食後にコーヒーを淹れて、デザートにショートケーキを出すとサヨさんの目が輝いた。
本当に甘い物がお好きなんですね。
異世界じゃ絶対に食べられないだろう。
兄には抹茶ケーキ、旭にはモンブランを出してあげる。
私はチョコレートケーキにした。
実はこのケーキ、以前兄に教えてもらったホテルのケーキバイキングの物。
考えたらその場で食べなくても、全部アイテムBOXに収納すればいいんじゃない? と思って収納してみたのだ。
これ多分ホーム設定の仕様の穴だと思う。
結果、いくらでも収納出来た!
2,000円で90分食べ放題だったから90分時間一杯、注文と収納を繰り返し大量にケーキをゲットする。
ケーキ屋さんのケーキより、ホテルのパティシエが作るケーキの方が美味しいんだよね~。
『手紙の人』が気付いて修正される前にと思って、そりゃもう必死に注文しましたよ!
一度に3個までしか注文出来ないから、延々と電子メニューをタップし続けたのだ。
現在かなりアイテムBOXには各種ケーキが収納されている。
もう笑いが止まらない状態ですよ。
まぁきっと今回だけかもしれないけどね。
兄と蟹懐石を食べに行った時、デザートまで一遍に出てきた事があって文句を言ったのだ。
その後、電子メニューに《お任せ》と《お好みで》と《タイミング》が表示されるようになった。
今思えば、ポイントカードが使えるようになったのも文句を言った後だったし。
その割に、コーヒーチケットは未だに使えないままだけど……。
いつか要望が通るかも知れないと思い、コーヒーチケットは捨てずに大切にアイテムBOXに収納してある。
『手紙の人』、私達を見ているならどうかコーヒーチケットを使えるようにして下さいね!
さて、テイム魔法の事を聞いておかなければ。
サヨさんが、ケーキを食べ終わるの待って話を切り出す。
「サヨさん。今日、冒険者ギルドに行って2匹の従魔登録をしてきたんです。そうしたら1人で2匹テイムしている事に驚かれてしまって……。この世界の人は1匹しかテイム出来ないんですか?」
「まぁ、2匹もテイムしているの? それは驚かれるでしょうね。1匹テイムするのに、かなりのMPが必要だと聞いていますから……」
ああ、それでかっ!
この世界のHP/MPの基本値を忘れていたわ。
年齢が基準となるので、10歳で冒険者登録をしてLvを上げてしまうと基本値が10になってしまう。
Lv20だとMPは10×21=210しかない。
私の場合48歳でLvが上がったので、Lv20だとMPは48×21=1,008だ。
テイムに必要な魔物Lvにもよるだろうけど、最低100は必要だと思っていい。
Lv20の人が1匹テイムすると210-100=110しかMPは残らないから、2匹目をテイムするのは難しいんだろう。
何かあった時のためにMPは温存しておきたいからだ。
冒険者ギルドで驚かれたのは私が2匹(高レベルの魔物)をテイムしても、冒険者活動に支障が出ないくらい残存MPがあると思われた所為だ。
という事は、私かなりLvが高い冒険者だと思われていそう……。
まぁ実際にLvは35あるんだけどね。
Lv30と見られているとすれば10×31=310。
2匹のテイム消費分200と考えて引くと310-200=110か。
19歳で地下14階を攻略している3人パーティーのC級冒険者。
しかも2匹テイムしているとなれば、驚かれるのも無理はない。
もう目立ちまくりよね!
これ以上有名になるのは勘弁してほしいところだけど、2匹の従魔登録をした時点でアウトだろうなぁ。
自分達の規格外のMP量を忘れていたのは、痛恨のミスだった。
「私達、『手紙の人』からかなりの保障を付けてもらってるんです。この世界の人よりMPも多いので、2匹テイムしても問題ないんですよ」
「そうなの? 本当にうちの孫達は凄いわね。所でテイムしている2匹の従魔は何かしら?」
「ゴールデンウルフと迷宮タイガーです」
「ゴールデンウルフですって!?」
「ええ。シルバーウルフから進化してくれました」
「テイムされた従魔が進化するなんて、聞いた事もありませんよ!?」
「そうなんですか?」
まずい、またやらかしてしまった。
ギルドマスターが従魔登録用紙を見て、目を見張っていたのはそれが理由かっ!
ゔ~ん。
こりゃもう取返しがつかないわ。
こうなったら迷宮都市最強パーティーを目指そう。
それで全て解決だ!!
……多分。
あぁ、昨日の内にもっとよく聞いておくんだった。
後悔しても今更遅いけど、兄の私を見る目が鋭くなってるよ……。
サヨさんが帰ったら確実にお説教コースだ。
隣の旭は可哀想な子を見るような目で私を見ている。
サヨさん、ずっと一緒にいて~。
私の願いも虚しく、サヨさんは夕食を作りに家に帰る事になった。
その際、調味料をお土産として渡すととても感激して頂けた。
サヨさんを家に送り届た後、兄から懇々とお説教を受けたのは言うまでもない。
正座しすぎて足が痛いです……。
気が付かなかった兄も同罪なのに~。
いえ反論はしませんよ?
これ以上、お説教は受けたくないので……。
サヨさんを送ってから2時間後。
私達は再び夕食をご馳走になりに、『華蘭』へ向かったのだった。
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