【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第729話 旭 樹 再召喚 21 美容ポーションへ効能の追加&セイさんのパーティー加入

公開日時: 2024年3月18日(月) 12:05
更新日時: 2024年7月10日(水) 14:35
文字数:2,794

 居酒屋を出て家へ帰り、庭に植えた世界樹の木に触れる。


『精霊王。性欲を減退させるポーションに、肌を綺麗にするのと胸を大きくする効能を追加出来ますか?』


 美容ポーションと言って渡したから、何の効果も表れないのはまずい。

 妻だけでなく、美佐子みさこさんまで飲むのは完全に予想外だ。

 彼女に胸を大きくする効能は必要ないと思うが……。


『ヒルダ……。ようやく女性に目覚めたのかい? でも今の姿で胸が大きくなるのは困るんじゃないかな?』


『いえ、飲むのはなので問題ありません』


『あぁ、そう言えば奧さんがいるのを忘れていたよ。君は胸の大きな女性が昔から好きだったねぇ。効能を追加するのは難しくないけど、少し刺激を与えた方がいいと思う。我慢は体に毒だよ?』


 精霊王の笑い声が聞こえた後、世界樹の葉が一枚大きくなりヒラリと落ちた。

 手に取ると葉に配合が書かれている。


『ありがとうございます』


 刺激ねぇ~。

 俺がしたら藪蛇やぶへびだ……。

 そんな事を思いながら、既に寝ている妻の隣で眠りに就いた。


 日曜日。

 子供達の炊き出し終了後、沙良ちゃんが楽器の演奏を教えると言う。

 この家は10mの高い塀に囲まれ、中へ入るには扉の魔石に登録が必要だが空からの侵入対策はしていない。

 この場に『万象ばんしょう』達が隠形おんぎょうしていても、やはり心配なので俺も残る事にした。

 娘が子供達に楽器の演奏を教えている間、タマを呼び出しお使いを頼む。

 足首にマジックバッグにした足輪を付け、ポーションの配合が書かれた世界樹の葉と用件をしるした羊皮紙を入れる。

 前回注文したポーション代を支払っていないから、世界樹の花と相殺してほしいと書いておいた。

 タマに薬師ギルドマスターへ届けるよう伝えると、「ホウ」と一声鳴き飛んでいく。


 1時間くらいでタマが帰ってきた。

 美容効果を追加したポーションが30本届けられ、世界樹の葉を受け取ったのでポーション代は不要と書かれたメモ書きが入っている。

 精霊王が配合を書いた世界樹の葉は、そのまま使用出来るのか? まぁ金が不要なら問題ないんだろう。

 昼食は娘が2種類の『ピザ』を用意していた。

 焼いてほしいと頼まれ、ファイヤーボールを使用し焼き上げる。

 

「わぁ~、『ピザ』だぁ~! いただきます!」


 子供達は食べた事があるのか、『ピザ』を見て大興奮だ。

 紅茶に牛乳を入れ、ハニービーの高価な蜂蜜入りのミルクティーも出している。

 王族だった俺でも食べられない料理だな。

 武術稽古に行った妻としずくは何を作ったんだろう?

 あまりひどい味じゃないといいんだが……、また妖精達が木から落ちないか心配だ。

 ここにいる『万象ばんしょう』達は食べられず、逆に運がいいかも知れない。

 美味しそうな食事を前に、空腹を耐える必要はありそうか?


 午後からは、娘が子供達へ教えた遊びを一緒にしていた。

 おっ、それは俺でも踊れるな! オクラホマミキサーとマイムマイムとはなつかしい。

 馬車が迎えに来るまで楽しく踊り、子供達を見送った。

 4台の馬車に乗っている御者はエルフの関係者みたいで安心する。

 3人はハーフエルフの諜報員ちょうほういんか?

