【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第744話 旭 樹 再召喚 36 Lv上げ&ガーグ老と茜ちゃんの手合わせ

公開日時: 2024年4月2日(火) 12:05
更新日時: 2024年7月25日(木) 14:15
文字数:2,058

 このままずっと抱き締められているわけにはいかない。

 なんとか腕の中から抜け出し、席に着いて生ビールと枝豆を注文する。

 隣に座るひびきは、ずっと俺の右手を握ったままだ。

 しずくがウィンドアローの付与魔石を使用したところを義父に見られ、あせった話をしながら魅惑みわく魔法の効果を探る。


「響。俺に言えない話って何?」


「……言えない」


「え~、知りたいなぁ。教えてくれよ」


「話したら、秘密じゃなくなるだろう?」

 

 笑顔で質問をかわされ、追及はあきらめた。

 なかなか口を割らないな。

 俺に対し好意を持っている状態なのは明らかなのに、まだ魅惑魔法のLvが足りないんだろうか?

 1時間くらい話をして居酒屋を出ると、右手をつながれたまま家まで歩き、もう一度抱き締められ額に軽くキスをされた。


「おやすみ」


 なんだろう、この恥ずかしいシチュエーションは……。


「……あぁ、おやすみ」


 親友相手に不毛な行為をしているような気がする。

 響に偽りの感情を持たせた事へ罪悪感を抱きつつ、心の中でびた。 


 土曜日の午後。

 沙良ちゃんがLv上げをすると言い、ホーム内の広いグラウンドで摩天楼まてんろうダンジョン31階に出現する魔物を出す。

 妻のLvに合わせる必要があるから、俺はなるべく補佐に回ろう。

 早くLv70にしておきたい。

 娘は俺達がLv上げをしている間、4人に付き添われ飛翔魔法の練習をしていた。


 5時間後、妻はLv45になったので俺も同じLvだと答えておく。

 あと差は25Lvか……。

 夕食は響の家へ呼ばれ、雫が嬉しそうにしている。

 俺の前に鰻の蒲焼と肝焼きが置かれていたが、手を付けずにいたら息子が代わりに食べていた。

 若い尚人なおとは大丈夫なのか? 今は娘の家に泊まっているから心配だ。

 賢也けんや君が妹に手を出させないとは思うが……。


 日曜日。

 子供達の炊き出しを終え、ガーグ老の工房へ向かう。

 

「こんにちは~。今日も、よろしくお願いします。メンバーが1人増えたので紹介しますね。妹のあかねです」


「サラちゃん、ようきたの。妹さんは美佐子みさこ殿の子供のようじゃな」 

 

 娘が茜ちゃんの紹介をすると、ガーグ老は響似の彼女を見て俺の子供じゃないと言いたいようだ。

 

「茜です。姉の結婚相手だと聞きました。少し、その腕を確認したい。ご老人、お相手願えるか?」


「ほうっ、では儂が相手になって進ぜよう」


 ガーグ老の腕を見極めたい茜ちゃんが、仕合を申し込む。

 彼女はLv200で一番Lvが高い。

 Lv500のガーグ老と、どんな勝負をするのか……。

 すると2人は槍を構え、一合交わしただけで得物えものを降ろしてしまう。


「姉をよろしく頼む」


 茜ちゃんは深々と一礼し、そう一言ガーグ老へ伝え戻ってきた。

 へぇ、結婚相手に不足はないと直ぐに判断を下したのか。


「儂はガーグだ。良い腕をしておるな。勧誘したいくらいだが……」


 じいが、影衆に勧誘したいと思うくらい優れた技量があるらしい。

 彼女は娘と一緒に転生した護衛だからなぁ、相当強いんだろう。

 俺は勝てる気がしない。

 その後、ガーグ老が家族を紹介すると茜ちゃんは娘に小さな声で呟いていた。


「姉さん、考え直した方がいい」


 まぁ、あの5人兄弟と嫁役の2人を見たら、そう思うのも無理はない。

 嫁役は口紅が大きくはみ出しているしな……。


「大丈夫よ。アシュカナ帝国の王が諦めれば、それでいいんだから」

 

 娘は心配する茜ちゃんの背中をポンポンと叩き、彼女の言葉を一蹴いっしゅうする。

 姉の気が変わらないと知り、茜ちゃんは短く嘆息たんそくし首を横に振っていた。


「茜殿は高位の従魔を持っておるな」 


 一緒に連れてきたダイアン達を見て、ガーグ老が感心した様子をみせる。


「私は、姉と違い種族の違う魔物はテイム出来ませんが……。ましてやあんな方法で……、いやすごいのは姉の方でしょう」


 茜ちゃんはガーグ老に従魔をめられ謙遜けんそんしていた。

 クインレパードとキングレパードを合わせ、7匹もテイムしている時点で強さは分かる。

 普通のテイム方法なら魔物を瀕死ひんしの状態まで追い詰め、自分が上だと示さなきゃいけないからな。

 名前を呼んだだけでテイムする娘と比べる方が間違っている。

 そのガルム達は、1週間振りにあった主人へなつきまくりだ。


 武術稽古が始まり、娘の相手は茜ちゃんが増え3人になった。

 1対3で勝てないと思った娘が従魔達を呼び出す。

 それを見た茜ちゃんがダイアン達で牽制けんせいすると、負けず嫌いを発揮し10匹のガルム達も呼び稽古する場所が従魔達であふれかえる。

 

「姉さん。大人しく槍の練習をした方がいい」


 茜ちゃんからあきれた声で言われ、娘が渋々呼び出した従魔達を戻した。


「稽古相手は1人でいいよ。いつきおじさんとセイさんは、2人で仕合でもして下さい」 


「そんな! ただでさえ一緒の時間が少ないのに……」 


 娘に稽古相手を断られ、追い出されてしまった。

 がっかりして肩を落とし、セイさんと一緒にその場を離れる。

 彼と仕合をしたが、手加減されているのが丸分かりで更に落ち込んでしまう。

 まぁ、娘に強い護衛がいるなら文句は言わない。

 本人が護衛リーダーだと言っていたし、元竜族には負けても仕方ないよな。

 華奢きゃしゃに見える体の、何処どこに大槍を振るう腕力があるのか不思議だった。

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