【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第680話 迷宮都市 地下15階&摩天楼のダンジョン(31階) 付与魔法の実験 1

公開日時: 2024年1月29日(月) 12:05
更新日時: 2024年5月22日(水) 15:20
文字数:3,232

 2回の攻略を終え、迷宮都市ダンジョン地下15階の安全地帯へ戻る。

 テント前では、怪我人の治療をしているしずくちゃんのお母さんの姿があった。

 まだ『MAXポーション』の数が足らないのか……。

 ポーションは消耗品だから仕方ないとはいえ、1回しか使えないのは何とかならないかな?

 いつきおじさんの付与魔法を試してみたらどうだろう?

 習得済みの魔法を魔石に付与出来るなら、ヒールを覚えた今は何回も治癒魔法を使える魔石が作れそうだ。

 後で、おじさんにお願いし実験してみよう!

 テントからホームへ帰り、あかねにダンジョン攻略はどうだったか感想を聞く。


「いや、思っていたのと何か違った……」


 茜は魔物と接近戦ばかりしてそうよね。

 私は槍術のLv上げをする以外、基本的に接近戦はしない。

 安全に倒せるなら、態々わざわざ危険な方法を選ぶ必要はないからだ。

 妹には、ぬるい攻略だと思われたんだろう。


「それより姉さん。服が欲しいから、お金を貸してくれないか?」


「なら、一緒に買い物へ行きましょ。私が買ってあげるわ」


「ありがとう、でもちゃんと返すよ」


 茜の持っている服は13年前に着ていた1着だけなので、下着も必要だろう。

 茜夫婦の住んでいた家をホームに設定すれば服はあるだろうけど、ホームに設定出来るのは最大10ヶ所。

 出来ればホームの移動距離を伸ばしたいから、今住んでいるマンションから500km以上離れた場所にしたいと思っている。

 妹には悪いけど、旦那さんを召喚した後はマンションに住んでもらう心算つもりだ。


 兄達に外食してきてねと伝え、私は茜と久し振りに買い物へ出掛けた。

 どの店がいいか聞くと有名なカジュアルブランドを指定され、その場所へ妹の運転で向かう。

 勿論もちろん出したのは、ファミリーカーだよ!

 そう何度も高級車を廃車にされるのは避けたい。

 家族で運転免許を持っていないのは私だけだから、妹の運転する姿がちょっとうらやましい。

 兄と父には車の運転をしない方がいいと言われてしまったけど、茜にお願いし後でこっそり教えてもらおう。


 店に到着すると、妹は迷わずメンズコーナーへ向かう。

 背が高いから女性物はサイズが合わず種類が少ないんだろう。

 上下10着選んだ後は、女性物の下着を見に行きほっとする。

 トランクスかと思ってたよ……。

 手に取ったのは可愛らしいレースが付いた物ではなく、色気ゼロのスポーツブラ。

 まぁ、茜はBカップしかないからそれでも充分か。

 パンツは、これまた何の柄もないボクサーパンツだった。

  

 ある時期から、女の子の恰好かっこうをしなくなった妹は女性である事が嫌なのかな?

 でも一応、旦那さんがいるんだよね~。

 買い物はわずか30分で終了した。

 これなら兄達と一緒に食事が出来たな。

 念話の魔道具で兄に何処どこの店にいるか聞き、合流すると伝える。

 今日は、お寿司屋さんにいるみたいだ。

 何度も行った事があるので車ごと店へ移転し店内に入る。

 兄達は日本酒を飲みながら、刺身を食べていた。

 茜は回らない寿司だと大興奮し、電子メニューから好きなネタを次々と注文している。

 それを見た旭が点数稼ぎのためか、


「茜ちゃん、今日は俺がおごるよ~!」


 と男らしく宣言したものの、


「兄貴に払ってもらうからいい」


 妹に嫌な顔をされ、あえなく撃沈した。

 ショックを受けた旭が兄の肩にすがり付き、慰めてもらっている。

 兄達の結婚には賛成のようなのに、旭から奢られるのは気に入らないようだ。

 妹と旭の仲が改善されないみたいで心配してしまう。

 注文したお寿司が目の前に沢山並ぶと、茜は嬉しそうに食ベ出した。

 私は2人分の緑茶をれ、コースメニューを注文する。

 天麩羅てんぷら・茶碗蒸し・刺身が付いたお得なセットがあるから、私はこれにしよう。

 普段お酒を飲まない妹だけど、13年振りに飲みたいかと思い聞いてみる。


「今日はいい、酒を飲むと体が鈍るから」


 お酒を飲まない理由を聞き呆気あっけに取られた。

 刑事をしていた茜は、常に何があってもいいよう体調を管理しているのだろうか?

