【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第630話 迷宮都市 樹おじさんの召喚 4 冒険者登録&スキップ申請

公開日時: 2023年12月10日(日) 12:05
更新日時: 2024年4月1日(月) 21:37
文字数:2,304

 確実に当たると自信がなければ、普通武器は投げたりしない。

 丸腰になってしまうからだ。

 ファングボアを仕留められると分かっていて槍を投げたのだろう。

 でもそれは、初めて見る魔物に対する動きじゃないよね?

 牛より大きな魔物だよ?

 見た目は鋭い牙を持った猪だ。

 強さも分からないのに一度で倒せると思うだろうか?

 絶命したファングボアから、いつきおじさんが槍を回収した後にアイテムBOXへ収納する。


「次は人型のトカゲです。武器を持っているから注意して下さいね」


 C級冒険者のスキップ制度対策に、試験の対象である槍持ちのリザードマンを出す。

 これにもひるんだ様子を見せず、接近すると槍を絡め取り首筋を切り裂いた。

 冒険者活動をするのに不安要素は一切感じない。

 日本で証券マンだったおじさんは、いつ槍を習ったんだろう?

 剣を使用出来る父といい、どこか2人は似ている。

 

 一応、魔石の取り方も教えておこう。

 旭がミスリル製の解体ナイフを渡し、魔石の場所を伝えた。

 これは流石さすがに少し嫌そうな顔をしている。

 まぁ、私も人型の魔物から魔石を取った事はないんだけど……。

 アイテムBOXに魔石を直接収納する手は、昇格試験で使用出来ないだろうなぁ。

 

 その後、地下1階の魔物を次々と出し樹おじさんに倒してもらった。

 3時間後にLvを確認すると、10だったのでHP/MPが858になっている。

 これならスキップ制度を受けても大丈夫かな? 

 冒険者登録をする前に、武器と防具を購入しないと……。

 あぁ、従魔もまだ見せていなかった。

 私だけホームに帰り、5匹の従魔を連れ戻ってくる。

 シルバー・フォレスト・泰雅たいが黄金こがね山吹やまぶきを樹おじさんに紹介すると、


「大型の魔物を5匹もテイムしてるのか!? 娘が強すぎるんだけどっ!」


 魔物を見るなり父に絶叫している。


「あぁ……。沙良のテイム方法は、かなり特殊なんだ。ちなみに結花ゆかさんも、2匹の魔物をテイムしているぞ」


 父は何の魔物か言わず、驚いている親友に対しニヤリと笑った。

 フォレストウサギを見て残念に思わないといいけど……。

 家の門に樹おじさんの血を登録し外へ出る。

 初めて異世界の景色を見るおじさんの様子をうかがうと、あまり興味がないのか兄達のように態度を変えなかった。

 何か、もやもやするなぁ~。

 シルバーに樹おじさんと騎乗し武器屋へ向かう。

 ドワーフがいないとがっかりし、店内の槍を見て溜息を吐いている。


「俺の武器……。ひびきは何を持ってるんだ?」


 父がガーグ老から渡された剣を見せると、樹おじさんが笑顔になった。


「いい剣だな……」


「あぁ、気に入っている」


 2人の短い遣り取りに、何か別の意味があるんじゃないかとふと思う。

 どこか言葉に重みを感じたのだ。

 それから、どれも同じだと言って樹おじさんは兄と同じミスリル製の槍を購入した。

 祖父にお願いすれば、もっといい武器を鍛えてくれるだろう。

 防具は私達と同じワイバーン製の革鎧に決めた。


 再び従魔に騎乗し冒険者ギルドへいき、受付嬢に冒険者登録とスキップ制度の申請をすると、そのまま会議室へと案内された。

 冒険者登録は受付嬢の仕事だと思うけど、毎回何故なぜかオリビアさんがしてくれるんだよね。

 会議室で待つ事もなく、直ぐにオリビアさんが入ってきた。


「新しいパーティーメンバーの冒険者登録と、スキップ制度を受けにきました。旭のの旦那さんです」


結花ゆかの夫の樹です。よろしくお願いします」


 立ち上がって挨拶をした樹おじさんに、オリビアさんが固まっている。


「……えっ? ユカさんの夫って……」


 あぁ、年齢差が気になるのか……。

 20歳と42歳だもんね。

 20歳以上、年が離れているから驚いたんだろう。

 オリビアさんは衝撃から直ぐに立ち直り、冒険者登録用紙を渡してきた。

 これは私が記入した方がいいだろう。

 『手紙の人』からの保障で、異世界の言葉を話せるし文字を読めるようになっているけどいきなり書くのは難しい。


 用紙を記入してオリビアさんへ返却すると、冒険者カードに血を垂らし登録は完了。

 鉄製のF級冒険者カードを持ち、樹おじさんが嬉しそうにしている。

 また代金を請求するのを忘れているオリビアさんへ、登録料の銀貨1枚(1万円)を渡すと不思議そうな顔をされてしまった。

 絶対、ギルドマスターの仕事じゃないですよね?


 スキップ制度は、これから受けられると聞き冒険者ギルドの裏手に回り、前回と同じ馬車に乗ってダンジョンへ。

 揺れが少ない馬車は快適だ。

 この馬車で移動するなら、お尻も痛くならない。

 私にはマッピングがあるから不要だけど……。 


 ダンジョンに到着すると、樹おじさんがワクワクした表情に変わる。

 冒険者にあこがれていたんだろうか?

 昨日も「夢が叶った」と言っていたし……。

 今回も入場料を払わずダンジョン内に入る。


「これから、ファングボアとリザードマンを見付けて1匹ずつ討伐する様子を見ます。制限時間はありませんので準備が出来次第、移動を開始して下さい」  


 そう言うと、オリビアさんは最後尾に下がった。

 ここからは樹おじさん1人で、出現する魔物を全て討伐する必要がある。

 槍の腕前を見る限り問題はないだろう。

 私達も後に続き、おじさんの姿を見守った。

 地下1階の魔物は沢山倒したからか、出現した魔物を次々と槍でほふっている。

 討伐対象であるファングボアとリザードマンも、怪我をする事なく仕留めた。


 オリビアさんから合格判定をもらい、再び冒険者ギルドに戻りC級冒険者カードを受け取る。

 これで月曜日から一緒にダンジョン攻略が可能になった。

 後はしずくちゃんのお母さんへ、明日の稽古後にテイムをお願いすればいい。

 ホームの自宅に戻り、初めての事ばかりで疲れただろうとお茶とお菓子を準備した。

 落ち着いたら、兄達の結婚報告をしよう!

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