付かれないよう注意しないと。


 あの2人は、普段からとても良い雰囲気をかもし出しているからね!

 旭なんて、もう兄にべったり依存している感じだし。

 バレたらサヨさんが驚き過ぎ、昇天してしまうかも知れない。


「サヨさん。お願いしたい事があるんですが……。今度子供達のために演劇をする事になりまして、その衣装をミシンで一緒に作ってもらえませんか?」


「まぁ、何のお話をするの?」


「浦島太郎です。ただ、本当にその内容になるかは怪しい所ではあるんですけどね。最悪、が主人公になりそうな感じの話です」 


「はい? 浦島太郎のお話で、何故なぜが主人公になるのかしら?」


何故なぜなんでしょうかね? 私にも理由がさっぱり分からないんですけど……。この世界の冒険者は、最後にお爺さんになる主人公をやりたがらないみたいで」


「どんなお話になるか、逆に興味がきます。演劇用の衣装を用意してあげたいのね。ミシンがあれば、手縫てぬいよりかなり早く仕上がるでしょう。問題ありませんよ、協力するわ」


「ありがとうございます。人数は……」


 それからサヨさんとデザインを打ち合わせ、細かい日程を決めていった。


 男性達の演舞は和装に近いデザインの衣装になった。

 勿論もちろん、上腕二頭筋が良く見えるようにノースリーブの上着だ!


 私は上半身が裸の方が良かったんだけどね~。


 小さな子供達がいるからと、兄が全面的にNGにしてしまった事が悔やまれる。

 子供達に見せても問題ないと思う。

 よこしまな目で見るのは大人の女性達&一部の男性だけだろう。 


 そうそうおがむチャンスは無いというのに非常に残念だ。

 仕方ないから韓国ドラマで、俳優さんのモロハダシーンを見て我慢してるのよ。


 あれは絶対女性向けのサービスカットに違いない。

 やたらシャワーシーンが多いんだもの。

 個人的には、シャワー後バスタオルを腰に巻いただけの状態がお気に入りです。


 リリーさんと私の扇舞おうぎまいの衣装は、乙姫様に相応ふさわしいひらひらとしたデザインだ。


 異世界で、このデザインはかなり斬新ざんしんに見えるだろうなぁ。

 女性冒険者から華蘭からんに注文が殺到しそうだよ。


 サヨさんは店の売上も考えてデザインしたのかしら?


 余り時間もないので、午後から型紙を起こして裁断作業に入る。

 サヨさんが型紙を作成している間に私は昼食の準備だ。


 懐かしいだろうと思い、朝から煮込んでいたおでん・・・に再び火を付ける。

 大根・コンニャク・卵・餅巾着もちきんちゃくには、味がしっかりと染みている頃だろう。


 おでんが温まったら、サヨさんに作業を中断してもらい一緒に昼食を食べる事にする。

 各種のおでん種を一通り深皿に盛り、辛子からしと柚子こしょうを用意した。


 おでんには隠し味として、コクが出るように黒砂糖が入っている。

 これは母のレシピだけど、きっとサヨさんから教わったものだろうな。


「頂きます」


 サヨさんは、おでんをとても美味しそうに食べてくれたのでほっとした。

 母から教わった料理の味は、サヨさんにとっても懐かしいものであったに違いない。


 私も味の染みた大根を口にする。

 やっぱり、おでんに入っている大根は外せない。

 餅巾着も卵も朝から煮込んでいたので良い味になっている。


 兄達の夕食は、おでんを食べてもらう事にしよう。

 私はサヨさんと一緒に、お礼として外食する予定だ。

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