【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第190話 椎名 賢也 7 子供達への支援 1

公開日時: 2023年1月26日(木) 13:35
更新日時: 2024年1月4日(木) 14:29
文字数:2,339

 沙良とつのウサギの討伐依頼を受けてから、Lvが上がった。

 こういうゲームみたいな感じを実体験出来るなんて、日本にいたら想像もつかなかっただろう。


 椎名しいな 賢也けんや 14歳

 レベル 5

 HP 300

 MP 300

 魔法 光魔法(ヒールLv0・ホーリーLv0・ライトボールLv2)


 どうやらHP/MPは、初期値の50が単純に6倍になったようだ。

 沙良の初期値は48なので、日本にいた時の年齢が基準となっているらしい。

 Lv0の時はライトボールのMP消費が1だったが、Lv2はMP消費が3に変わる。

 また威力いりょくも少し強くなり、発射速度も速くなったように思う。


 1晩寝ればMPは全回復するので、300あるMPは今のところ使い放題だ。

 そして沙良もLvが3に上がった。


 リーシャ・ハンフリー 12歳

 レベル 3

 HP 192

 MP 192

 魔法 時空魔法(ホームLv3・アイテムBOX・マッピングLv3・召喚)


 俺の予想通り、ホームを中心に半径3km以内が行動可能となったようだ。

 沙良の家から俺のマンションまでは約30Km離れている。

 早くLvを上げ、マンションをホームに設定してもらわないと!

 しかしLv1毎に1kmなら、あと27Lv上げる必要がある。

 俺が自分のマンションに戻れるのは、一体何時いつになるんだろうか……。


 E級の常設依頼は、角ウサギ本体・魔石(銅貨2枚・2,000円)の他にスライムの魔石(鉄貨1枚・100円)・ゴブリンの魔石(鉄貨5枚・500円)があるが、沙良はマッピングを索敵さくてき代わりに使用し、角ウサギだけを優先的に狩っているみたいだ。


 俺は異世界に転移したら定番のスライムとゴブリンを討伐してみたかったが、スライムは沙良に槍で突き刺されゴブリンは回避されたので、この2つの魔物を倒せなかった。

 換金率が一番高い魔物を対象にするのは、限られた時間しか活動出来ない沙良にとって当然なんだろうが、他にも何か目的がありそうだ。


 妹は昔から致命的に隠し事が下手だから、様子を見ていれば何かあると直ぐに分かる。

 まぁ今回は悪い問題じゃなさそうなので、自分から言い出すまでは放っておこう。

 ちらちらと、路上生活をする子供達に視線を向けているのが丸分かりだからな。

 きっと何とかしてやりたいんだろう。


 日本じゃ子供が路上生活をするなんてありえない。

 親のいない子供は国の児童養護施設で育てられるからだ。

 どうやらこの国の福祉は機能していないらしい。

 14歳の俺と12歳の少女では出来る事が限られている。 

 自分達に身の危険がおよぶような支援は、難しいと沙良も分かっているだろう。


 あくまで、この世界基準で問題ない範囲となると……。

 そう、決してホームで子供達を生活させる訳にはいかないのだ。

 それは一番してはいけない事の筆頭に当たる。

 もし妹が死んでしまったら?

 ホームに置き去りにされた子供達はどうなる?


 俺でさえ、沙良がいなければホームに入れない。

 また過度な1人にる支援は、その者以外の支援者がいなければ続かないだろう。

 子供達に必要なのは継続的な支援だ。

 さて、沙良は一体何を考えているのか……。


 その数日後。

 夕食のすき焼きを食べながら、沙良が唐突とうとつに提案してきた。


「お兄ちゃん。私、路上生活をしている子供達の家を買おうと思う。冒険者で稼いだお金を、全て使っちゃうけど賛成してくれないかな?」


「それが、お前の出した答えなら俺は賛成してやる。異世界のお金は今のところ使い道がないからな。だが、それ以上の支援は無理だ。生活用品や必要最低限の家具なんかもいいだろう。沙良、俺達が出来る範囲を超えるなよ。俺達は、この世界でまだ14と12の子供なんだ。俺は全ての悪意から、お前を守れる程まだ強くない」


「ありがとう、賛成してくれて。大丈夫! 私達の身に危険が及ばないよう、する心算つもりでいるよ。冒険者ギルドの所有している中古の一軒家が金貨1枚(100万円)だから、2人分の収入なら3ヶ月もすれば貯まると思う。D級に上がるまで1年間必要だし、その間に4軒は購入したいと思ってるから協力お願いします」


「了解。じゃあ1年間は毎日、角ウサギ狩りだな」


「うん、よろしくね!」


 沙良はそう言い席を立つと、食後のコーヒーをれにいった。

 デザートにチョコレートケーキのおまけ付きだ。

 すき焼きといい、本当に分かりやすい妹である。


 角ウサギ狩りの途中、森の中で怪我をした子供を見付けた。

 俺は直ぐに駆け寄り怪我をした足に水筒の水をかけ、患部の様子を確認した後、初めてヒールを唱える。

 すると、3秒ぐらいで傷口が綺麗にふさがった!

 何だこの魔法は!?


 外科医として少し納得いかないが、治療出来たんだから問題はないんだろう。

 本当なら傷口を消毒していたい所だが……。

 この魔法は今後、俺達にとって命綱になる。

 大切な妹を、両親の代わりに俺が責任を持って守らなければならない。


 俺はLv上げも兼ねて子供達の治療を積極的に行った。

 勿論もちろん、医者として治療手段を持ち合わせているのに、怪我人の放置は出来なかったのも理由ではあるが。

 いつか、この魔法が沙良の身を助ける事態が起きるかも知れない。

 そう思ったら、Lvは可能な限り上げておきたかった。


 異世界に病院はなさそうだし、たとえあっても日本のように高度な治療を受けられるとは到底思えないからな。

 後で後悔するのは、もう嫌だった。

 身内を亡くすのは、これ以上耐えられない。

 

 沙良には旭が亡くなり無気力でいた俺を、そばで支えてもらった恩がある。

 立ち直れたのは妹のお陰だった。

 俺はそのお礼を日本にいる時、ちゃんと言葉にした事があっただろうか?


 あの日――。

 妹の訃報ふほうを受け、いつか恩を返そうと思っていたのを後悔した。

 いつかなんて、なかった……。

 だから俺は、沙良が子供達を支援したいという気持ちを優先しよう。

 やりたい事を、なるべくさせてやりたい。

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