月曜日。
今日から5日間またダンジョン攻略。
階段へ一直線に、地下1階から地下11階まで駆け抜ける。
兄&フォレストと別れ、私達は再び地下11階から地下15階まで駆け抜けた。
安全地帯に着いてマジックテントを設置後、休憩したら攻略開始。
アマンダさん・ダンクさんと挨拶を交わしながら、子供達の話を併せ伝えていく。
王都のダンジョンで呪具が設置された件は、既に冒険者達の知る所となっていた。
冒険者ギルドの壁に事件内容が貼り出してあったからだ。
ギルド間は通信の魔道具で遣り取りが出来るから、情報も早く連絡が入ったのだろう。
迷宮都市に引き続き2度目の呪具の設置に、アマンダさんもダンクさんも憤りを隠せない様子。
また犯人が捕まった事や、教会の司教が関与していた疑いがあるとも書かれていた。
今回の件で、教会の立場は悪くなるだろう。
組織的にアシュカナ帝国と繋がっているのを暴けるといいけど……。
きっと、そうはならないだろうなぁ。
こういった場合は、司教だけが切り捨てられるのがお約束だ。
ただ、それでも大きな波紋を生むには違いない。
特に被害を直接被った迷宮都市と王都の人間は、教会に疑いの目を向ける事になる。
王都にいたと言えないため、私は「犯人が捕まって良かったですね」と話を合わせておいた。
午前中は、いつもの薬草採取と地下16階の果物採取。
午後からは、奏伯父さんとセイさんと一緒に摩天楼のダンジョン30階の攻略だ。
そして今日は攻略を始めて30日目になる。
丸を付けたカレンダーを見ながら、私は朝からウキウキしていた。
ダンジョンで宝箱が出ないと知り、ずっと残念に思っていたからね。
父とセイさんが安全地帯から攻略にいくのを見送り、私はテント内から宝箱をマッピングで探していく。
出現場所が分からないから、この階層全てを確認する必要がある。
と言っても半径10kmくらいの広さなので、そう時間は掛からないだろう。
暫くすると、ポチがテント内に入ってきた。
いつもは父の肩に止まり攻略をするんだけど、どうしたのかしら?
ヨロヨロと歩いているように見える。
これは魔力切れの状態かな?
私はハイエーテルを出し、ポチに飲ませてあげた。
すると元気になり、テントから出て父の下へ飛び去っていく。
毎週、迷宮都市と摩天楼のダンジョンを往復するポチも大変だなぁ。
奏伯父さんは、従魔にポーションが効く事へ驚いていたようだ。
テイム出来る人間は少ないので、従魔の生態を知る機会はないんだろう。
この摩天楼のダンジョンを攻略しているA級以上の冒険者パーティーでさえ、従魔がいるのは本当に極僅かだった。
さて宝箱は、どこかな~?
雪が降っている階層で景色は白いから、宝箱の色によっては簡単に見付かると思うんだけど……。
1時間後。
魔物を倒しアイテムBOXへ収納しながら、金色に輝く宝箱を発見した!
何だかサイズが小さいような?
アイテムBOXに収納した宝箱をテント内で出してみると、1辺が30cmくらいの正方形だった。
「奏伯父さん。宝箱って、こんなに小さいの?」
「いや、俺が見付けた時はもっと大きかったが……。宝箱の色は青だった」
「疑問なんだけど、誰かが先に発見したりしないのかな?」
「あぁ、それはない。30日攻略したパーティーにしか、宝箱は発見出来ないようになってるからな」
へぇ~、ダンジョンは相変わらず不思議が一杯だ。
「大きいより小さな宝箱の方が、良い物が入っているかも知れないね!」
宝箱の色も金だし、これは期待大だ!
父達が帰ってくるのを私はそわそわ待つ。
2時間後。
2人がテント内に戻ってきた。
「お父さん。宝箱見付けたよ! 私が開けてもいい?」
「おっ、金色かぁ~。何が入っているか楽しみだな。開けてもいいぞ」
父に了解をもらい、セイさんを見ると頷きを返された。
じゃあここは失礼して、私が宝箱を開ける役目をさせて頂こう。
ゆっくりと蓋を開けると、そこには……。
私は中身を確認した瞬間に、速攻で蓋を閉じた。
その行動を訝しんだ父が宝箱に手を掛け数秒後、同じように蓋を閉める。
「えっと、私も確認していいですか?」
「どうぞ……」
私と父の落胆した表情を見て、セイさんが躊躇いながら宝箱を開け固まった。
「あ~、これは……」
と言ったきり、苦笑している。
30日間待った宝箱の中身が、ゴールドのビキニとブーメランパンツ2枚ってどういう事よ!
「ちなみに性能ですが、身に着けると全ての魔法攻撃を跳ね返すとあります。但し、これ以外を着た場合、効果はなくなるそうです」
「……」
雪が降る階層で、ビキニを着て攻略しろってか!?
死ぬわ! ダンジョンマスター、許すまじ!
絶対、男に違いない。
今から向かって文句を言ってやろう!
「沙良。怒るのは分かるが、勝手に何処かへいこうとするな。お前がいなくなると大変なんだ」
父に手を掴まれ行動を制された。
「だって、酷すぎるよ! 金色の小さな宝箱で期待させておいて、これはないんじゃない?」
「宝箱の中身はランダムだからなぁ。中にはハズレもあるし、仕方ないさ」
自分に関係のない奏伯父さんは、そう言って笑う。
いや、納得出来ない!
「性能だけは、いいんだけどね~。流石に、これを着て攻略する勇気はないかな?」
セイさんは、ブーメランパンツを宝箱から取り出し手に取って眺めている。
「海水浴にはいいかもな」
父はそう言うけど、ビキニなんて人前で恥ずかしくて着れないわよ。
それにブーメランパンツを穿いた父も見たくない。
「よし、売ろう!」
私は初の宝箱の中身を売る事に決め、迷宮都市ダンジョン地下15階の安全地帯へ移動したのだった。
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