昼食を食べ終えた後、妻が畑の状態が心配だというので様子を見にいく。
1月の寒い時期だったお陰か、2日間世話をしなくても問題なかったようだ。
これが夏なら、水遣りをしないと野菜は直ぐに萎れてしまう。
沙良がウォーターボールの魔法を雨状に降らせ、妻を喜ばせていたんだが……。
魔法の使い方がおかしい!
娘は、何故そんな事が出来るんだ?
俺が呪文を唱え使用する魔法は、変化なんてしない。
根本的に魔法の種類が違っているような気がするな。
畑に問題がないのを確認し、再び先程の森の中へ戻ってくる。
沙良は、なるべくLvを上げさせたいらしい。
それから3時間程、ベア・ボア・ウルフを俺達に倒させた。
次にスキップ制度で倒す魔物だと言い、アイテムBOXからリザードマンとファングボアを取り出す。
妻は小豆を光合成で成長させ、魔物を拘束した状態にし首を槍で安全に突き刺している。
俺は接近して、リザードマンの首筋に剣を走らせた。
最後に沙良が取り出した魔物は、ナイトメア(男性体)。
妻に魅了の魔法を受けてもらい覚えさせるそうだ。
アンデッド系は苦手なんだよな~。
魅了を受けた妻が、ふらふらと魔物へ近付く前に抱き寄せる。
精神系の魔法を使用された場合は、パーティーメンバーが殴って気絶させたりするんだろう。
魅了の魔法は魔物にも効果があるんだろうか?
そんな風に思っていると、賢也がナイトメア(男性体)をホーリーで浄化させ魔石だけの状態にする。
おい!
本体はどこに消えた!?
俺はその高い浄化能力を見て、絶句し固まった。
光魔法の遣い手は、教会組織が独占している状態だ。
浄化魔法を使えるだけで司教になれる。
そのため一回の浄化代も、かなり強気な値段設定だった。
「……賢也。沙良の能力も大概だが、お前のその浄化能力もヤバ過ぎるぞ! 何で魔物が跡形もなく消えるんだ!? いいか、浄化の能力は知られないように注意しろ」
俺は教会組織に目を付けられないよう、息子に警告する。
人族最大の組織だ。
何があるか分かったものじゃない。
「あぁ、分かってる。人前では使用しないから大丈夫だ。知っている人間も、信用出来る冒険者だし問題ない」
沙良と違い、賢也はしっかりしているから大丈夫か?
「賢也がそう言うのなら大丈夫ね」
妻は長男の言葉を聞き安心していた。
「これでテイムが出来るようになったから、何の魔物にするか考えておいてね」
「はあっ!? それはどういう意味なんだ?」
沙良が妻に言った言葉を思わず聞き返す。
「魅了の魔法を覚えると、魔物がテイム出来るんだよ! でもナイトメアは男性体だから、女性しか魅了の魔法を習得出来ないのが残念なんだよね~」
説明を聞き、そんなバカな話があるのかと頭を抱える。
テイム魔法ではなく、魅了で魔物をテイムするだと!?
この世界では、ありえないテイム方法だ。
普通は魔物を弱らせてから、テイム魔法を使用し服従させると聞いている。
その後、調教して騎獣にするにはかなり時間が掛かるらしいが……。
沙良が言った方法なら、調教が全く必要ないんじゃ?
「なんか、秘密にする事が多すぎて俺には不安しかないんだが……。もう他には何もないよな?」
子供達の規格外過ぎる能力を知り、これ以上は止めてくれと思う。
2人は、これまで異世界の常識を知らずに生きてきたのか……。
特に何もないという賢也の返事も、あまり信用出来そうにないな。
「沙良、可能な限り大人しくするんだぞ。出来れば、ホーム内に監禁したいくらいだ」
一番やっかいな時空魔法を持っている娘が心配過ぎる。
樹が産んだ娘のティーナの体は、間違いなくハイエルフの王族だろう。
近い内にエルフと連絡を取り、王族を警護する影衆を呼んだ方がいいかも知れん。
冒険者ギルドマスターは、沙良がハイエルフであると知っているだろうか?
これだけヒルダにそっくりなら、気付いてもおかしくない。
娘が知らないだけで、既に影衆達が警護に就いている可能性もあるか……。
沙良からまたLvを聞かれた。
俺は今日倒した魔物の強さと数から、Lv10だと答えておく。
妻はLv15になったようだ。
最後にナイトメア(男性体)を倒したので、一気にLvが上がったらしい。
それを聞き、ほっとする。
良かった、妻より低いLvを答えておいて……。
あぁ、本当に毎回Lvを聞かれるのは困る。
当然、俺のLv125は変化なしのままだった。
それより、娘のLv上げは結構スパルタのような気がする。
1日でこれだけの魔物を倒させるのは、初心者相手に酷くないか?
ダンジョン攻略は大丈夫だろうか……。
翌日。
スキップ申請をするというので、冒険者の姿に着替える。
沙良から雫ちゃんだけ魔法を使えないと聞き、つい不思議に思った事を口にした。
「魔法が使えない? おかしいな……。それは教会の儀式を受けてないんじゃないか?」
「教会の儀式って何!?」
やばい!
また、知らない情報を答えてしまった。
「いや……ほらよく小説なんかであるだろう? 自分の適性検査を受けるみたいな……」
内心で大きく焦りながら、適当な言い訳を考える。
沙良は俺の言葉を聞き、首を傾げ考え込む様子をみせた。
正確には教会の儀式を受けた後で魔法を覚えるには魔術書が必要になるが、それは言わない方がいいだろう。
雫ちゃんは、確か貴族の娘に転生していた筈。
王都の魔法学校には通わなかったんだろうか?
まだ聞いていない件がありそうだな。
娘達と、どう知り合ったのかも時間がある時に確認しておこう。
冒険者ギルドへいきスキップ申請をすると、ギルドマスターが立ち会うみたいだ。
ギルド専用馬車に乗り込みダンジョンへと向かう。
この馬車……殆ど振動がないな。
外装も内装も見た目は華美じゃないが、そのぶん魔道具がふんだんに使用されているようだ。
かなり高い馬車だろう。
冒険者ギルドが使用するには贅沢過ぎる。
これは確実に王族が乗るのを見越して購入された物では?
ギルドマスターの対応に、沙良がハイエルフの王族だと気付いてるのではないかと思った。
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