セイさんからの思わぬ申し出に、私は聞きたい話を忘れてしまった。
まさか一緒にパーティーを組みたいと言われるなんて予想外過ぎる。
後輩からの言葉に、父はどうするんだろうと様子を窺うと考え込んでいるようだ。
知り合いだし、下の名前で呼ぶくらいだから仲が良かったんだろう。
この世界で35年冒険者をしているなら、即戦力になる。
S級冒険者は、私のパーティーにいないからね。
元日本人なら秘密を話してもいいし、加入する事自体に問題はなさそうだ。
ただ摩天楼のダンジョンにいるセイさんと、どうやって知り合ったか辻褄を合わせる必要はあるかも。
私がそんな事を考えていると、黙っていた父が口を開く。
「聖、お前いまLvは幾つだ?」
「Lv100になったばかりです。このダンジョンの50階を攻略してますが……」
「Lv100で、まだS級冒険者なのか?」
父はセイさんのLvを聞いても驚かず、まだS級冒険者なのかと返していた。
Lv100は私の目標なのに……。
もっと、凄いと褒めてあげてよ!
「あっ最近SS級冒険者に昇格しました」
おっと、セイさんはS級からSS級冒険者になっていたようだ。
A級以上の冒険者が、どう昇格するのか知らないけどかなり少ないとは理解出来る。
なのに父は、その答えにも無感動だった。
「そうか……。お前が突然抜けて、パーティーメンバーは困らないのか? 最終攻略組だろう?」
「それは大丈夫です。運命の人を見付けたら、パーティーを抜ける約束で入ってますから」
セイさんにとって、運命の人はかなり重要な存在らしい。
真面に恋愛をした経験がないのかな?
今時、運命を感じるなんて……。
きっと純粋な人なんだろう。
「訳あって今直ぐは難しい。俺達は7人パーティーだが、残りの5人は迷宮都市のダンジョンを攻略中だ。このダンジョンにいるのは内緒だからな。午前中は迷宮都市、午後からは摩天楼のダンジョンと変則的な攻略を娘としている」
「それはまた……随分と変わった攻略の仕方ですが、メンバーへ内緒にしている理由でも?」
「あぁうちの長男が、かなり妹に過保護でな。Lv上げの攻略階層を誤魔化す必要があるんだよ」
「過保護な長男……。何故か知っている感じがします」
「お前は会った事ないと思うぞ?」
「う~ん、何か引っかかるんですよねぇ。運命の人でしょうか?」
「お前の運命の人は何人いるんだ! 俺の子供達ばかり止めてくれ。それに残念だが、長男は結婚済みだ」
「そうですか……。取り敢えず、今からパーティーメンバーに抜けると報告してきます」
そう言い、セイさんは止める間もなくテントから飛び出していった。
行動が早すぎて目が点になる。
えっ?
人の話を聞かないタイプ?
父が今直ぐは難しいと断ったばかりなのに……。
「あ~悪い沙良。パーティーメンバーに聖も追加してくれ。知り合いでSS級冒険者なら、役に立つだろう」
父は、かなり合理的な考えでセイさんの加入を決めたようだ。
知り合いが異世界で独りだから、可哀想だとは思わないらしい。
「お兄ちゃん達に、どうやって説明するの? セイさんが、摩天楼のダンジョンにいると知ってるよ?」
「まぁ、何か後で理由を考えよう。暫くは、こちらのダンジョンに待機してもらう他ないな」
「一度地上へ帰還するらしいから、明日どこかで待ち合わせしないとね」
30分後、再びセイさんがテントに戻ってきた。
パーティーメンバーとは話が付いて、この後はもう自由になったと言う。
それなら、今日はホーム内で泊まった方がいいだろう。
セイさんを連れてホームに移転し、市内のホテルへ移動する。
日本円は、彼が持っていた金貨を父が換金し渡した。
ホーム内は距離が限られているけど移動出来る事や、飲食店やスーパーやコンビニも無人だけど24時間営業している事等を伝える。
セイさんは日本と同じ景色のホーム内に、驚き唖然としているようだった。
私達はもう時間なので、迷宮都市に帰らなければいけない。
ホーム内で1人にしても大丈夫だろう。
久し振りの日本生活を楽しんでいる間に直ぐ慣れると思う。
夕食後また会いにいくと断り、私達は迷宮都市の安全地帯へ戻った。
問題を先送りにしてしまったけど、父は何かいい理由を考え付くのかな?
食事を終えてホーム内に戻り兄達を再び安全地帯へ送り届けた後、父と一緒にセイさんへ会いにいく。
ホテルへ到着後、セイさんを探すと部屋にいない。
ひょっとして飲みに出かけたかも?
異世界のお酒は兄達には不評だったから、日本のお酒を飲みたいだろうし……。
無人だと念を押したので、綺麗なお姉さんがいる店にはいってないと思う。
ホテル最上階にあるバーの店内を探すと、セイさんを発見!
既に彼は酔っており、話が出来る状態じゃなかった。
まぁ、仕方ない。
異世界生活が長かった分、飲みすぎたんだろう。
父が酔ったセイさんを抱き上げ部屋へ運び、ベッドに寝かしてあげた。
サイドボードへ明日の昼過ぎ、迎えにいくと書いた紙を残し私達も帰る。
二日酔は大丈夫かな?
ポイントを押して下さった方、ブックマークを登録して下さった方、作品を応援して下さった方。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。
これからもよろしくお願いします。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!