 私の注文した分もカウンターに出てきたのではしをつける。

 揚げたての海老天が美味しいなぁ。

 熱々の茶碗蒸しも滑らかで、口当たりが良い。

 夕食に満足し、折角せっかくだからと持ち帰り用の握り寿司を3人前注文した。

 樹おじさんへ、お願いしに行くから手土産にしよう。


「お兄ちゃん。これから旭の家へ寄って、樹おじさんに付与魔法の実験をお願いするんだけど一緒に来る?」


「魔石に魔法を付与出来るんだよな。興味があるから見に行くよ。セイはどうする?」


「私もどんな魔法か知りたいです」


「じゃあ決まりだ。あまり遅い時間だと失礼だろう。沙良の移転で移動しよう」


「了解!」


 兄が全員分の会計を済ませ店を出ると、2台の車と共に旭家へ移転する。

 

「ただいま~」


 旭が実家へ一番に入り、声を上げて帰宅を伝えると雫ちゃんが顔を出した。


尚人兄なおとにい! 今日は家に泊まるの?」


 嬉しそうな顔をした雫ちゃんに帰るとは言えなかったのか、 

  

「そっ、そうだよ」

 

 と伝えている。


「お母さ~ん、賢也けんやさん達がきたよ!」


 彼女は来客を知らせに母親のもとへ走っていった。

 リビングに入ると、樹おじさんが笑顔で迎えてくれる。


「サラちゃん、いらっしゃい。今日は大人数だな、夕飯はもう食べたのか?」


「はい、もう済ませました。樹おじさんに、お願いしたい事があって……」


「あぁ、うちは今から夕食なんで少し待ってくれるか?」


「これ、お土産のお寿司です。アイテムBOXに収納すれば、いつでも食べられますからどうぞ」


 3人分の折り詰めを渡すと、飛び上がらんばかりに喜ばれた。


「ゆっ、結花ゆか! サラちゃんが、お寿司をくれたから夕食に頂こう!」


「あら、悪いわね。じゃあ夕食の分は明日の朝、食べましょうか」


 雫ちゃんのお母さんは、温めていた鍋をアイテムBOXへ収納する。

 メニューが何だったか知らないけど樹おじさんは、お寿司を優先させたようだ。

 雫ちゃんは突然のメニュー変更に文句も言わず喜んでいる。

 どうやら、お土産を持ってきたのは正解だったらしい。

 3人が食事をする間、樹おじさんに付与魔法を試してほしい事を話すと直ぐにOKしてくれた。

 これは賄賂わいろの、お寿司効果かしら?


 手紙には魔石により使用回数に違いがあると書いてあったから、幾つかの階層に出現する魔物の魔石を取り出した。

 一番Lvが低いのは属性スライムの魔石で、高いのは今日取り出した摩天楼まてんろうのダンジョン31階に出現する魔物の魔石だろう。

 お寿司を食べ終えた樹おじさんが、ご機嫌な様子で魔石にヒールを付与していく。

 私は、付与された属性スライムの魔石を手に取ってみた。

 これは、どうやって使用すればいいのかな?


 セイさんに鑑定をお願いすると、ヒールLv1の魔法が1回使用出来るらしい。

 特に呪文を唱える必要もなく、使いたいと思うだけで魔法が発動されるとの事。

 1度だけならポーションと同じか……。

 31階の魔石も鑑定してもらうと、こちらはヒールLv1の魔法が51回使用可能らしい。

 同じ階層でも魔物による違いがありそう。

 

 けど肝心な魔法が付与する人間のヒールLvに固定されるから、樹おじさんがLvを上げないと『MAXポーション』の代わりにはならないなぁ。

 あぁ、でもこれなら覚えていない魔法を雫ちゃんが使用出来るか……。

 私は樹おじさんにサンダーボールの魔法を31階の魔石に付与してもらい、セイさんへ鑑定をお願いした。

 するとセイさんは、おじさんの顔を驚きの表情で見つめ、口にするのを躊躇ためらう様子をみせる。

 そんなセイさんの態度を見るなり、樹おじさんは突然人差し指を立ててセイさんのそばへ近付いていった。

 

「ええっと、サンダーボール……Lv1・・・の魔法が10回使用出来ます」


 うん? 魔法によって、使用回数が変わるの?

 消費MPは同じLvでもヒールの方が多いはずなのに……。

 確かヒールLv1の消費MPは10で、サンダーボールLv1の消費MPは2だよね。

 魔石との相性があるんだろうか?

 その後、幾つか実験を繰り返し出た結果は魔法によって使用回数が変わるのと、最終的に本人の魔法Lvを上げるのが重要だという事だった。

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