【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第735話 旭 樹 再召喚 27 隠れ家の探索&紫と赤の丸い玉

公開日時: 2024年3月24日(日) 12:05
更新日時: 2024年7月16日(火) 12:34
文字数:2,702

 もう少し感傷に浸っていたいが、家を抜け出した事がバレる前に戻ろう。

 ついでに隠していたヘソクリを腕輪へ収納し、再びポチをグリフォンに変態させ森の家から王都へ飛んでいく。

 それからは家で大人しく待機した。

 ポチには何度も変態させたので、念のため沙良ちゃんから貰ったハイエーテルを飲ませる。

 従魔のLvが500なら、MPも5,000はあるのか……。

 俺の従魔達は、かなり強くなったようだ。


 2人を待つ間、暇なので隠れ家の探索をしよう。

 1階はキッチンとリビング、2階には3部屋あり2部屋はひびきと俺の寝室で、もう一部屋は泊まる時に影衆達のため用意した部屋のようだ。

 王族のそばで常に隠形おんぎょうし護衛するといっても、寝る必要はある。

 交代で休んでいたのを、響は把握していたらしい。

 まぁ、少し考えれば分かるだろうけど……。

 ダンジョンで一緒にLv上げをした時、ガーグ老から聞いたのかも?

 人数が多い影衆達の部屋が一番大きく作られているが、きっとガーグ老はこの部屋を俺達に使わせるだろうな。


 そういえば、響からガーグ老達は家具職人をしていたと聞いた。

 あのご老人達に、そんな技術があったか?

 貴族仕様の芸術的な家具を作製出来るとは、到底思えないんだが……。

 2階の探索を終え1階に戻ると、タイミングよく2人が隠し扉から出てくるところだった。


「おかえりなさい。隠し通路は使用出来ましたか?」


「あぁ、崩れた場所もなく問題なかったよ」


「姫様、待たせたの。何も起きておらんか?」


「ええ、ずっと家の中にいましたわ」


 俺は、にっこり笑って何事もなかったと返事をする。

 肩に乗ったポチも、俺の意図をみ頭を上下に動かしていた。


「じゃあ帰るぞ。そろそろ沙良が迎えにくる時間だ」


 俺達は風竜へ変態したポチに乗り、迷宮都市の工房まで移動する。

 道中ガーグ老へ隠れ家用に家具の作製をお願いすると、胸を叩き「安心して任せるがよい」と言われた。

 本当に大丈夫だろうか……、ちゃんと使える物を作ってくれよ?

 沙良ちゃんと一緒にホームへ戻り、響の家で夕食をご馳走ちそうになった。

 メニューはダンジョンで獲れた帆立ほたて尽くし!

 新鮮な刺身に、熱々の帆立フライを堪能たんのうする。

 しかし、俺の前に鰻の蒲焼が置いてあるのは何の罠だ? 今日は絶対食べないぞ!

 食後、沙良ちゃんが竜の卵の石化が解除された報告をし、義祖母に見せてあげている。


「この子は混ざり竜ね。光竜と風竜とは、また珍しいわ。母親が光竜みたいだから、父親の属性で生まれた風竜に魔力を与えられなかったのよ。可哀想かわいそうに……」


 すると彼女は竜の卵にそっと触れ、涙をこぼしながら気になる言葉を言った。

 混ざり竜? 卵を見ただけで母親と父親の属性が分かるのか?

 この人の前世は、何の種族だったんだろうな。

 

「石化を解除しても、この子は育たないわ。魔力を与えられる親がいないのでは、どうしようもない」


 続く義祖母の言葉に、娘が何でもない事のように答える。

 

「あっ、私が出来るみたいです」


「えっ!?」


 それを知らない皆が驚いていた。


「方法は分かりませんが、手を触れると勝手に魔力を吸収しますよ?」


「ちなみに俺達も触れたが、魔力は吸収されなかった」


 賢也けんや君は、娘にしかその方法は出来ないと言う。

 あぁ~、これは少しまずいな。

 何かフォローをした方がよさそうだ。


「まさか……」


 義祖父と義父が、卵と沙良ちゃんを交互に見る。

 いや、それは有り得ないから!


