朝食後の後片付けも終わり、9時に安全地帯のテントにそれぞれ送る。
テントから出て、アマンダさんとダンクさんパーティーに挨拶を済ませたら3人が別行動開始。
私はシルバーに乗って、まずはトレントの森に向かった。
森に到着したらハニーを迎えに行く。
キウイフルーツを収穫後、2匹の迷宮タイガーの脳を石化して収納。
今回丸椅子に使用する木材は大量にあるトレントにしよう。
この不思議な魔物は、死ぬと直ぐに木材として使えるようになるらしい。
普通切り倒した木は、直ぐに使用出来ないんだよね~。
トレントは沢山狩っても、翌日にはまた森になっているので非常に便利な木材だ。
森の外側を収納すると規模が小さくなるので、中心から次々と脳を石化させて収納していく。
50本くらい狩って、残りの時間は薬草採取だ。
ハニーが魔力草を上空から見付けては教えてくれるので、私は癒し草を探しながら魔力草も採取する。
3時間経過後、ハニーを地下13階に送り届け同じ階層にいた兄を回収。
再び地下14階の安全地帯のテントまでシルバーに乗っていく。
テント内に旭がいるのはマッピングで見て分かっていたので、シルバーから降りてテントの中に入った。
そのまま自宅に戻ってくる。
今日のお弁当は、豚の生姜焼き・アスパラベーコン巻き・人参しりしり・舞茸のバター炒め・ひじき煮だ。
里芋とねぎと揚げの味噌汁&抹茶入り玄米茶と一緒に頂きます。
午後から丸椅子を作る心算なので、兄達に作り方を知っているか聞いてみよう!
「お兄ちゃん。今日は椅子取りゲームに使う丸椅子を製作したいんだけど、作り方知ってる?」
「沙良、俺達がどこの大学に行ったか覚えているか?」
「医大だよね?」
「医大生に椅子を作っている暇なんかある訳ないだろう? 回答は、当然知らん」
そんな威張って言う事じゃないのに……。
「沙良ちゃん、普通は趣味でもないと椅子の作り方は知らないと思うよ?」
旭はやんわりと、自分が知らない事を教えてくれた。
そうか……。
男性だからって、作り方を知っている訳じゃないんだ。
「じゃあ、作り方が載ってる本を探してみるよ~」
「何脚作る心算か知らないが、俺は家具職人に依頼した方が早いと思うけどな」
いや、それはそうなんだけどさぁ~。
午後から空いた時間を私は有効活用したいんです。
「一応50脚くらいを予定してる」
「沙良ちゃん、素人に50脚は無理なんじゃない?」
「大丈夫だよ! ウィンドボールを使用すれば、のこぎり代わりに使えて簡単に切断出来るし」
「指を切らない事を祈っておくよ。もし怪我をしたら、直ぐに俺達の所にくるんだぞ」
なにやら兄が不吉な事を言ってくれる。
魔法で自分を切る事なんてしないわよ!
「沙良ちゃん我慢しないで、俺が治療してあげるからね!」
何故旭まで、私が怪我をする事前提で話すんだろう?
う~ん、2人に言われると心配になってきた。
初めての椅子作りは、なんだか既に嫌な予感がするのは気の所為?
昼食を食べ終えた後で、2人を送り届ける。
私はホームの自宅にシルバーと一緒に戻ってきた。
まずは丸椅子の作り方から調べないと。
こんな時はネット検索出来たら時短になるんだけど、贅沢は言えないか……。
百貨店の中にある大型の本屋に移動して、椅子の作り方が載っている本を検索機で探す。
すると初心者向けの本が幾つか見付かった。
その内の1冊をレジに持っていき、精算を済ませて自宅に戻る。
空き部屋に移動して、床に青いビニールシートを置いたら準備完了。
さて、丸椅子作りを開始しよう。
購入した本を開いて作り方を読んでいくと、一番最初で躓いた……。
まず座面の丸板が無い!
