【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第377話 迷宮都市 地下14階 丸椅子作り

公開日時: 2023年4月30日(日) 12:05
更新日時: 2023年8月24日(木) 23:33
文字数:3,030

 朝食後の後片付けも終わり、9時に安全地帯のテントにそれぞれ送る。


 テントから出て、アマンダさんとダンクさんパーティーに挨拶を済ませたら3人が別行動開始。


 私はシルバーに乗って、まずはトレントの森に向かった。

 森に到着したらハニーを迎えに行く。

 キウイフルーツを収穫後、2匹の迷宮タイガーの脳を石化して収納。


 今回丸椅子に使用する木材は大量にあるトレントにしよう。

 この不思議な魔物は、死ぬと直ぐに木材として使えるようになるらしい。


 普通切り倒した木は、直ぐに使用出来ないんだよね~。

 トレントは沢山狩っても、翌日にはまた森になっているので非常に便利な木材だ。


 森の外側を収納すると規模が小さくなるので、中心から次々と脳を石化させて収納していく。

 50本くらい狩って、残りの時間は薬草採取だ。

 

 ハニーが魔力草を上空から見付けては教えてくれるので、私は癒し草を探しながら魔力草も採取する。


 3時間経過後、ハニーを地下13階に送り届け同じ階層にいた兄を回収。

 再び地下14階の安全地帯のテントまでシルバーに乗っていく。


 テント内に旭がいるのはマッピングで見て分かっていたので、シルバーから降りてテントの中に入った。

 そのまま自宅に戻ってくる。


 今日のお弁当は、豚の生姜焼き・アスパラベーコン巻き・人参しりしり・舞茸のバター炒め・ひじき煮だ。

 里芋とねぎと揚げの味噌汁&抹茶入り玄米茶と一緒に頂きます。


 午後から丸椅子を作る心算つもりなので、兄達に作り方を知っているか聞いてみよう!


「お兄ちゃん。今日は椅子取りゲームに使う丸椅子を製作したいんだけど、作り方知ってる?」


「沙良、俺達がどこの大学に行ったか覚えているか?」


「医大だよね?」


「医大生に椅子を作っている暇なんかある訳ないだろう? 回答は、当然知らん」


 そんな威張いばって言う事じゃないのに……。


「沙良ちゃん、普通は趣味でもないと椅子の作り方は知らないと思うよ?」


 旭はやんわりと、自分が知らない事を教えてくれた。


 そうか……。

 男性だからって、作り方を知っている訳じゃないんだ。


「じゃあ、作り方がってる本を探してみるよ~」


「何脚作る心算つもりか知らないが、俺は家具職人に依頼した方が早いと思うけどな」


 いや、それはそうなんだけどさぁ~。

 午後から空いた時間を私は有効活用したいんです。

 

「一応50脚くらいを予定してる」


「沙良ちゃん、素人に50脚は無理なんじゃない?」


「大丈夫だよ! ウィンドボールを使用すれば、のこぎり代わりに使えて簡単に切断出来るし」


「指を切らない事を祈っておくよ。もし怪我をしたら、直ぐに俺達の所にくるんだぞ」


 なにやら兄が不吉な事を言ってくれる。

 魔法で自分を切る事なんてしないわよ!


「沙良ちゃん我慢しないで、俺が治療してあげるからね!」


 何故なぜ旭まで、私が怪我をする事前提ぜんていで話すんだろう?

 う~ん、2人に言われると心配になってきた。


 初めての椅子作りは、なんだか既に嫌な予感がするのは気の所為せい


 昼食を食べ終えた後で、2人を送り届ける。  

 私はホームの自宅にシルバーと一緒に戻ってきた。

 

 まずは丸椅子の作り方から調べないと。

  

 こんな時はネット検索出来たら時短になるんだけど、贅沢は言えないか……。

 百貨店の中にある大型の本屋に移動して、椅子の作り方が載っている本を検索機で探す。


 すると初心者向けの本が幾つか見付かった。

 その内の1冊をレジに持っていき、精算を済ませて自宅に戻る。


 空き部屋に移動して、床に青いビニールシートを置いたら準備完了。

 さて、丸椅子作りを開始しよう。


 購入した本を開いて作り方を読んでいくと、一番最初でつまずいた……。

 まず座面の丸板が無い!