「サラちゃんは、どうなってるんだ?」

   

 義父が娘の能力を疑問視する声を上げ、響に視線を送る。

 彼は無言で首を振り、後は任せたというポーズを見せた。

 俺頼りかよ!


「ふっ、不思議だな~。娘の能力は特殊だから、『手紙の人』が何か特別なものを与えてるかも知れないよ!」


「沙良お姉ちゃんが魔力を与えられるなら、この竜の卵はかえるんだよね?」

 

 響の代わりに答えると、しずくが後を引き継いでくれた。


「多分、大丈夫だと思うよ」


「それじゃあ、竜の赤ちゃんが生まれるの楽しみだね!」


 単純に竜の卵が孵化ふかするのを喜んでいる雫を見て、その場がなごむ。

 良かった、魔力を与えられる理由を追及されなくて……。

 そう思ったのも束の間、食事を終え自宅でのんびりしているところ響が呼びにきた。

 今度は一体何があった?

 義父と部屋に入ると、沙良ちゃんがテーブルの上で紫と赤色のビー玉を転がし遊んでいた。

 一見、何も起きてないように見える。


「娘がまた厄介やっかいな物を作ったようだ。ポーションにヒールを掛けて出来た物らしい。紫の玉は色によって違うが、HP値が増える効果がある。赤い玉も違いがあるがMP値だな。Lvを上げる以外、HPとMP値は増えないんだが……」


 しかし響の言葉を聞いて、額に手をやり天井をあおいだ。

 なんて代物しろものを!? 

 

「紫の方はポーション・ハイポーション・エクスポーション・『MAXポーション』で、赤い方はエーテルとハイエーテルだよ。増える値が違うのは、効能に比例しているからかな?」


 娘は自分が作った物の価値を知らないのか、のほほんとしている。


「で、幾つくらい値が増えるの?」


 どれくらい数値が増えるか興味津々で響に尋ねていた。

 鑑定の結果、ポーションは1、ハイポーションは5、エクスポーションは10、『MAXポーション』は50、エーテルは50、ハイエーテルは100らしい。

 MPだけじゃなくHPも増えるのか?

 巫女姫の能力が予想外すぎて言葉も出ない。


「値が100増えるのはすごいよね~。10個なら1,000増えるって事でしょ?」


「あぁ、だが使用制限が掛かっている。それぞれの玉は、1日1個しか効果がないみたいだ」


「ふ~ん。じゃあ全部使用したらHPが66、MPは150増えるのか……」


「沙良、そんな簡単な問題じゃない。Lvを上げなくても値が増えるんだぞ?」


「別に売る訳じゃないし、雫ちゃんに使ってもらえばいいと思う」


「どうしてお前は、そんな呑気のんきにしてるんだ……」


 心配を通り越し、響はあきれ返っているようだ。

 鑑定結果を疑う訳じゃないが調べた方がいい。


「響、一応試しておこう。これは飲んだらいいのか?」


「体内に入れば効果が出ると思う」


 基礎値が俺より低い響に実験台になってもらおう。


「甘いな……。飴みたいにめてもいいかも知れん」


 ステータスを確認すると、HPが50増えているそうだ。

 雫の基礎値は一番低いから、Lv上げ以外でステータスが増えるのは喜んでいいかもな。


「沙良。分かっていると思うが」


「大丈夫! ちゃんと秘密にするよ? でもパーティーメンバーの底上げになるから、皆には話した方がいいと思う」


「そうだな。HPとMPの値は高い方が安全性が増すか……」


 響は慎重に言葉を返し娘へ念を押している。

 こうして俺達は、また秘密にしなければならない問題が増えたのだった。

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