怪我をした女性はリザードマンにやられたと言っていた。
見ると槍に血の跡が残っている。
俺は嫌な気分にさせられた腹いせにリザードマンを瞬殺した。
それからはリザードマンを見かける度に性接待の事を思い出し、親の仇のように瞬殺する事になった。
3時間毎の休憩時、いつもはテント内から出る事は無いが、沙良が偶には外に出て休憩しないと変に思われるかも知れないと言うので外に出て休憩する事にした。
その場合は当然日本の食材を使用した料理を食べる事は出来ないので、異世界にある紅茶を飲みながらの休憩となる。
食事は、いつも通りホームの自宅内で沙良が作った美味しいお弁当を食べる事にする。
この世界のパンを食べるのは、俺には苦痛でしか無い。
それに主食はやはり米の方がよい。
毎回パンはどうしても飽きるのだ。
沙良は女性冒険者の作る料理が気になっているようだ。
ダンジョン内は気温の影響を受けないのか、1年中15度くらいでじっとしていると少し肌寒い。
そのため、ダンジョン内で作る料理は基本スープらしい。
他の料理を作っている所は見かけた事が無い。
沙良が隣のテントの女性に確認を取って、料理している様子を観察している。
まさか不審に思われないために、俺に同じ料理を食べろとか言わないでくれよ!
ダンジョン攻略中の週5日の食事が、毎回不味いパンとスープとか無理だから……。
沙良が帰ってきてから、料理の仕方や使われている食材に調味料を調べていた事を話し出したので、同じ料理を食べなくて済むと知ってほっとした。
何やら料理の方法を話してくれたが、俺は話半分で聞きながら頷いておいた。
いや、最初に炒めるとコクが出るとか知らないし、味付けが塩のみのスープを飲みたいとは思わない。
コンソメを入れる事には同意だ。
ロールキャベツにはコンソメを入れてほしい。
日本ならシチュー・ポタージュ・トマトスープと味のバリエーションも豊富にあるが、異世界の食事事情は最低のようだ。
これで益々、一緒にパーティーを組むのは無理だと実感する。
食事事情は仕方ないとして、魔道具がもの凄く高性能なのは何故なのか?
異世界は謎の発展を遂げている。
食材に関しても、炊き出し時に使用されている野菜の品質は変わらないように見えるんだけどなぁ。
俺は料理をする事が無いので、沙良がこの世界の料理について考察している間、安全地帯にいる冒険者達の様子を観察していた。
以前はいなかった男性4人組の冒険者の姿を見かけて、警戒しているのだ。
今はテントの外に出て食事をしている。
警戒されないようにか、俺達のテントからかなり離れた場所に居るが……。
お前達、覚えているぞ!
沙良の事をニヤニヤ笑って見ていたからな。
ダンジョン初日に馬車で乗り合わせた4人組だ。
馬車に乗っていた1時間もの間、不快な気分にさせられた。
あからさま過ぎる態度に、文句の一つも言いたくなった程だ。
あれは確実に妹を欲望の対象として見ていた。
沙良はそれを感じ取って俺の背に隠れてしまったからな。
あの強気な妹も、自分が性の対象にされるのは怖かったんだろう。
ダンジョン内はある意味、治外法権だ。
そこで起こった事は証人が居ない限り立証されない。
冒険者ギルドは警察ではないので、取り締まる事が出来ないだろう。
ダンジョン前に居る職員も、入場料を受け取るだけで入出場の記録を付けてはいない。
完全犯罪を目論むなら絶好の場所だ。
死人に口なしと言うから、事が済んだら殺してしまえば魔物にやられた所為に出来る。
あの4人組は、きっと今回が初めての犯罪じゃない気がする。
前にも何回か同様の手口で成功しているに違いない。
男達には躊躇いの表情が一切見られなかった。
だから何故攻略時間を夜間に変更してここにいるのか、理由ははっきりしている。
お目当ては、沙良とマジックバッグという所か……。
邪魔になる俺は、一番初めに始末する心算でいるんだろう。
生憎だが、簡単には殺されてやらないぞ?
人体の構造は、俺の方がお前達より詳しいからな。
悪いが妹に手を出したら命の保証はしてやらない。
早晩、何か仕掛けてくるだろう。
沙良には気付かれる事が無いように処理をしないと……。
俺がこの世界で人を傷付けたと知ったら妹は悲しむだろう。
妹が悲しむ事が無い様に、秘密裏に事を運ぶ必要がある。
マジックテントを使用している事を知っているなら、攻略中に仕掛けようとする筈だ。
沙良がマッピングを常時展開しているお陰で企みは成功しないだろうが、そうするともっと強引な手を使ってくる可能性がある。
俺は彼ら4人の今後の動向に、最大限の注意を払う事にした。
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