今日のお昼は『チーズバーガー』と『フライドポテト』。
以前『フィッシュバーガー』を作ったけど、ここは王道の『ハンバーガー』を食べさせてあげよう!
確か姫様も好きだったと、ガーグ老が言っていた気がするし……。
挽肉作りは雫ちゃんに任せ、私は『フライドポテト』を揚げる準備をする。
母には玉ねぎをみじん切りにし、炒めてもらう。
兄達には、丸く成型したナンを焼くようお願いした。
挽肉と炒めた玉ねぎにし塩・胡椒・卵液を加えよく混ぜたら、粘りが出るまで捏ね合わせ掌サイズの大きさにする。
よく食べるご老人達は、日本人サイズの『バーガー』1個じゃ足りないだろう。
ボリューム満点のサイズにしたから、1個食べるだけで満足すると思う。
女性陣には半分のサイズで丁度よい。
レタスとピクルスがないのだけが不満だけど、そこはもうケチャップ味で誤魔化そう。
大きなハンバーグを母に焼いてもらい、私は皮付きのままくし切りにしたじゃが芋をラード入りの油で揚げていく。
周囲に調理中の匂いが漂い始めると、風もないのに庭の木の枝が揺れ出した。
異世界には木の妖精でもいるのかしら?
私には見えないけど……。
何かお供えしたら、ご利益があるかも?
家妖精はクッキーやミルクをあげると、代わりに家事をしてくれる良い妖精だ。
木の妖精は、何の役に立つか分からないなぁ~。
先週も何だか食べたいと自己主張していた気がするから、お昼ご飯を少し分けてあげよう。
完成した『チーズバーガー』半分と『フライドポテト』を皿へ載せ、枝が揺れている木の下に置いた。
すると枝が大きく動き、バサバサと音を立てる。
あぁ、やはり妖精がいるんだわ!
どれくらいの量を食べるか分からないので、ナッツ入りのショードブレッドを2本追加した。
多分、人がいると姿を見せないと思うから私は静かにその場を立ち去る。
やっぱりファンタジー世界には、不思議な生き物がいるみたい。
「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『チーズバーガー』と『フライドポテト』です。揚げたては熱いので火傷に注意しながら食べて下さいね。それでは頂きましょう」
「頂きます!」
ガーグ老が、料理名を聞き涙ぐんでいる。
「これが、姫様の食べたがっておられた『ハンバーガー』かの……。うむ、旨いのぉ~」
亡くなってしまった姫様を思い出したのか、ご老人達まで目に涙を浮かべている。
そして、かなりボリュームのあった『チーズバーガー』は、あっという間に皿から消えた。
皆さん、そんなにお腹が空いてたんですか?
大量に揚げた『フライドポテト』と、何故かエールではなく紅茶を飲んでいる。
やはり忙しくて、今日は午後から仕事なのかも知れないな。
「お兄ちゃん。庭の木に妖精がいたの!」
「何だって?」
「先週から、いるような気配を感じてたんだよ~。料理を作っていると木の枝が揺れ出すから、おかしいと思ってたんだけどね。何かご利益があるかも知れないと、お供えしたら枝をバサバサ揺らしてた!」
私の話を聞いた、父とガーグ老達が一斉に動きを止める。
あれ?
内緒にしておかないと駄目だった?
妖精は人間に気付かれると、いなくなってしまうのだろうか?
「サラ……ちゃん。木の妖精に気付くとは驚いたわ。妖精達は、食いしん坊だでな。料理の匂いに惹かれて集まったのだろう」
「あっ、やっぱり妖精がいるんですね! お兄ちゃん、私の勘が当たったみたいだよ?」
「妖精がいるのか……」
「どんな姿をしてるんだろう? 翅が生えた小さくて可愛い妖精かな?」
「うっ、うむ……あれらは人前に姿を現さんで、何とも言えんが……。意外と逞しい男性の姿をしておるかも知れんの」
ガーグ老から妖精像を聞き、私のイメージが崩れ去った。
いや、そんな妖精は可愛くない。
きっと子供姿の小さい妖精だよ!
「わぁ~、私も妖精を見てみたいなぁ~」
雫ちゃんが、私達の話を聞き顔を上気させ興奮していた。
うんうん、異世界といえば会ってみたい生物だよね~。
「まぁ、じゃあ私も何か作ってお供えしようかしら?」
と雫ちゃんのお母さんが言う。
あ~、それは止めた方がいいかも……。
妖精が逃げ出しそうだ。
普通にダンジョン産の果物をあげて下さい。
食事を終え、もう妖精は食べ終わったかしらと木へ近付く。
そこには皿から料理が消え、文字が書かれた羊皮紙が載っていた。
『サラ様。昼食をありがとうございます。大変美味しかったです。もし可能であれば、細長いクッキーを我が主のガーグ老へ差し入れて下さると助かります。いつも御身の傍で見守っております。』
……。
やけに人間くさい妖精だな。
私の名前を知っているなら言葉が分かるらしい。
文字も書けるとは、この世界の妖精は賢いようだ。
ガーグ老の言った通り、小さな子供ではないかも知れない。
なんか武人に通じる所がある文面だ。
嫌ぁ~!
逞しい男性姿の妖精に、需要はないわよ!
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