 1人は多分、武の出身であるハーレイ家の者だろう。

 商業ギルドに潜入しているマケイラ家の諜報員が、娘に気を利かせたらしい。

 一度顔を出して、お礼を言った方がいいか。


 ガーグ老の工房へ着くと、ガルム達が駆け寄ってくる。

 10匹の大型魔物にじゃれつかれ、娘の姿が埋もれ見えなくなってしまった。

 心配した賢也けんや君が対局の手を止め様子を見にくる。


「お兄ちゃん、大丈夫だよ! なついているだけだから」


「そうなのか? 突然、お前に向かって走り出したから何事かと思った」


 妹がガルム達をテイムしたと知らないから驚いただろうな。

 わずかに光魔法を発動させようとした痕跡こんせきが見える。

 彼は前世が獣人のはずなのに、魔法の扱いが上手い。

 魔力量が少ない獣人が何故なぜだ? 巫女姫だった娘が魔力を与えていたのか?

 過去の2人の関係が分からず、少し気になるな。

 心配していたガーグ老達の昼食はカレーだったようだ。

 激甘カレーなら、激辛の料理よりまだましだろう。


 工房を出てホームに戻ってくる。

 今夜はセイさんの歓迎会をするから、夕食はひびきの家で蟹鍋だ。

 冷凍じゃない生の蟹と知りテンションが上がる。

 ズワイ蟹とタラバ蟹の2種類が用意されており、刺身や蒸し蟹もあった。

 雫が蒸したタラバ蟹を食べたそうにしているのを見て、尚人なおとが殻をき食べやすくしている。

 その微笑ましい姿に、異世界へ召喚され良かったとしみじみ思った。

 全員家族を亡くし独りで日本にいるのは寂しかったから、今は一緒にいられる事に感謝しよう。

 蟹鍋を雑炊で締めた頃、セイさんが予定通りパーティー加入のお願いを口にした。


「あの……、私も同じパーティーに入れてくれませんか? 摩天楼まてんろうのダンジョンで20年活動しSS級冒険者になっているから、足は引っ張らないと思います。正直、異世界の食事は合わなくて……」

 

 ここは俺もフォローしてやろう。


「うんうん、分かる! やっぱり日本人だと食事が大変だよなぁ~」


「儂も小夜さよの作る日本食が恋しかった。その気持ちは、よう理解出来るわい。響君、知り合いなら問題ないじゃろ。一緒にパーティーを組んであげなされ」


 義祖父もそう言ったので、セイさんのパーティー加入は問題なく決定した。

 娘のそばに強い竜族がいるのは心強い。

 SS冒険者ならLvも100はありそうだ。

 帰り際、沙良ちゃんにお願いされていたポシェットを渡し、酔った振りをして抱き締める。 


「娘がそっくりに育って嬉しい~」


「貴方の娘はこっちです!」


 すかさず妻から引きがされてしまった。


「おおっ、雫は結花に似て可愛いなぁ~」


 雫を抱き締め娘を間違えた事にしておこう。

 どっちも可愛い俺の娘だ!


 月曜日。

 新しく増えたメンバーのセイさんを沙良ちゃんが冒険者達に紹介し、ダンジョン攻略を始めた。

 夕食にダンクさんが『すき焼き』を催促している。

 娘は意図をみ『すき焼き』を作るようだ。

 セイさんはダンクさんの父親のクランに入っていたらしく、帰還しなかったクランリーダーが生きていたと知り、迷宮都市へ会いに来た設定となっている。

 20年間石化した状態だったのを娘が発見し、息子と賢也君が治療したと聞いた。

 2人のヒールは本当に効果が高い。

 普通、全身石化状態の治療はハイヒールじゃないと無理なんだがなぁ。


 夕食後、冒険者達が劇の稽古を始める。

 セイさんのため披露ひろうされた『シンデレラ』と『赤ずきんちゃん』は、爆笑ものだった。

 アマンダ嬢が演じる『シンデレラ』に沙良ちゃんが登場しているのは、娘を狙っているからじゃないよな?

 この内容を見た子供達は、原作との違いに戸惑とまどったりしないだろうか……。

 劇の稽古が長引き、息子が賢也君の肩で眠ってしまう。

 尚人なおとは同い年の彼にべったりで、まるで弟のようだ。

 本当に2人は何もないんだよな? 

 嫌な顔もせず、息子に肩を貸している賢也君は親切過ぎないだろうか?

 寝ている兄へ雫が風邪を引かないようマントを被せていた。

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