【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第642話 迷宮都市 セイさんのリクエスト&飛翔魔法の練習

公開日時: 2023年12月22日(金) 12:05
更新日時: 2024年4月14日(日) 12:16
文字数:2,732

 シュウゲンさんを王都の武器屋へ送り荷物をまとめてもらった。

 弟子のバールさんに店を譲り鍛冶職人は引退していたらしく、


「儂は放浪の旅に出る」


 と言って、祖父は実家へ引っ越す事を決めたようだ。

 いつきおじさんへ10個のポシェットを渡し、またマジックバッグにしてほしいとお願いする。

 魔力は寝たら回復するので、攻略のない日ならMPを使用しても大丈夫だろう。

 旭家へ送った後3人を連れ実家へ戻り玄関を開けると、母が夕食の準備をしていたのか美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。

 煮物を作っているのかな?

 

「お母さん、ただいま~。後でお兄ちゃんと旭が増えても大丈夫?」 


「おかえりなさい。2人増えても大丈夫よ」


「じゃあ、メインは私が作るね。今日は餃子にしよう!」


「あら、いいわね」


 セイさんのリクエストは餃子なので、沢山作れば残りをアイテムBOXに収納でき一石二鳥だ。

 私は材料を刻み種を作り、母と餃子の皮に包んでいく。

 7人家族だと100個は作る必要があるから、数が少なくて済むよう椎名家は大判の皮にたっぷり種を入れる。

 兄へ念話の魔道具で連絡を入れ、夕食は実家で食べる事を伝えた。

 旭がアイテムBOXに2人分のバイクを収納しているから、20分もすれば戻ってくるだろう。


 ホットプレートを出し餃子を焼き始めると、男性陣は母が作った筑前煮ちくぜんにをつまみにビールを飲み出す。

 祖父は異世界生活が長かった分、日本のビールが飲めて幸せそう。

 もしかして引っ越しの決め手はドワーフだけに、お酒だったりするのかしら?

 餃子が焼きあがる頃に兄達が戻り、よく食べる2人へ丼でご飯を大盛にして出す。

 人数が増えてにぎやかな食卓を見ながら母が嬉しそうに言った。


「早く、あかね遥斗はると雅人まさとに会いたいわ」

 

 日本にいる子供達が心配なのだろう。

 あぁ、雅人の名前は祖父の雅美まさみという名前から取ったのか……。


「3人の他に、まだ子供がいるのか?」


 双子達が生まれる前に亡くなってしまった祖父が驚いている。


「ええ、あれから双子を産んだの。2人の写真を後で見せるわ」


「そうかそうか、儂は孫が沢山じゃの」


 スパルタ勉強会は既に始まっているようで食後に、兄がまた病院へ戻ると言い嫌がる旭を連れ帰る。

 珍しく夕食にお酒を飲んでいなかったから、変だと思ったんだよね~。

 私はセイさんの所へいく必要があるため、祖父へアルバムを見せている母に気付かれないよう、父へ目配せしリビングから出てもらった。

 異世界には1人でいかないと兄と約束しているから、なるべく誰かと一緒に行動するように心がけているんだよ。

 母へ父とシルバー達の散歩に出かけると伝え家を出た。

 セイさんの所へいく前に、父にはガルムをテイムしてしまった件を話しておこう。


「お父さん。今日ガーグ老の所に騎獣が届いたでしょ? 魅了みりょうを使ってないんだけど、名前を呼んだら10匹共テイムしちゃったみたいなの」


「何だって!? 10匹分も、魔力が足りないだろう!」


「あ~、同じ種族の所為せいなのか魔力を消費するのは1匹だけみたいで、リーダーになってたよ?」


「群れをテイムした状態になっているのか……。じゃあガルム達は、お前の言う事しか聞かないんじゃないか? それはまずいだろう」

 