私が狩ったトレントは、高さが5mもあるのでそもそも部屋に入らなかったよ。
自分の段取りの悪さに嘆きつつ、駐車場に移転してトレントの枝をウィンドボールをカッターのようにイメージして切り落としていく。
切り落とした枝も、何かに使えるだろうと再び収納しておいた。
枝が綺麗に落とされ木材として使用出来る状態になると、スケールで測り印を付け1mの間隔で横に切っていく。
これで、部屋の中で出しても問題ない長さになった。
同じ作業を10本程繰り返して再び空き部屋に戻ってくる。
1mになったトレントを輪切りにしていく作業開始だ。
子供達が座るだけなので厚みは3cmくらいあれば良いか。
3cm間隔に印をつけて切り口が平行になるようにイメージを保ち、魔法で輪切りにしていく。
おぉ、凄い!
ちゃんと平行に切れてるじゃん!
これ、のこぎりを使用して切ったら多分ガタガタだったろうなぁ~。
私は何の労力もなく、1mのトレントから33枚の丸板を作り出すことに成功した。
まだ足りないので、もう1本出して同じ作業をする。
合計66枚の丸板完成だ。
断面を手で触ってみると、非常に滑らかでやすりを掛ける必要がない。
次は足の部分だ。
子供達が座れるように座高を低くしないと。
高さは30cmくらいが良いかな?
『肉うどん店』の子供達は、まだ5歳だからね~。
本を再び開くと、またしても作業を中断する事になった。
そっか、足を付けるには角度が必要になるんだね。
そして角度定規やネジや電動ドリルも、私は持っていなかった。
DIY好きなアパートの住人さんは居ないかしら?
アイテムBOX内を調べると、角度定規と電動ドリルを発見!
ネジは合う長さを調べないといけない。
ゔぅ……。
こりゃ時間が掛かりそうだ。
まずは足の1辺の長さを決めよう。
これは5cmにした。
太い方が安定感が増すだろうと思って。
問題は、この足が最低50×4=200本必要だって事。
そして補強材も2本必要だった。
丸板は輪切りにすれば良かったけど、足はどうやって切ったらいいんだろう。
木材を縦にし5cmの厚みの板を切り出してから、更に5cm幅の角材を切り出す事は可能だろうか?
更に組み立てる時は固定に専用の治具が必要な気がする。
私がすると歪む未来しか思い浮かばないなぁ~。
何も全部を私1人で作る必要はないんだから、出来ない部分は本職に依頼すればいいのだ。
週末にカマラさんに会いに行くので、職人さんを紹介してもらおう。
丁度良い時間になっていたので、テント内に移転して2人を待つ。
マッピングで外の様子を調べると、旭が怪我人の治療をしていた。
今日は男性の冒険者らしい。
太ももを切り裂かれていたので、トレントの風魔法にやられたんだろう。
止血のために傷口より上部を紐で縛った上で、更に棒を入れてねじってある。
太い血管が切れていたのか……。
旭が傷口に水を大量に掛けると、男性冒険者は歯を食いしばって痛みに耐えているようだ。
パーティーメンバーが、動かないように肩を押さえつけている。
その後、旭がヒールを掛けると傷口が一瞬で塞がり、真っ青な顔をしていた冒険者の顔色も元に戻った。
きっとHP回復のホーリーも同時に掛けてあげたんだろう。
旭がお礼の治療費を受け取ってテントに入ろうとした所を、男性冒険者が呼び止めている。
テント内にいるので声は聞こえないけど、どんな内容かは想像が付いた。
あ~また誘われてるよ。
そこにタイミングよく、フォレストに乗った兄が戻ってきた。
おっ、まるで白馬に乗った王子様の登場だね!
連れ去られそうになっている旭を、兄が無事回収して一緒にテント内へ入ってくる。
旭が兄の後ろに張り付いて、ちょっと涙目になっているんだけど……。
兄は私の姿を確認すると、すかさず両手を掴んで怪我をしていないか確認してきた。
失礼なっ!
私は、そんなに不器用じゃないわよ!
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