【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第574話 迷宮都市 お礼の『チーズバーガー』&木の妖精

公開日時: 2023年10月12日(木) 12:05
更新日時: 2024年2月2日(金) 22:08
文字数:1,975

 今日のお昼は『チーズバーガー』と『フライドポテト』。

 以前『フィッシュバーガー』を作ったけど、ここは王道の『ハンバーガー』を食べさせてあげよう!

 確か姫様も好きだったと、ガーグ老が言っていた気がするし……。

 挽肉ひきにく作りはしずくちゃんに任せ、私は『フライドポテト』を揚げる準備をする。

 母には玉ねぎをみじん切りにし、炒めてもらう。

 兄達には、丸く成型したナンを焼くようお願いした。


 挽肉と炒めた玉ねぎにし塩・胡椒こしょう・卵液を加えよく混ぜたら、粘りが出るまでね合わせてのひらサイズの大きさにする。

 よく食べるご老人達は、日本人サイズの『バーガー』1個じゃ足りないだろう。

 ボリューム満点のサイズにしたから、1個食べるだけで満足すると思う。

 女性陣には半分のサイズで丁度よい。


 レタスとピクルスがないのだけが不満だけど、そこはもうケチャップ味で誤魔化ごまかそう。

 大きなハンバーグを母に焼いてもらい、私は皮付きのままくし切りにしたじゃが芋をラード入りの油で揚げていく。

 周囲に調理中の匂いがただよい始めると、風もないのに庭の木の枝が揺れ出した。

 異世界には木の妖精でもいるのかしら?

 私には見えないけど……。


 何かお供えしたら、ご利益があるかも?

 家妖精はクッキーやミルクをあげると、代わりに家事をしてくれる良い妖精だ。

 木の妖精は、何の役に立つか分からないなぁ~。

 先週も何だか食べたいと自己主張していた気がするから、お昼ご飯を少し分けてあげよう。

 完成した『チーズバーガー』半分と『フライドポテト』を皿へ載せ、枝が揺れている木の下に置いた。

 すると枝が大きく動き、バサバサと音を立てる。


 あぁ、やはり妖精・・がいるんだわ!

 どれくらいの量を食べるか分からないので、ナッツ入りのショードブレッドを2本追加した。

 多分、人がいると姿を見せないと思うから私は静かにその場を立ち去る。

 やっぱりファンタジー世界には、不思議な生き物がいるみたい。

 

「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『チーズバーガー』と『フライドポテト』です。揚げたては熱いので火傷に注意しながら食べて下さいね。それでは頂きましょう」


「頂きます!」


 ガーグ老が、料理名を聞き涙ぐんでいる。


「これが、姫様の食べたがっておられた『ハンバーガー』かの……。うむ、旨いのぉ~」


 亡くなってしまった姫様を思い出したのか、ご老人達まで目に涙を浮かべている。

 そして、かなりボリュームのあった『チーズバーガー』は、あっという間に皿から消えた。

 皆さん、そんなにお腹が空いてたんですか?

 大量に揚げた『フライドポテト』と、何故なぜかエールではなく紅茶を飲んでいる。

 やはり忙しくて、今日は午後から仕事なのかも知れないな。


「お兄ちゃん。庭の木に妖精がいたの!」


「何だって?」


「先週から、いるような気配を感じてたんだよ~。料理を作っていると木の枝が揺れ出すから、おかしいと思ってたんだけどね。何かご利益があるかも知れないと、お供えしたら枝をバサバサ揺らしてた!」


 私の話を聞いた、父とガーグ老達が一斉に動きを止める。

 あれ?

 内緒にしておかないと駄目だった?

 妖精は人間に気付かれると、いなくなってしまうのだろうか?


「サラ……ちゃん。木の妖精・・に気付くとは驚いたわ。妖精は、食いしん坊だでな。料理の匂いにかれて集まったのだろう」


「あっ、やっぱり妖精がいるんですね! お兄ちゃん、私の勘が当たったみたいだよ?」


「妖精がいるのか……」


「どんな姿をしてるんだろう? はねが生えた小さくて可愛い妖精かな?」


「うっ、うむ……あれらは人前に姿を現さんで、何とも言えんが……。意外とたくましい男性の姿をしておるかも知れんの」

 

 ガーグ老から妖精像を聞き、私のイメージが崩れ去った。

 いや、そんな妖精は可愛くない。

 きっと子供姿の小さい妖精だよ!


「わぁ~、私も妖精を見てみたいなぁ~」


 雫ちゃんが、私達の話を聞き顔を上気させ興奮していた。

 うんうん、異世界といえば会ってみたい生物だよね~。


「まぁ、じゃあ私も何か作ってお供えしようかしら?」


 と雫ちゃんのお母さんが言う。

 あ~、それは止めた方がいいかも……。

 妖精が逃げ出しそうだ。

 普通にダンジョン産の果物をあげて下さい。

 食事を終え、もう妖精は食べ終わったかしらと木へ近付く。

 そこには皿から料理が消え、文字が書かれた羊皮紙が載っていた。


『サラ様。昼食をありがとうございます。大変美味しかったです。もし可能であれば、細長いクッキーを我が主のガーグ老へ差し入れて下さると助かります。いつも御身のそばで見守っております。』


 ……。

 やけに人間くさい妖精だな。

 私の名前を知っているなら言葉が分かるらしい。

 文字も書けるとは、この世界の妖精は賢いようだ。

 ガーグ老の言った通り、小さな子供ではないかも知れない。

 なんか武人に通じる所がある文面だ。

 嫌ぁ~!

 たくましい男性姿の妖精に、需要はないわよ!

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