土曜日朝7時。
今日は1日の予定が盛沢山なので、昨日飲みに行った2人を朝早く起こしに行く。
きっと久し振りだから一緒に寝ていると思うけど、遠慮しないで叩き起こさせてもらうわよ!
寝室に入ると案の定、旭が定位置に居て兄の左腕を枕にして眠っていた。
まぁ幸せそうな顔しちゃって。
ダンジョン内で別々のテントで寝るのは、やっぱり寂しかったのかしら?
いつもなら2人を起こさないように静かに退散するんだけど、今日はそうもいかない。
もう一緒に寝ている事はバレているんだし、幸い2人ともパジャマは着ていたのでこのまま起こそう。
流石に2人が裸だったら、お互い気まずい思いをするから起きてくるのまで待ってるけどね!
「お兄ちゃん、旭、起きて!」
私は昔からある布団を引っぺがす方法を使って2人を起こす。
最初に兄が寝ぼけ眼で私を見、次いで左腕の違和感に気が付いたのか視線を左に向けて旭を確認。
そして朝から盛大な溜息を吐いたかと思うと、旭の頭を叩いて起こした!
まぁ!
恋人に何て乱暴な起こし方をするのかしら?
「痛たっ!」
叩かれた旭は頭を押さえながらビックリして飛び起きる。
「あれ? 沙良ちゃんおはよう。もしかして俺を叩いたのは沙良ちゃん?」
やだわ、私の所為にしないでよ。
「お兄ちゃんが旭の頭を叩いて強引に起こしたのよ? 肩をゆすって起こすとか、もっと優しい方法でしてあげればいいのにね~。昨日、喧嘩でもしたの?」
「あ~、それは多分……」
旭が口の中でごにょごにょ言っていたけど、聞いている時間がないので2人を急かした。
「今日は時間が無いから、さくさく行動するわよ。直ぐに出かける準備をして台所に来てね。朝食は簡単に食べられるサンドイッチだから」
私はそう言って部屋を出ると、自分の支度を始める。
今日の服装は、新調したブラウスに黒のパンツスタイルだ。
いつもの古着姿じゃない、B級冒険者として相応しい新品の服に着替え台所に行く。
後はもう挟むだけとなっている材料を使ってミックスサンドを3人分作り、コーヒーを淹れた所で兄達がやって来た。
2人も新調したばかりの服に着替えてきたので、私達3人はこれで子供達から稼いでいる冒険者として見てもらえるだろう。
兄は全身グレーで、旭は明るい緑色の服を選んだようだ。
それぞれの容姿にとてもよく似合っている。
服を新調した事は正解だった。
いつまでも古着じゃ格好つかないものね。
ツナと胡瓜・ハムとチーズとレタス・厚焼き玉子の3種類のサンドイッチを食べて、異世界の冒険者ギルド付近にホームで移転。
この世界のお店は、どこも大抵8時から営業を開始するので早すぎるという事はない。
営業終了は夕方5時だ。
これは街灯が無い事も関係しているんだろうな。
日が落ちてしまえば外は月明かりしか無いから。
対して冒険者ギルドや商業ギルドは24時間営業だった。
顧客のニーズに対応している所は流石だよね。
両方ともかなりのお金が動く場所だから、時は金なりを実践している。
働く職員は大変そうだけど……2交代制かしら?
冒険者ギルドを首になったオリーさんから依頼を受けた3人の事が気になっているけど、扇舞の練習の後で2パーティーのテントにお邪魔して事情を話しておいたので、早晩迷宮都市からは去る事になるだろう。
話を聞いたアマンダさんとリリーさんが大激怒していた。
アマンダさんは、クランメンバー全員に周知するとまで言ってくれる。
若い娘の胸をタダで触ろうとするなんてと大層ご立腹だ。
うん?
お金を払うならOKなの?
ダンクさんとケンさんは「その3人は終わったな……」と何やら遠い目をして呟いていた。
どういう意味かしら?
まぁなので長くて1週間も待てばよい筈だ。
迷宮都市の冒険者を敵に回して、クランに入らず活動出来る程ダンジョン攻略は甘くない。
彼らは嫌と言う程、迷宮都市の洗礼を受ける事になるだろう。
ダンジョン攻略をしている冒険者は、毎日1階層下に物資を配達しているので情報が回るのが非常に早いからね~。
昨日『肉うどん店』に行った時、母親達にもちらりと話しておいたから取引先にも伝わる筈。
母親達の情報網を侮ってはいけない。
彼女達が一言「うちのオーナーが酷い目に遭って……」と言うだけで、噂話は拡散していくのだ。
いや~恐ろしいなぁ。
まずは華蘭に行って、スヌードと耳当てを店員さんから受け取る。
材料となる皮は自分で狩った物だし、仕立て料もシルバーウルフの皮を卸した事で無料になった。
ワイルドウルフを使用した物は子供達が身に着けるには、少し高価になってしまうけど実質費用は掛かっていない事を伝えれば良いだろう。
私達は冒険者だからね!
プレゼントも全部揃ったし、ご褒美の料理の下準備も出来ている。
よし、ミリオネの町にマッピングで移動しよう。
子供達の家に行くとまだ冒険者ギルドに仕事に行く前だったので、急いで5軒回り昼食は皆で食べる事を伝えた。
その際、前回聞いた人数に変更が無いかも合わせて確認する。
ミリオネの町の子供達は増えていないようでほっとした。
子供達は笑顔一杯になり「今日はご馳走だ~」と言って、元気良く冒険者ギルドに向かって走っていく。
私の作るご褒美の料理を楽しみに待っていてくれたようだ。
旭のスキップ制度を受けた時以来となるので、1年以上待たせてしまった事になる。
兄のマンションをホームに設定するためのLv上げで、毎週ダンジョンを攻略していたから中々来てあげられなくてごめんね。
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