【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第325話 迷宮都市 地下14階 扇舞の練習

公開日時: 2023年4月4日(火) 12:05
更新日時: 2023年8月18日(金) 22:52
文字数:2,332

 テントから出ると、演舞の衣装を着た冒険者がそろって待っていた。

 サヨさんに頼んで袖無しにしたのは正解だったわ!


 皆さんれするような上腕二頭筋をお持ちで……。

 密かに筋肉フェチな私のテンションが上がる。


 こんな機会でも無いと、兄に直ぐ目隠しをされてしまうのだ。

 上半身の裸ぐらい、好きに見させてくれたらいいのに~。


 衣装のサイズに問題がないか1人ずつチェックする際に何気無く触っておいた。


 セクハラじゃありませんよ?

 サイズが合っているかの確認ですからね!


 たまには私もうるおいが欲しいお年頃なのよ~。

 兄達はいつも2人で仲良くしてるから良いでしょ!


 まぁ事前に測ったサイズに合わせて、サヨさんが型紙を起こしているので全員問題は無いんだけども。


 私が男性冒険者の衣装サイズの確認をしている間、兄と旭にジト目で見られていた事は気にしない。


 もう2人とも過保護が過ぎるよ~。


 アマンダさんは、1人テントに入って着ぐるみパジャマを試着し着替えて戻ってきた。

 衣装の披露ひろうは私達同様、当日まで秘密にするらしい。


 多分あの着ぐるみパジャマを着た状態を、パーティーメンバーに見られるのが恥ずかしいんだろうなぁ。

  

 衣装合わせ終了後、それぞれが練習に入っていった。

 私とリリーさんも先週合わせた扇舞の仕上げにかかる。


 リリーさんは剣舞を習っていた事もあり、体幹がしっかりしているので非常に筋が良い。

後は舞扇まいおうぎの扱い方を練習すれば良いだけの状態だ。


 舞扇まいおうぎは、舞台が映えるように少し大き目のサイズで作られているから、慣れるまで扱いが少々難しい。


 リリーさんは、何度も開いたり閉じたりを繰り返し私の動きを必死に覚えてくれている。

 蝶の羽ばたきを再現した、ヒラヒラとする動作には細心の注意が必要だ。


 この動きが悪いと、女性らしい繊細さが体現出来ない。

 剣舞のように鋭い動作ではなく、静を主体とした扇舞は派手さは無いものの見る人を魅了するに充分な新鮮さを与えてくれる事だろう。


 本番を6日後に控え、私の練習も本格的にスタートだ。

 覚え込んだ動きを、なるべく当時の状態に近付けたい。


 せっかく異世界の人に日本の現代舞踊を見てもらう事が出来るのだから、良い物を見せたいではないか。

 時々、リリーさんの舞の仕草を直しながら自分の世界に集中する。


 あぁ、こんなに真剣に舞を踊ったのはいつ振りだろう。

 社会人になって仕事が忙しくなり、休日は家事で追われる生活を続ける内に舞を練習する時間が取れなくなってしまった。


 平日は仕事から帰ると夕食を作るので精一杯。

 特に経理事務の仕事は月末月初が大変忙しい。


 決められた日付までに月次処理を終わらせて、数字を本社に報告する必要があるので大抵1週間程は残業が続くのだ。

 

 それを思えば異世界に転移してから、私は仕事とは無縁な生活を送れて幸せだなぁ。

 冒険者活動はストレスが無いので楽しいし、年収も軽く数十億を超える。


 兄と旭も恋人と再会出来て幸せそうだし、私達3人は異世界に来ておおむね満足していた。

 法整備がされてない事や、国の福祉が機能していない事は仕方ないとあきらめるしかないだろう。 


 兄達は私達が練習している間、シルバーとフォレストをブラッシングしてあげていた。

 2匹は気持ちよさそうに目を閉じて横たわっている。

 

 今日はマッサージもしてもらったみたいだ。

 兄は本当にフォレストが大好きの様で、時間があると構っているのをよく見かける。

 

 フォレストは兄にもなついているようだ。

 このままテイム魔法を習得しそうな気がする……。


 シルバーの方は、旭に付き合ってあげている感がありありと分かる。

 あの後、旭の手をまないように注意はしたけど、お手もお座りもしないらしい……。


 シルバーは狼だからね、犬のようにはいかないと思うよ?

 まぁ、頑張って!


 リリーさんと扇舞の練習を2時間程して今日は終了。


 テントに入り自宅に戻って寝る準備を済ませると、再び2人をテント内に送り届けた。 


 私はホームの自宅で1人きりだけど、防犯に関しては無人なので注意する必要がない。

 特に不安を感じる事もなく、そのままベッドで就寝。


 その後も問題なく5日間の攻略は終了。


 旭が換金。

 ファングボアの肉5体を引き取る。


 シルバーとフォレストは、冒険者ギルドを出た後でホームに連れ帰った。

 肉屋にファングボアの肉3体を卸し1体を、お店用に保管してもらう。 


 『肉うどん店』に寄って、出来上がった腹巻とポンチョを受け取ってきた。


 サヨさん達が編んだポンチョは全てが色・柄共違っていたため、自分の分が直ぐ分かるようになっていた。

 こんなに早く編んでくれるなんて、本当に感謝で一杯だ。


 後で、何かしらお礼の仕方を考えておこう。

 出来れば、貰っても負担にならないような物が望ましい。

 彼女達はボランティアに参加しただけの心算つもりだろうからね。


 兄達を車と一緒に希望する居酒屋に送り届け、私はシルバーとフォレストを連れてお散歩に出かける。 


 今週の出来事を話しながら田舎道を歩いていく。

 明日は2つの町を回ってプレゼントを渡すので、一緒に遊んであげられなくてごめんね。

 

 ホーム内で仲良くお留守番してて頂戴ちょうだい。  


 本当は町の子供達にも2匹の事を紹介したかったんだけど、町毎に従魔登録をしないと入れないので明日は時間が足りなくて断念したのだ。


 久し振りに2匹ものんびりと出来るだろう。


 それからフォレストには「ゴールデン・・・・・タイガーになるのよ!」とお願いしておいた。

 先輩のシルバーから進化の仕方を教えてもらえば大丈夫。


 日曜日は教会の炊き出し後に皆で劇をする話も伝える。

 前回の事があるので今から不安で一杯だ。


 皆、暴走しないで原作を忠実に再現してくれる事を願っておこう。


 1時間程2匹と散歩を楽しんでマッピングで自宅に戻る。

 今日も冷蔵庫に貼られたホワイトボードを見て兄達を迎えに行った。

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