【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第507話 迷宮都市 地下15階 従魔登録 2&魔法の習得

公開日時: 2023年8月6日(日) 12:05
更新日時: 2023年9月3日(日) 22:59
文字数:2,943

 冒険者ギルド内に入ると、お昼に近い時間のためかギルド内は閑散かんさんとしており、パーティーメンバーと4匹の従魔達が待っていた。


 新しい仲間が増えた事が分かったのか、兄のそばにいたフォレストが尻尾をフリフリさせ駆け寄ってくる。


 3匹の従魔達は顔を合わせ挨拶を交わしている。

 その様子を微笑ましく見ていると、フォレストが足を持ち上げ泰雅たいがの肩をポンポンと2回叩く仕草しぐさをした。


 これから仲間として、よろしくという意味かしら?

 まだ私には念話が使えないので、従魔達が何を話しているかは聞こえないんだよね。


 そこに兄が低い声で私の名前を呼ぶ。


「沙良、従魔がもう1匹増えているように見えるんだが?」


 あぁっ!

 兄に父の騎獣をテイムする話を、すっかり忘れていたよ!


 母がテイムしたボブは、まだLvが低いので2人乗せられないんだよね~。

 顔色を変えた私のピンチに父が気付き、すかさずフォローをしてくれた。


「魔物のテイムにはMPが必要だったんだよな。悪い、母さんのテイムしたボブに2人乗りは無理そうだったんで、もう1匹テイムしてくれるよう沙良に頼んだんだ」


「……分かった。新しい従魔の名前を教えてくれ」


 父の言葉に納得したのか兄は怒らず、増えた従魔の名前を聞いてくる。


泰雅たいがだよ!」


「サラちゃん、相変わらずまんまの名前を付けたんだ……。でもフォレストウサギの源五郎げんごろうよりいいかなぁ」


 旭が2匹のフォレストウサギを見ながら、ぽつりとらす。

 お母さんがテイムした魔物と名前を知り、ショックを受けたんだろう。


 フォレストウサギに、あの名前はどうかと私も思うよ!


「今から従魔登録しに行くね。直ぐに終わると思うから、少し待ってて」


 そうメンバーに声を掛け泰雅たいがを連れて受付嬢の所に行くと、何も言う前から笑顔で「従魔登録の申請ですね」と会議室へ案内された。

 

 部屋で待つ事数分、オリビアさんが疲れた表情で入ってくる。

 

「サラさん。従魔登録は、これで最後ですか?」


「はい、私がテイムした迷宮タイガーが最後です」


 本当は、まだダンジョン内に未登録のハニーもいるけどね。


「そうですか……。では従魔登録の用紙を記入願います。首輪も渡しておきますね」


 生気のないオリビアさんから従魔登録の用紙と首輪を受け取り、必要事項を記入して返却する。


「はい、これで従魔登録完了です。……何で1日に4匹も……」


 遠い目でオリビアさんが呟いた最後の言葉は、聞かなかった事にしよう。

 多分、事務処理が大変なんだろう。

 よく知らないけど……。


 座ったまま立ち上がる素振りもないオリビアさんに、退出する事を伝え部屋を出る。

 彼女は窓の方を向き、なんだか黄昏たそがれているようだった。


 さぁ、これで騎獣もそろった事だし本格的にダンジョン攻略の開始だ。

 冒険者ギルドを出て全員が騎乗すると、シルバーに乗った私が先行する。


 その後ろはアレクに乗った雫ちゃん、源五郎げんごろうに乗った旭のお母さん。

 ボブに乗った母、泰雅たいがに乗った父が続く。

 最後尾はフォレストに乗った兄と旭だ。


 通行人の邪魔にならないよう、縦一列で従魔達が一斉に走り出す。

 初日なので、ゆっくりと走るようシルバーにお願いした。


 マッピングで後方を調べ、雫ちゃんと旭のお母さんが遅れず付いてきているか確認。

 うん、まさにうさぎ跳びだね!

