【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第571話 迷宮都市 セイさんパーティー加入の相談 1

公開日時: 2023年10月9日(月) 12:05
更新日時: 2024年1月30日(火) 22:25
文字数:1,980

 目の前でトッピングをこれでもかと追加し、嬉しそうにカレーを食べているセイさんがいる。

 唐揚げ・エビフライ・豚カツ・チーズ・目玉焼きと、最早カレーが見えない状態だ。

 それにコーンサラダとコーラを飲みながら、美味しいと言っていた。

 私は、ご飯物と甘いジュースは一緒にしないけどね。

 それにしても何故なぜカレー……。

 父におごってもらうから、遠慮したのかしら?

 それとも、単純にずっと食べたかったのかは分からない。


 豪華な昼食を期待していた私は、がっかりする。

 こうもっと他に、お高い料理が沢山ホーム内では食べられますよ?

 残念だった昼食を終え、これからセイさんのパーティー加入をどう説明するか相談するためにホテルのカフェまで移転。

 セイさんをホーム内で囲っている状態だから、兄達に見付からないよう車での移動は控えた。

 平日の夜は問題ないけど、土日はホテル内から出ないよう注意してもらう必要がある。

 そういえば兄達が通っているジムは、どのホテルなんだろう?


 それぞれ飲み物を注文し、父が話をしようとした瞬間。

 ホテルのロビーに兄達がやってきた。

 これはまずい!

 私は、あわてて目の前のセイさんをアイテムBOXへ収納した。

 人間・・をアイテムBOXに収納するのは初めてだけど、魔物は問題なく生きていたから大丈夫だろう。

 セイさんの姿は、兄達からカフェの観葉植物で見えない位置だったと思う。

 私達に気付いたのか、兄が声を掛けてきた。


「沙良。父さんと一緒にホテルで昼食を食べたのか?」


「うん、たまにはリッチなランチでもと思って」


「節約好きな、お前にしては珍しいな。俺達は今からジムへいってくる。それにしても、何で飲み物が3つあるんだ?」


 ああぁ~!

 セイさんを隠すのに気を取られ、注文した飲み物を収納するのを忘れていた!

 そして相変わらず、兄は目敏めざとい……。


「お父さんが、まだ電子メニューの使い方に不慣れで2個注文しちゃったの」


「画面を2回押したのか。コーヒーが冷めたら勿体もったいないし、俺が飲もう」

 

 そう言い、兄はセイさんが座っていた席に着いてしまう。

 当然、旭も隣の席に座り自分の分を注文した。

 私は内心、気が気じゃない。

 早くコーヒーを飲み、とっととこの場から去ってほしい気持ちで一杯だ。

 なのに、旭はケーキセットを頼んでしまった。


「このホテルは結構いい店が入っているが、何を食べたんだ?」


 兄に昼食のメニューを聞かれ、カレーだと答える訳にもいかず急いでホテル内の店を調べ答えたのに、


「フレンチのランチにしたよ」


「イタリアンだ」


 父も返事をしたため別のお店になってしまった。


「……一緒にきて、別々の店へ入ったのか?」


 兄がいぶかしげに見つめてくる。


「食べたい物が、お互い違っていたからね!」


 旭~、早くケーキを食べて~。

 隠し事が下手な私と父じゃ、その内ボロが出そうだよ!

 ここは話題転換しよう!


「お兄ちゃん。来週の土曜日は、お母さんとサヨさんとスーパー銭湯へいく心算つもりだけど一緒にくる?」


「いや……母さんも久し振りにサヨさんとゆっくりしたいだろうから、俺達は遠慮するよ」


「そう? じゃあ私達だけでいってくるね。お父さんは、セ……せっかくだから〇ーレーを運転したらいいんじゃないかな?」


「そうだな、……少し慣らし運転でもしてみるよ」


 もうこれ以上、何も話さない方がいい気がしてきた。


「沙良ちゃん。今日の夕食は、海鮮カレーが食べたいなぁ。お昼に迷って、結局ラーメンにしたんだよね~」


 悪気はないんだろうけど、旭がカレー・・・のリクエストをする。

 2食続けてカレーかぁ……。


「了解! 海老と帆立を入れるね」


 ダンジョンのオマール海老と帆立を活用しよう。


「それは美味しそうだな。母さんと沙良の家へ食べにいこうか」


 父よ、それだと食材の秘密がバレて使えなくなるじゃんか。


「作ったら、実家に持っていくよ! お兄ちゃん達も、今日は実家で夕食だからね~」


「あぁ、分かった。じゃあ、ジムが終わったら実家に寄る」


 ようやく旭がケーキを食べ終え、兄達は席を立った。

 2人がいなくなった所で、私は大きな息を吐く。


「あ~、びっくりした~。同じホテルだとは考えもしなかったよ。セイさんを思わずアイテムBOXに入れちゃった!」


「中に入っているひじりは大丈夫なのか?」


「た……多分? このホテルは、お兄ちゃん達が利用しているから場所を変えよう」


 その後――。

 セイさんの部屋でアイテムBOXから出すと、彼は突然場所が変わっていたのに目を白黒させ驚いた様子だった。

 アイテムBOX内の記憶は、時間停止しているため本人にないらしい。

 兄達がホテルのジムを利用する件をセイさんへ伝え、市内にある別のホテルへと移転する。


 先程のような事態はもうないだろうけど、安心して話をするためセイさんの部屋で相談しよう。

 ルームサービスの代わりなのか、部屋にも電子メニューがあった。

 飲めなかったコーヒーをセイさんが注文する。

 そうしてやっと、父が話を切り出した。

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