「ガーグ老の笛に合わせて行動するよう、お願いしたから大丈夫!」


「はぁ~。本当に、お前のテイム方法はバレたら大変だな。沙良、今回は仕方ないが、これからは充分気をつけるんだぞ」


「うん! 勝手にテイムすると、お兄ちゃんに怒られるから内緒にしてね!」


「あぁ、分かった」


「それで、ガルム達の飛翔魔法を習得したんだよね~。私、空を飛べるんだよ!」


「飛翔魔法だと!? ……いや、より安全に逃げられるようになるか?」


 新しい魔法を覚えたと伝えたら、父が何かを考えている。

 どうせなら父にも覚えてもらおうと、異世界の庭に移転して直ぐガルちゃん1号を呼びだした。


「ガルちゃん1号、ここにきて!」


「1号って……」


「全部同じ名前になっちゃったから、番号が付いたみたい」


 5分程で1匹のガルムが上空から庭に降りてくる。


「お父さんに、飛翔魔法を掛けてくれる?」


 ガルちゃん1号は一度軽く頭を上下させ魔法を掛けてくれたので、魔法を習得出来たか父にステータスを確認してもらう。

 お礼を言い体をでた後、ガーグ老の指示をよく聞いて、いい子にしてねとお願いし元の場所へ戻るよう伝えると、ガルちゃん1号は尻尾をフリフリさせながら空高く舞い上がり、しばらくして姿が見えなくなった。

 新しい魔法の練習をしたい所だけど、夕食を待っているセイさんの所へ先にいかなければ……。


 通信の魔道具で連絡をもらった町へマッピングで移動し、宿屋の場所を見付けセイさんがいる部屋に移転した。

 リクエストの餃子に炊き立てのご飯・筑前煮と中華スープ・デザートの杏仁豆腐を出すと、喜んで食べ出す。

 

ひじり、食事以外に困っている事はないのか?」


 父が長期の移動を心配してかセイさんに尋ねていた。

  

「馬車の旅は慣れていますから、他は問題ありませんよ。ただ日本食を食べてしまうと、どうしてもこの世界の食事を美味しいと感じられなくなりますね」


「そうか……悪いな。後2週間、迷宮都市で合流するまで頑張ってくれ」


「また来週、食べたい物を持ってきますね。これ、朝ごはん用のお握りです」


 鮭と昆布と明太子が入ったお握りを3個渡し、宿から再び家の庭へ戻ってくる。

 よし! まだ時間があるから飛翔魔法の練習をしよう!


「お父さん。飛翔魔法を使ってみよう?」


「まだLv0だから、そんなに高く飛べないと思うが練習はした方がいいか……。高さに注意しながら使用するんだぞ」


「は~い」


 元気良く返事をし飛翔魔法を唱えた瞬間、体が10cmくらい浮き上がった。

 特にバランスを取る必要もないらしく、空中に浮いたままでも静止した状態で助かる。

 後は飛ぶイメージを持てばいけそう。

 徐々に高さを上げ、最初は3mくらいで練習開始。

 私が落ちても大丈夫なように、飛翔魔法を使用した父がぴったりと隣についた。  

 

 まずは自転車の速さくらいで移動する。

 うん、問題なさそうかな? 次はもう少し高く飛んでみよう。

 家の塀は10mなので高さ10mまでゆっくり上昇し下を見ると、かなりの高さがある。

 高所恐怖症の人は飛翔魔法を使えないかも? 何せ支える物が何もない。

 この魔法は自分しか使用出来ないのかしら? 庭で待機しているシルバー達に掛けてみよう。

 

 思ったら直ぐに実行だ。

 一旦いったん地面に降りシルバー達が浮くようイメージし、浮遊魔法を掛けてみたけど駄目だった……。

 どうやら浮遊魔法は習得した人しか使えないらしい。

 便利な魔法だから、転移組のパーティーメンバーにも習得させたいなぁ。

 何か良い方法がないか考えておかなくちゃ。

 その後、30分ほど練習してから実家に父を送り届け自宅へ帰った。

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