 三半規管が弱い人は酔いそう。


 30分程でダンジョンに到着し、入場料の銀貨1枚(1万円)を払って入り口から階段を降りる。

 転移組はスライムからのみ魔法を受けている状態なので、4属性魔法のボール系しか覚えていない。


 必要ないかも知れないけど、ニードル系とアロー系や4属性魔法以外も習得してほしいので、覚えていない魔法を使用する魔物を探し旭のお母さん、母、父に順番に受けてもらっていく。


 父はスライムから4属性魔法を覚えた時は平然としていたのに、何故なぜか他の属性魔法を習得した事をステータス画面で確認し「まじかっ……こんな簡単に!」と驚いていた。


 うん?

 ちゃんと魔物から魔法を体に受けると、覚えられると言ったはずなんだけどなぁ~。

 なんでそんなにビックリしているんだろう?


 3人が次々と新しい魔法を習得していくのを見て、雫ちゃんがしょんぼりとしてしまった。

 彼女だけは転生者なので、魔術書から魔法を覚える事になる。

 

 残念ながら王都の魔術学校では、4属性魔法のボール系しか魔術書は渡されないらしい。

 これは他の魔法が魔術書に魔法陣として描けないのか、教会が秘匿ひとくしているのか……。


 他に魔法がある事は知られているので、もしかしたら貴族に高額で販売している可能性もありそうだ。

 

 ひとつだけ、雫ちゃんが魔法を覚えられるかも知れないと考えている事がある。

 もし今の雫ちゃんを私が召喚したら、彼女はサリナの姿ではなく旭 雫として呼び出されるのでは?


 でも、これを試すにはリスクが多すぎる。

 私の年齢に合わせて召喚されると、20歳ではなく12歳になってしまう。

 もし旭 雫として召喚されたら、心臓の状態も同じである可能性が高い。

 それにLvを10上げる必要があるから、直ぐには出来ないし……。


 まぁくまで私の想像なんだけどね。

 

 魔法を習得しながら進んだので、地下15階に行くまで思ったより時間が掛かってしまう。

 安全地帯に到着する頃には、お昼を大分過ぎていた。


 ダンクさんとアマンダさんのパーティーは、食事を終えて午後からの攻略に行っているらしく不在だった。

 2パーティーのマジックテントの前に『バーベキュー台』が置いてあったので、直ぐに設置場所が分かる。


 私達もそばにマジックテントを設置し、ホームの自宅に戻って昼食にしよう。

 従魔が増えたから、泰雅たいが用にマジックテントを1つ余分に出しておいた。


 7人パーティーなのに、6人用のマジックテント3個と2人用のマジックテント1個が並んでいる。

 少し多い気もするけど、従魔が6匹いるから問題ないだろう。


 全員で自宅に戻り、母と一緒に昼食の準備を始めた。

 7人分のお弁当を毎日作るのは大変なので、昼食は自宅で料理する事にしたのだ。


 母と2人なら時間もそう掛からない。

 兄の住んでいたマンションは、台所が広くて使いやすいしね。


 2人で料理をしている所に、旭のお母さんが「私もお手伝いするわ」と言って席を立ち上がろうとする。

 隣にいた旭と雫ちゃんが、「お母さんは何もしないでいいよ!」とあわてて止めに入った。

 

 私と母も「大丈夫ですから、お茶でもれて下さい」とフォローしておいた。


 いや、本当お手伝いは結構です……。


 30分程で昼食が出来上がり全員で食事前の挨拶を済ませ食べ始めると、雫ちゃんとお母さんが感激していた。


「ダンジョン攻略中に、美味しいご飯が食べられるなんて夢みたい! もうあの塩味のスープとパサパサのパンとはおさらばよ!」


 あぁ、ダンジョン料理かぁ~。

 私達は食事改善をして結構好きな料理を食べていたけど、日本の調味料がない雫ちゃん達は冒険者が食べるメニューだったんだろうな。


 夕食に驚くかもね。


「夜はお風呂に入れて、自宅のベッドで眠れるんでしょう? 沙良ちゃんと一緒のパーティーを組めて良かったわ~」


 旭のお母さんが手放しでめてくれる。

 えぇ私達は、ぬるいダンジョン攻略なんですよ。


 母は実感がかないのか不思議そうにしていた。

 父はうんうんとうなずいているけど……。


 ダンジョンを攻略した事もないのに、辛さが分かるのかしら?

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