【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第748話 旭 樹 再召喚 40 武術稽古&Lv105になった娘

公開日時: 2024年4月6日(土) 12:05
更新日時: 2024年7月29日(月) 15:04
文字数:2,013

 土曜日は、午後からホーム内で娘が出した魔物を倒しLv上げを行う。

 妻と同じLv50になったと報告したら恩恵を聞かれた。

 転移した人間は、Lv50になると新しい魔法が増えるらしい。

 当然Lv70ある俺に恩恵はなく、何も覚えられなかったと伝えたが……。

 Lv100になったら、俺にも新しい魔法が増えるんだろうか?


 日曜日。

 子供達の炊き出しを終え、ガーグ老の工房へ。

 ポチとタマが飛んでくるなり両肩に止まる。

 娘は、駆け寄ってきた10匹のガルム達の頭を1匹ずつでていた。


「おはようございます。皆さん、今日もよろしくお願いしますね」


「サラ……ちゃん、よう来たな。どれ、今日は久し振りに儂が相手をしようかの」


 ガーグ老が稽古相手を務めるようだ。

 俺は、少し離れた場所で剣の型稽古をしながら2人の様子をうかがった。

 最初は普通に槍を繰り出していた娘が、何度もガーグ老にかわされ不満なのか槍を投げつけ始める。

 おいおい、どれだけ槍を持っているんだ?

 100本を超え地面が槍だらけになっている。


「サラ……ちゃんは、負けず嫌いだのぉ。姫様とそっくりだわ」


「あの、聞いて良いか分かりませんが……。護衛していた姫様は生きてらっしゃるんですか?」


 そんな娘の行動を、俺にそっくりだとガーグ老が言う。

 しかし娘に確信をついた質問をされ、視線を彷徨さまよわせたじいがちらりとこちらを向いた。

 

「姫様は……、生きておられる。今も元気に剣の練習をしていなさるよ」


 そんな事を言ったらバレるじゃないか!

 演技は期待してないが、もっと上手く誤魔化ごまかしてくれ!

 ドキドキして娘の反応を見ると、何も言わずに黙ったままだった。

 よく分からないが、背を向けているガーグ老は娘が納得するような仕草しぐさでもしたんだろうか?

 稽古が終了し、ひびきとガーグ老の3人で工房内に入る。

 先程の件を聞こうと思ったら、ガーグ老の方から話を切り出された。


「姫様。御子のLvが随分ずいぶん上がっているようですぞ。内緒で階層を移動されてはおらんかの?」


 なんだって?


摩天楼まてんろうのダンジョン31階から移動はしてないと思うが……」


 響が怪訝けげんそうに言う。

 今は安全地帯のテントから出ず、魔物を倒しているはずじゃ?

 あぁ待てよ、一緒にいるのはあかねちゃんか……。

 彼女はLv上げに貪欲どんよくだから、娘が内緒で階層を移動するのに賛成しそうだな。


「ええっと、どれくらい上がったように感じるのかしら?」


「儂の体感では倍くらいかの」


 倍って何!? 娘のLvは55じゃなかったか?

 一体どんな魔物を倒したら、そんな急にLvが上がるんだ!


「後で沙良に確認しておこう。テント内で大人しくすると思ってたが、以前も内緒でLv上げをしていたからな。また一番上の階層から攻略している可能性がある」


 魔物がいる一番上の階層なら99階だ。

 いくらなんでも『万象ばんしょう』達が追いつけないだろう。

 護衛がいない状態なのはまずい。


「困った子ね。移転の能力は便利だけど、本当に厄介やっかいだわ」


「お前に似たんだろう」

 

 そう言いながら、響が俺を見て大きな溜息を吐く。

 俺は否定するように顔をぶんぶん横に振ったが、隣でガーグ老は何度もうなずいていた。

 娘のLvが上がった件を聞き、すっかり先程の話を聞くのを忘れてしまう。

 工房から出ると、今日も三男役が料理を配膳していた。


「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『サーモンのムニエル』・『シチュー』・『ロールパン』です。それでは頂きましょう」


「頂きます!」


 沙良ちゃんの合図で皆が一斉にはしを付ける。

 

「おぉ! 揚げた物もいいが、これも中々旨いの~」


 食べたガーグ老が感想を言い、満足そうに笑っていた。

 妻は妖精のお供え用にホットケーキを作っていたから、木から落ちる心配はしなくてもいいな。

 

「そろそろ結婚式の準備を始めた方がいいと思うが、サラ……ちゃんの衣装は決まっておるのか?」


「ガーグ老、実は……」


 結婚式の衣装を聞かれた娘が、言いづらそうに代役を立てる話をする。

 まぁ、その代役は女性化した俺なんだが。


「なんと! 相手はサラ……ちゃんではないのか!? それなら、儂も正装せねばなるまい。イツキ殿の着飾った姿を見られるとは……。長生きはするもんだわ」


 ヒルダの姿に戻り、偽花嫁になると知ったガーグ老が張り切り出す。

 俺は3度目の結婚式の相手が爺だと思うと憂鬱ゆううつな気分になった。

 衣装は、なるべくシンプルな物にしよう。

 いかにも花嫁衣裳だというフリフリのドレスは着たくない。


 娘達が工房を出てから響に話を聞くと、やはり99階の魔物を倒していたみたいだ。

 しかもベヒモスって……、普通は2人で倒そうとする魔物じゃないよな?

 俺だって、そんな無謀むぼうな真似はしない。

 娘のLvは105になっていたらしい。

 俺より上じゃないか!


 基礎値が高い分まだステータス値は勝っているが、その内逆転されそうだ。

 俺もLv上げの方法を考えておこう。

 2週間後の結婚式には間に合わないだろうが、今後を考えると100までは上げておきたい。

 恩恵も何があるか楽しみだ。

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