【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第295話 迷宮都市 『製麺店』での夕食会 2

公開日時: 2023年3月20日(月) 12:09
文字数:2,307

 私は迷宮ウナギを大振りにカットして、遠火でじっくりと火を通す。

 備長炭に油が落ちてパチパチとぜる音がする。


 火が通ったら、『鰻のタレ』にくぐらせ表面を焼くと周囲に醤油の香ばしい匂いが充満していった。

 鰻が焼きあがる頃に、兄達が酒を入れ替えて店から戻ってくる。


 全員がそろったので、私から一言挨拶をしよう。


「皆さん、製麺店を開店してから半年が経ちました。お陰様で店の売り上げも順調に上がっています。今日は地下14階で狩った迷宮ウナギを、精が付くように私がご馳走ちそうします! 『鰻の蒲焼』と『肝焼き』を沢山食べて下さいね~」


「オーナー、ありがとうございます! 冒険者時代でも見た事のない、高価な食材を食べさせてもらえるなんて幸せです!」

 

 従業員の1人が感激した様子でお礼を言ってくれた。

 うちは福利厚生に力を入れているので、そう言ってくれると嬉しい。


「とても美味しいですよ~。じゃあ皆さん、頂きます!」


 私の言葉に合わせ全員が「頂きます」と言った途端とたん、『鰻の蒲焼』にはしをつけて食べ出した。  


 兄と旭は取りえず最初の一杯とばかりに、生ビールを皆で飲もうとしていたので呆気あっけに取られている。


 もしもし?

 皆さん、男性機能に問題が?


 乾杯もせず、お酒に口をつける事なく『鰻の蒲焼』を食べ出したのでビックリした。

 すごい勢いでなくなっていくので、急いで追加を焼く準備を始める。

 

「オーナー! めちゃくちゃ旨いです! これが迷宮ウナギかぁ~!」

 

 従業員の皆が幸せそうな顔で食べてる様子が見られ、『製麺店』を開店して良かったと思う。

 まぁ製麺店は全員が男性だから、多分迷宮ウナギの効能を知っているんだろうなぁ~。

  

 私はダンクさんから聞いたけど、若い兄達2人には不要だと思って教えていない。

 具体的にどんな効果があるのかは、体験しないと分からないだろう。


 男性機能の回復に効果があるらしいけれど、女性にも似たような効果はあるのかな?


 ホルモンバランスが良くなるとか……。


 最初に渡した皿の上から料理がなくなりようやく酒を飲みだした皆に、旭と兄が秘蔵の酒だと言い冷えた生ビールをいで回っていた。


 異世界の常温エールとは、品質が段違いのはず

 そして冷たいビールを飲んだ事は初めてだったのだろう。

 口を付けたビールの味と温度に、大変驚いているみたいだ。


「お兄ちゃん、なんだこの旨い酒は!?」


「おいっ、エールが冷えてるぞ!!」


「かぁ~、今まで飲んだ酒の中で一番旨いじゃね~か!」


「おいっ、そんなに一気に飲むなよ! 秘蔵の酒なんだからな!」


 口々に飲んだ感想を言い合っている。


 兄達は、日本のビールの美味しさを知ってもらい満足していた。

 技術力に差がありすぎるから、エールと生ビールでは比較にならないと思うけどね。


 お酒は販売する訳じゃないし、うちの従業員限定で飲ませているだけなので問題ないだろう。


 第2弾が焼きあがったので皿に盛って提供する。

 その頃には料理担当者が『バーベキュー台』で野菜や各種の肉を焼き始めていたので、私は席に座って落ち着いて食べる事が出来た。


 コカトリスキングとねぎを交互に挟んだねぎまは、塩胡椒のみでも充分美味しい。

 焼いたねぎは最高だ!

 

 私も温かい内に『鰻の蒲焼』を食べよう。

 身を厚く切ってあるので食べごたえがある。


 あ~でもやっぱり、ご飯も一緒に食べたいなぁ。

 パンには合わないんだよね~。

 

 兄達は日本酒を飲みながら『肝焼き』をつまんでいた。

 従業員の皆は料理担当者が焼いた物から、取り皿に『焼き肉のタレ』を入れ好きに食べている。 


 人気があるのは、ハイオーク肉のねぎまとミノタウロスの肉や丸ごと焼いたニンニクらしい。


 元冒険者の従業員達は年齢が高いので、知っている人もいるかもと私は日本人のセイさんについて聞いてみる事にした。


「S級冒険者のセイという方を知っていますか? 昔、迷宮都市のダンジョンを攻略していたらしいんですけど……」


「あぁ、20年くらい前かな? 確かジョンのクランに入っていたやつだ」


 知ってる人がいた!

 ダンクさんの父親のクランメンバーだったらしい。


「あいつが20年も石化してたと言って、挨拶にきた時は腰を抜かしそうになったわ」


 うん?

 ジョンさんの元のクランメンバーが従業員の中にいるの?


「本当に幽霊じゃないかと思って驚いたよ」


 とバスクさんが言う。


「え~と、ジョンさんのクランに入っていた人はこの中に何人いるんですか?」


「3人だ。クランリーダーが帰還しなかったから、自動的に解散になったけどなぁ」


 世間は狭いと言うけれど、3人もジョンさんのクランに入っていたなんて知らなかった。


「で、セイの事を聞きたいのか? あいつは今やS級だ。昔から火魔法が得意なやつだったな」


「そうそう、背が低くて童顔だったからジョンのクラン内では可愛がられてたよ。性格も素直で大人しかったし、男性に人気があったな」


 最後の情報は、聞かなかった事にした方がいいかしら?


 黒目黒髪で背が低く童顔とくれば、これはもう間違いなく日本人のセイさんだ。


 ジョンさんのクランに入って地下14階の攻略をしていたのなら、冒険者としての活動は上手くいっていたのだろう。


 ところがジョンさんのパーティーが全員石化して未帰還となったので、迷宮都市を離れたのかも知れない。

 

 直接セイさんの事を知っている人に話が聞けて良かったな。

 その後は皆が楽しく食べて飲んで、例の・・子供に聞かせられない歌を歌い出す。

 

 え~と、飲むと歌う定番の曲なんですかね?

 歌詞の内容が赤裸々せきららすぎるんですけど……。


 これは『肉うどん店』と一緒の懇親会こんしんかいでは、絶対にお酒は飲ませないでおこう。

 子供達の教育に悪すぎる。


 2時間後、私達はホームの自宅に戻った。

 明日も予定が沢山あるから早く寝よう。


 おやすみなさい……。

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