【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第277話 迷宮都市 服の新調 2

公開日時: 2023年3月11日(土) 13:16
更新日時: 2025年1月22日(水) 13:13
文字数:2,113

「お兄ちゃん。サヨさんの旦那さんだから、私達のお祖父さんになるんだよね?」


「血のつながりは無いが、そうなるだろうな」

 

「お祖父さんって呼べなくて残念だね。本当のお祖父さんは、私が小さい頃に亡くなってるから覚えてないの」


「沙良はまだ3歳だったからなぁ、俺は5歳だったから葬式に出た事も何となく覚えてるよ」


「私、お祖父さんとお祖母さんがお父さんの方しかいなかったから、もらえるお年玉の人数が少なくて悲しかったんだよね~」


「沙良ちゃん、いい話が台無しだよ!」


「え~だって、子供の頃にもらえるお年玉の人数は結構重要だよ?」


 兄は溜息を吐くと、何やら旭に耳打ちした。

 旭はそれをくすぐったそうに聞いて笑っている。


 やっぱり怪しい……。


 何でここで内緒話するの?

 2人の世界を作られると寂しいじゃないの。


 ちぇっ、恋人ごっこは2人きりの時にやってよね!

 

 しばらく待っていると老紳士とサヨさんが部屋に入ってきた。

 

 サヨさんは私の対面に座り、兄達は老紳士と部屋から出ていく。


「サラさん、昨日は本当に楽しかったわ。今日この後、予定はあるかしら? もし大丈夫なら、今夜是非ぜひ家で夕食をご馳走ちそうしたいの」


「予定はありませんが、突然家にお邪魔しても旦那さんは怒りませんか?」


「怒る事なんてありませんよ。食事を作るのは私なんですから。それにサラさんには、息子の店も主人の店も大変お世話になっているんですもの。ここだけの話、シルバーウルフのマントだけでも相当もうかったらしいですよ。今年も沢山卸して頂いたとか……。それに耳当ての仕様も無料で良いと言ってくれたそうで、主人が恐縮きょうしゅくしてましたわ。王都の長男の店は、ダンジョン産の果物が入荷する度に即完売するそうです」


「それはお互い様です。ダンジョン産の果物は毎日兄が収穫しているので、万単位でアイテムBOXに収納されてるんですよ」


「まぁ、私の孫達はとても優秀な冒険者なのね」


「一応これでも、迷宮都市でのかせがしらですから!」


 められて嬉しくなりサヨさんに自慢じまんする。


「それでは、もう老後は安泰あんたいね」


「ええ、宵越よいごしのお金は使いきれない程ありますよ」 


「まぁまぁ、堅実性けんじつせいがあってたのもしい事。両親の教育のお陰かしら? 美佐子みさこは、どこかのんびりとした娘だったんですけどね~」


「あっ、それは当たってます!」


 その後、サヨさんは母の子供の頃の話を色々話してくれた。

 私も知らない話が沢山あって、大変楽しく聞かせてもらった。


 当り前の事だけど、母にも子供の頃があったんだよね。

 私は大人になった母の姿しか知らなかったので、話を聞く事が出来て良かったと思う。


 サヨさんも、もうすぐ会える娘の話をする事が出来て楽しそうだった。

 きっと旦那さんにも、日本で残してきた家族の事は言えなかったんだろうな。 


 ずっと自分1人、胸の中にしまっていた大切な思い出に違いない。


 ひとしきり昔話に花を咲かせた後、公爵邸に行く時の勝負服をサヨさんと決めていった。


 貴族が着るようなヒラヒラしたドレスではなく、今回は事実を伝えるために行くのでシンプルでフォーマルな衣装にする。

 一応日本の洋服が掲載されているブランドの雑誌を数冊持ってきたので、デザインを参考にしながらサヨさんがデッサンしてくれた。

 

 流石さすがに老舗高級服店の妻だけあって、デッサンはお手の物だった。

 日本でも、服飾関係の仕事をしていたんだって。


 こちらの世界で旦那さんを見付けられて本当に良かったなぁ~。

 その後2着の服も決まる頃、兄達が老紳士と戻ってきた。

 

 2人共、満足そうな表情をしているので希望通りの服を注文する事が出来たらしい。


「私達、今は地下14階を攻略しているんですが、迷宮タイガーの皮は必要ですか?」

 

 例の勉強・・をしてもらうために老紳士に提案する。

 シルバーウルフより迷宮タイガーの皮の方が価値があるだろう。


 私の話を聞いた老紳士が、身を乗り出して聞き返してきた。 


「迷宮タイガーの皮ですか? それは傷の無い物でしょうか?」 


「ええ勿論もちろん、傷なんてひとつもありませんよ」


是非ぜひ、当店に卸して頂きたい! 出来れば10枚程あると嬉しいのですが……」


 いつも穏やかな老紳士が、かなり積極的な態度を見せたので少し驚いてしまう。

 隣のサヨさんが、とがめるように旦那さんの手を引っ張っていた。


「はい、10枚ですね。では来週持ってきます」


「ありがとうございます。今回のお仕立て代は勉強させて頂きます」


 やったね! 

 安く購入出来そう。


 全てが手縫いのこの世界では、仕立て代だけでも相当かかる。

 私達は、このお店で一度も仕立て代を払った事はないけど……。


 サヨさんが何て事ないように老紳士に話を切り出す。


「昨日のお礼を兼ねて、夕食にサラさん達を招待したの。問題あるかしら?」


 サヨさん、それは疑問形の決定通告ですよね?

 妻の「問題あるかしら?」の言葉に、旦那さんは絶対に反対をしては駄目なのだ。


 お母さんと同じ口調だったので、きっと母はお祖母さんから教わったのだろう。


 反対しない事が夫婦円満の秘訣ひけつです。


「あっ……あぁ。問題ないよ」

 

 老紳士は、若干じゃっかん戸惑とまどいを見せながらもうなずく。

 

 妻の言う事を素直に聞く老紳士を見て、どこの夫婦も長く続くのは奥さんがしっかりと旦那さんの手綱を握っている家庭なんだなとぼんやりと思った。

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