【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第612話 迷宮都市 武術稽古 お礼の『お好み焼き』&王都へ

公開日時: 2023年11月22日(水) 12:05
更新日時: 2024年3月15日(金) 12:43
文字数:2,163

 王都の事件は、冒険者ギルドが解決するだろう。

 薬師ギルドから『毒消しポーション』が渡っているなら、対処も問題ない。

 しずくちゃんとお母さんが、王都にいる時じゃなくて良かった。

 2人と合流する前だったら、王都へ探しにいく必要があった所だ。


 私は『お好み焼き』の材料を刻み、自分達で焼けるよう1人前をボウルの中に入れる。

 ガーグ老にプレゼントした『バーベキュー台』を出してもらい、鉄板を置く。

 先に妖精さんのお供え分を兄に焼いてくれるようお願いし、焼き立てを皿に載せ木の下へ持っていった。

 勿論もちろん、雫ちゃんのお母さんもバスケット持参で付いてくる。

 善哉ぜんざいだと言っていたから、まだ大丈夫かなぁ~。


「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『お好み焼き』です。各自で上手く焼きながら食べて下さいね。それでは頂きましょう」


「頂きます!」


 私達がボウルに入った材料を混ぜ合わせるのを見て、ご老人達も同じように真似をする。

 鉄板の上に丸く成型した物をしばらく置き、裏面に焼き目が付いたらひっくり返すんだけど……。

 私の分は、兄が丸い状態のまま綺麗に返してくれた。

 初めてするご老人達を見ると、まずはガーグ老が一番にヘラを使用しひっくり返す。


 おおっ、上手く出来てる!

 他のご老人達もガーグ老に続き、形が崩れないよう慎重に返していた。

 息子さん達は……、うん途中で割れてしまったみたい。

 お嫁さん2人は成功。

 雫ちゃんとお母さんの分は、奏伯父さんがやってあげていたようだ。

 旭の分は当然、兄がしている。


 焼きあがったら、刷毛はけで『お好み焼きソース』を塗る。

 事前に陶器壺に入れておいた『お好み焼きソース』をガーグ老へ渡し、各自で好きな分量を塗ってもらおうと思ったんだけど、ガーグ老自ら全員分の『お好み焼き』に塗り出した。

 調味料は、この世界では貴重な物だからリーダーが管理するらしい。

 マヨネーズは今回自重し、代わりに鰹節かつおぶしを振りかけた。


「サラ……ちゃん。何だその、うねうねと動いておる物は? 生きておるのかの?」


 鰹節かつおぶしが踊っている様子を見たガーグ老が、怪訝けげんそうな顔をする。


「これは鰹節かつおぶしといって、魚の身を乾燥させたのを薄く削った物ですよ。試してみますか?」


「珍しい物だな。どれ、儂も掛けてみよう」


 手渡した鰹節かつおぶしを『お好み焼き』の上に掛け、踊る様子をまじまじと見つめている姿に思わず笑ってしまった。

 生き物じゃないから、大丈夫ですよ~。


「『焼きそば』の『ソース』とは、また違った味だな。濃厚で旨い! この鰹節かつおぶしとやらも、不思議な味だのぉ」


 ヘラで切り分け、一口食べたガーグ老が味の感想を伝える。

 『ソース』ひとつにしても、日本には沢山種類があるんだよね。

 豚カツ用のソースは、また違う味です。

 今回は、材料の中に焼いたハイオークの薄切り肉を細かくした物を入れてある。

 私はイカ入りが好きだけど、まだ魔物を見ていないから出せなかった。

 兄に六等分してもらった物を皿に載せ、食べ始めると遠くの方でドサッと何かが落ちる音がする。

 また妖精さんが犠牲になったようだ。


「善哉の他に、何を入れたんですか?」


 原因に思い当たらず雫ちゃんのお母さんに確認すると、善哉には抹茶だと思い飲み物も一緒に入れたそうだ。

 あぁ、抹茶か……。

 それは相当苦いだろうなぁ。

 落ちた妖精さんは直ぐに姿を消してしまったけど、前回見た時とは違う気がする。

 この庭には、何人の妖精さんがいるのかしら?

 『お好み焼き』1枚だと、ご老人達はお腹が空くかも知れないとデザートにはダンジョン産の大きなバナナを出す。

 私達は梨を食べた。

 食後、木の下に向かうとお礼の手紙が2通置かれている。


『サラ様。今日も美味しい料理を、ありがとうございます。ショートブレッドは、お腹が空いた時に食べさせて頂きます。また次回も、よろしくお願い致します。』


『ユカ様。小豆を煮た物をありがとうございます。ですが、飲み物は不要です。果物だけで充分です。』


 ……。


「善哉は口に合ったみたいね。抹茶は、妖精さんには大人の味すぎたのかしら?」


 いや、多分そうじゃないと思います。

 適量の抹茶なら、善哉によく合いますし……。

 ガーグ老へお礼のショートブレッドを渡し、私達は工房を後にする。

 それぞれの従魔に騎乗し家に戻る途中で、父から王都に連れていってほしいと頼まれた。

 タマから連絡があった件が気になるんだろう。

 それを聞いた兄がしぶい表情になる。


「父さん。王都のダンジョンでは呪具が設置されたばかりだ。経過を見るために、アシュカナ帝国の諜報員ちょうほういんがいる可能性が高い。今日は止めておいた方がいいんじゃないか?」


「アシュカナ帝国が今後どう動くのか、知っておきたい。同じ国にいるからな。かなでさんも一緒にきてもらえば大丈夫だろう」


 父の返事に兄は少し考えた後、口を開いた。


「何があるか分からないから、俺も一緒にいこう。旭、お前も同行してくれ。きっと怪我人が大勢いるはずだ」

 

「じゃあ、私も付いていくわ。迷宮都市でヒールLvも上がったし、王都ではお世話になった冒険者もいるのよ!」


 王都にも治癒術師はいるだろうけど、ここは1人でも多い方がいい。

 雫ちゃんのお母さんも、知り合いが心配なんだろう。

 不安そうな表情をする雫ちゃんに、奏伯父さんが全員無事に返すと約束をし安心させている。

 結局、雫ちゃん以外のメンバーで王都へいく事になった。

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