【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第740話 旭 樹 再召喚 32 付与魔法

公開日時: 2024年3月29日(金) 13:05
更新日時: 2024年7月21日(日) 14:07
文字数:2,648

 明日もダンジョン攻略なので、そろそろ帰ろうかと思い席を立つと、


「まだ一緒にいたい」


 ひびきが俺の手を握り引き留めてきた。

 少し言動が怪しいな? もう少し飲みたいとかじゃないんだ……。

 この魅惑魔法の効果は徐々に表れるんだろうか?

 遅くなると奧さんが心配するぞと言って、響を強引に立たせ店を出る。

 彼はそのまま手をつないだ状態で俺を家まで送り、名残惜なごりおしそうに自宅へ戻っていった。

 なんか学生の恋人同士がする別れ際を再現されたようで恥ずかしい。

 

 水曜日。

 娘はあかねちゃんの冒険者登録をするため、俺達とは別行動するみたいだ。

 王都の冒険者ギルドで従魔登録もするらしい。

 茜ちゃんの従魔達は、まだ攻略されていない階層の魔物だけど大丈夫か?

 王都のギルドマスターは、娘が何者か知っているから問題なく処理してくれそうだが……。

 その日は何事もなくダンジョン攻略を終えた。

 夕食に妻が鍋を作っているところ、しずくが来客を告げる。

 沙良ちゃん、茜ちゃん、賢也けんや君、尚人なおと、セイさんの5人だ。


「沙良ちゃん、いらっしゃい。今日は大人数だな、夕飯はもう食べたのか?」


「はい、もう済ませました。いつきおじさんに、お願いしたい事があって……」


「あぁ、うちは今から夕食なんで少し待ってくれるか?」


「これ、お土産のお寿司です。アイテムBOXに収納すれば、いつでも食べられますからどうぞ」


 娘からのお土産に感激する。

 さっきから、なんとも言えない匂いが台所からただよっていたのだ。

 先延ばしにするだけだと分かっていても、お寿司が食べたい!


「ゆっ、結花ゆか! サラちゃんが、お寿司をくれたから夕食に頂こう!」


「あら、悪いわね。じゃあ夕食の分は明日の朝、食べましょうか」


 妻が鍋をアイテムBOXに収納するのを見て、入れたまま忘れてくれる事を願う。

 お土産のお寿司を食べている間に、沙良ちゃんから付与魔法を試してほしいとお願いされた。

 あぁ、召喚された時に増えた新しい能力か……。

 そういや、まだ一度も試してなかったな。

 確か魔石に習得済みの魔法を付与出来るので、魔法を覚えられない雫に渡せば喜ぶだろう。

 そう思って了解した。


 娘が出した幾つかの魔石に、習得したばかりのヒールLv1の魔法を付与する。

 響がいないからセイさんに鑑定をお願いした。

 属性スライムの魔石は1回、現在攻略中の摩天楼まてんろうダンジョン31階に出現する魔物の魔石は51回使用出来るらしい。

 魔物のLvによって、使用回数に違いがあるのは予想通り。

 

 次にサンダーボールの魔法を掛けてほしいと言われ、何も考えず付与した後でLv20あるのに気付きあせり出す。

 現在Lv40の俺が、Lv20の魔法を付与出来るのはおかしい。

 鑑定したセイさんが驚いた表情になり、結果を口にするのを躊躇ためらう様子をみせた。

 俺は人差し指を立てながら、セイさんに近付いていく。

 頼む、Lv1だと言ってくれ!

 彼は何か事情があると判断したのか、大人の対応をしてくれた。


「ええっと、サンダーボール……Lv1・・・の魔法が10回使用出来ます」

  

 あぁ、助かった……。

 その後、サラちゃんの実験に付き合い色んな魔法を魔石に付与する。

 ヒルダ時代に習得した魔法は全てLv20だったが、セイさんがLv1だと伝えてくれた。

 彼には、後で何か言い訳を考えておこう。

 付与済みの魔石がちゃんと使用出来るか試すため、娘が雫に飛翔魔法を付与した魔石を渡し庭に出る。

 魔石を持った雫の体が浮き上がると、尚人が手を握り空まで誘導していった。

 これで魔石に付与した魔法が雫に使えるな。

 ただ、Lv20の魔法だから効果が高い物になるが……。


 雫が飛翔魔法を使えたのを確認すると、娘は茜ちゃんへ一緒に練習したらと言う。

 彼女はダイアン達を呼ぶと、いきなり空高く舞い上がり、あっと言う間に姿が小さくなった。

 前世で飛翔魔法を使っていたのか? 空を飛ぶ姿が慣れているように感じる。

 それを見た娘が自分も飛びたくなったようで、体を浮かせた。

 俺はすかさず手をつかみ、反対側の手は賢也君がしっかりと確保し、セイさんまで娘の腰に手を添える。

 セイさんは、護衛として転生した記憶がどこかに残っているのか?

 娘は不満そうな顔をしているが、手を離したりはしない。

 

 同時に沙良ちゃんが飛翔魔法を使用した瞬間、シルバーが鋭く吠え従魔達が勢揃せいぞろいする。

 娘が心配というより、無茶をする主人の性格をよく把握してるんだろう。

 30分程練習を続け付与した魔石を全て雫に渡すと4人は帰り、尚人が家に泊まるそうだ。


 翌朝、木曜日。

 結花は昨日作っていた鍋を忘れておらず、朝食に出してきた。

 鍋の中身を見ると真っ赤に染まっている。

 またトマト味か? しかし、一口食べてキムチ味だと分かる。

 この後を引く辛さが……、って最初から激辛じゃん!

 追加で唐辛子を大量に入れたみたいな味がする。

 尚人は朝から激辛鍋に震えていた。

 ふっ、まだ甘いな。


 ダンジョンに入ると、雫が付与魔石を使うんだと張り切っている。

 うん、まぁ程々にな……。

 果物採取を速攻で終わらせ、川の方に向かう。

 取り出した魔石は、サンダーボールを付与した物のようだ。

 息子がいつも川に撃ち込んでいるから、真似したいんだろう。

 雫が「サンダボール!」と大声で言った途端、空から雷が川に落ちる。

 俺のイメージが、そのまま反映された魔法だから仕方ない。

 水面に感電死した迷宮ナマズが浮き上がってきた。

 その効果の高さに雫が大興奮している。

 結花と尚人は目にした魔法に驚き、口をあんぐりと開け固まっていた。


「あなた? これ、Lv1のサンダーボールを付与したのよね?」


 しばらくして衝撃から立ち直った妻に問われる。


「あぁ。付与した魔石は、摩天楼ダンジョンの31階に出現する魔物だから効果が高くなったのかもな……」


 付与魔法を使えるのは俺しかいないから検証出来ないだろうと思い、そう誤魔化しておいた。

 

「それにしても、威力が高すぎる気がするけど……」


 そこは、あまり追及しないでくれると助かる。


「お父さん! すごいね! 私も習得していない魔法を使えるよ~。サンダーボールじゃなくて、サンダーボルトみたい!」


 喜んでいる雫とは対照的に、尚人は感電死した魔物をアイテムBOXへ収納し俺を見た。


「父さん、他の魔法は大丈夫? 雫に使う時は注意しないと駄目だよ」


 バレたかとドキッとしたが、どうやら妹が威力の高い魔法を使用するのを心配したみたいだな。


「あぁ、伝えておくから心配するな」


「特に火属性は魔物が換金出来なくなるから、使わないよう言っておいてね」

 

「……分かった」


 本当のLvを言えない俺は、この先同じような事がありそうで、かなり不安になった。

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