【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第354話 冒険者ギルドマスター オリビア・ハーレイ 6 スキップ制度の提案&オリーの解雇

公開日時: 2023年4月18日(火) 20:05
更新日時: 2023年8月22日(火) 21:41
文字数:2,441

 何とか無事に従魔登録の手続きは終了した。

 まぁ後で、私が書類に色々手を加える事になるけど……。


 まずテイムした人間はサラ様ではなく、治癒術師2人の名前に変更だ。

 1人が1匹ずつテイムした事にしなければ目立って仕方ない。


 当然迷宮都市のダンジョンに居ないどころか、この大陸のどこにもいないゴールデン・・・・・ウルフの種族名も単なるシルバーウルフと訂正する必要がある。


 サラ様は、本当に無茶ばかりされる。

 いくら時空魔法でどこにでも移転出来るとは言え、別大陸の魔物をテイムされるとは……。

 

 これは影衆の当主も警護が大変だろうな。

 精鋭部隊『万象ばんしょう』も頭を抱えているに違いない。


 存在を秘匿ひとくされた方だからハーレイ家には連絡が全く無かったけれど、父や私が存在に気が付いている事は把握されているんじゃないだろうか。


 父は何年も前から王族がカルドサリ王国にいたと知り、そばで守れなかった事を盛大になげいていた。

 今でこそ楽隠居を決め込み、のんびりとしている父だったがハーレイ家は王族を警護する影衆の傍流ぼうりゅうだ。


 人族が束になってかかってきても敵う相手ではない。

 現役時代に稽古をつけてもらった50年の間、私は一度も父には勝てなかった。


 お忍びで冒険者をしている王族の護衛は充分に務まるだろう。

 ただし、相手が普通・・の王族だったらの話だ。


 存在を秘匿ひとくされたサラ様を警護するには、腕が足りない。


 その事を知っているのは私だけなので、父は自分がお傍にいたかったと事ある毎に漏らす。

 挙句あげくの果てにはそのお姿を見たいと、引退したにも拘わらず毎週金曜日に冒険者ギルドにきては、遠目にサラ様の姿をおがんでいる状態だ。


 エルフの王族崇拝すうはいは、その血にみついてでもいるのか……。

 私はエルフの血を半分しか受け継いでいないから、そこまでする理由がよく分からない。


 むしろ色々仕事を増やして下さるサラ様を特大な時限爆弾だと思っている。

 あぁそうだ、是非ぜひお願いしたい事があったのだ。


 サラ様とお話出来る事はそうそう無いから、この機会に便乗してスキップ制度で早くB級冒険者になってもらおう。


 今までC級冒険者のままでいらした事が不思議だ。

 もしかしてスキップ制度をご存じないのかも知れない。


 サラ様達に、このままC級冒険者でいられるとランク詐欺になってしまう。


 秘書のオリーのように勘違いする連中も、まぁ迷宮都市にはいないとは思うけれど……。

 他領から来た冒険者には分からないだろう。

 

 絡まれたりすると後が大惨事になる可能性が高いので、迷宮都市の安全のためにも不要な事態は潰しておきたい。


 私がスキップ制度の説明をすると、サラ様はやはりご存じなかった様子で詳しい事を尋ねられた。

 簡単に詳細を話すと、検討して頂けるようで安心する。


 そうして緊張の続いた王族との遣り取りがつつがなく終了し、サラ様達は会議室から退席された。


 知らず、私は殺していた息を吐き出す。


 あ~しんどい。

 オリーのお陰で、死ぬかと思ったわよ!

 もうささっとあの男を解雇しよう!


 どうせ後数時間の命だけど、粛清しゅくせいされる前に冒険者ギルドを解雇した実績は作っておいた方がいい。

 そうしないと私がサラ様から、無能の烙印らくいんを押されてしまう。


 もうしばらくは、冒険者ギルドに貴族出身の者を入れるのは止めた方がいいな。

 商業ギルドに行ってもらう事にしよう。


 あそこは顧客に貴族も多いから何とかなるだろう。

 

「ギルマス。さっきの嬢ちゃんは、あんたのお仲間か?」


 そろそろ自分の部屋に戻ろうと席を立った瞬間、副ギルドマスターのウォーリーがサラ様について尋ねてきた。


 本当の事を伝える訳にも行かず、曖昧あいまいな表現でにごす事にする。


「さあ、どうかしら? 確かに綺麗な少女ではあるけど、平民出身でない事だけは確かね。どこかの貴族のご令嬢でしょう。政略結婚するのが嫌で、冒険者になるアマンダさんみたいな人もいるし」


「それにしたって、ちと綺麗すぎる顔だけどな。俺は迷宮都市に来て、初めてテイムされた魔物を見たぞ? ちゃんと見張っておけよ、お仲間なら護衛の1人くらいついているだろうがな」


 そう言って、ウォーリーは部屋から出ていった。


 彼は純粋なエルフも知っているし、エルフが王族を崇拝すうはいしている事も分かっている。

 もう100年、一緒に仕事をしているから忠告してくれたんだろう。


 サラ様、やっぱりお忍びは成功してませんよ~!

 うちの副ギルドマスターに王族だって1度でバレてますから!


 お願いですから、もう少し自重じちょうして下さい……。


 私はたった1時間の間に随分すいぶん疲弊ひへいした体で会議室を出て、オリーに解雇を告げに行った。

 

 彼は目をいて反論してきたが、人事の権限はギルドマスターの私にある。

 何を言われても解雇の決定は変わらない。


 オリーが最後に放った「全てあの女の所為せいだ!」との言葉に、どこかで聞いている影衆の事を思い、自分から生きている時間を減らすとは残念なやつだなと思っただけだ。


 一応秘書室の扉には侵入者防止の結界があるので、オリーを部屋から追い出した後で登録を解除しておいた。

 ギルドの運営に関わるような重要な仕事は一切させていなかったけど、各種登録用紙は秘書室に置いてある。


 彼は書類整理だけは普通に出来たから、その仕事しかさせられなかった。

 誰でも片手間で出来る作業なので、人員補充も必要ないだろう。


 さて、私は今から従魔登録用紙の改ざんをしなくては……。

 あぁ気が重い。


 気分的にとても嫌な作業になりそうだ。

 ステータスから守護精霊の加護が消えない事を祈ろう。


 ところでサラ様、一体迷宮都市には何時いつまでいやが……いらっしゃるんでしょうか?

 そろそろ別のダンジョンに行かれてはいかがですか?


 摩天楼まてんろうのダンジョンなんて、サラ様が好きそうですよ~。


 あそこのギルドマスターはハーフエルフで融通ゆうづうが利きますし、SS級冒険者の伝手つてを総動員してA級に直ぐしてくれると思います!


 100階層もあるから、きっとダンジョン攻略も楽しいですよ~。

 なんて直接言えたらどんなに良いか……。


 私、最近胃の痛みが特にひどいんですけど……。

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