 私が狩ったトレントは、高さが5mもあるのでそもそも部屋に入らなかったよ。


 自分の段取りの悪さになげきつつ、駐車場に移転してトレントの枝をウィンドボールをカッターのようにイメージして切り落としていく。

 切り落とした枝も、何かに使えるだろうと再び収納しておいた。


 枝が綺麗に落とされ木材として使用出来る状態になると、スケールで測り印を付け1mの間隔で横に切っていく。


 これで、部屋の中で出しても問題ない長さになった。

 同じ作業を10本程繰り返して再び空き部屋に戻ってくる。


 1mになったトレントを輪切りにしていく作業開始だ。

 

 子供達が座るだけなので厚みは3cmくらいあれば良いか。

 3cm間隔に印をつけて切り口が平行になるようにイメージを保ち、魔法で輪切りにしていく。


 おぉ、すごい!

 ちゃんと平行に切れてるじゃん!


 これ、のこぎりを使用して切ったら多分ガタガタだったろうなぁ~。


 私は何の労力もなく、1mのトレントから33枚の丸板を作り出すことに成功した。

 まだ足りないので、もう1本出して同じ作業をする。


 合計66枚の丸板完成だ。

 断面を手で触ってみると、非常に滑らかでやすりを掛ける必要がない。


 次は足の部分だ。

 子供達が座れるように座高を低くしないと。


 高さは30cmくらいが良いかな?

 『肉うどん店』の子供達は、まだ5歳だからね~。

 

 本を再び開くと、またしても作業を中断する事になった。

 そっか、足を付けるには角度が必要になるんだね。


 そして角度定規やネジや電動ドリルも、私は持っていなかった。

 DIY好きなアパートの住人さんは居ないかしら?


 アイテムBOX内を調べると、角度定規と電動ドリルを発見!

 ネジは合う長さを調べないといけない。


 ゔぅ……。

 こりゃ時間が掛かりそうだ。


 まずは足の1辺の長さを決めよう。

 これは5cmにした。


 太い方が安定感が増すだろうと思って。

 問題は、この足が最低50×4=200本必要だって事。

 そして補強材も2本必要だった。


 丸板は輪切りにすれば良かったけど、足はどうやって切ったらいいんだろう。


 木材を縦にし5cmの厚みの板を切り出してから、更に5cm幅の角材を切り出す事は可能だろうか?


 更に組み立てる時は固定に専用の治具が必要な気がする。

 

 私がすると歪む未来しか思い浮かばないなぁ~。

 何も全部を私1人で作る必要はないんだから、出来ない部分は本職に依頼すればいいのだ。


 週末にカマラさんに会いに行くので、職人さんを紹介してもらおう。

 丁度良い時間になっていたので、テント内に移転して2人を待つ。


 マッピングで外の様子を調べると、旭が怪我人の治療をしていた。

 今日は男性の冒険者らしい。

 

 太ももを切り裂かれていたので、トレントの風魔法にやられたんだろう。

 止血のために傷口より上部をひもしばった上で、更に棒を入れてねじってある。

 

 太い血管が切れていたのか……。


 旭が傷口に水を大量に掛けると、男性冒険者は歯を食いしばって痛みに耐えているようだ。

 パーティーメンバーが、動かないように肩を押さえつけている。


 その後、旭がヒールを掛けると傷口が一瞬で塞がり、真っ青な顔をしていた冒険者の顔色も元に戻った。

 きっとHP回復のホーリーも同時に掛けてあげたんだろう。

  

 旭がお礼の治療費を受け取ってテントに入ろうとした所を、男性冒険者が呼び止めている。

 テント内にいるので声は聞こえないけど、どんな内容かは想像が付いた。


 あ~また誘われてるよ。

 

 そこにタイミングよく、フォレストに乗った兄が戻ってきた。

 おっ、まるで白馬に乗った王子様の登場だね!


 連れ去られそうになっている旭を、兄が無事回収して一緒にテント内へ入ってくる。

 旭が兄の後ろに張り付いて、ちょっと涙目になっているんだけど……。


 兄は私の姿を確認すると、すかさず両手をつかんで怪我をしていないか確認してきた。


 失礼なっ!

 私は、そんなに不器用じゃないわよ!

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