迷宮都市ダンジョン地下15階のテント内からホームに戻り、休憩を済ませたら再び摩天楼のダンジョン31階へ移動。
茜が99階の魔物を倒したいと言い、私達だけ内緒で99階へ。
妹が魔物を倒している間、私は妖精さんのお供え物を作る事にした。
犯人を確保してくれたお礼は、何にしようかな?
木のある所へ移動出来る妖精さんは、本当に神出鬼没だ。
王都にもいたよね~。
子供達の誘拐騒ぎの時も助けてくれたっけ……。
可愛らしい翅の生えた姿ではなく、成人男性とは意外だったけど。
いつも助けてくれる妖精さんには感謝しかない。
男性ならボリュームのあるメニューが良いかと、今回は大きなバーガーセットに決める。
中に挟むハンバーグを200g使用し、特大サイズのハンバーガーを作った。
みじん切りした玉ねぎにチーズ、味付けはケチャップの王道。
他にポテトとナゲットを大量に揚げる。
ナゲットは市販の物でも充分美味しい。
これも子供のいる家庭の冷蔵庫に常備されていたから大量にある。
兄達は唐揚げ派だったので使う機会がなかったのだ。
取り敢えず10セット作りアイテムBOXに収納しておく。
妖精さんの数は不明だけど、毎回手紙の筆跡が違うから結構多くいるんじゃないかしら?
3時間後、満足そうな顔をした茜が戻ってきた。
31階へ移動し兄達の帰りを待ち、シュウゲンさんをホームの実家に送ったら迷宮都市ダンジョン15階の安全地帯へ移転する。
テント前には、怪我をしたダンクさんのパーティーが運ばれていた。
雫ちゃんのお母さんが治療をしている。
怪我人が多く、兄と旭も急いで対応に駆け付けた。
ダンクさんは意識がないのか目を閉じている。
私は比較的軽傷なリリーさんに、何があったのか話を聞いてみた。
話を聞きながら、『MAXポーション』を傷口に掛け治療する。
「突然、見た事のない冒険者達に襲われたんです。相手は12人だったから、人数が多くマジックバッグを盗られてしまい、治療出来ずに安全地帯へ戻ってきました。リーダーは私達を逃がそうと最後尾に付いていたんですが、毒矢を受けて意識のない状態に……」
魔物じゃなく相手は冒険者だったのか……。
リリーさんがダンクさんを心配そうに見ている。
それを聞いた私は、直ぐに『毒消しポーション』を取り出した。
でも意識のない人間に飲ませるには口移しじゃないと駄目か。
これは治療行為だからと意を決し『毒消しポーション』の蓋を開けた所で、父が私の手から瓶を引ったくり口に含んだ。
そしてそのまま、ダンクさんに口付ける。
あぁ、なんだかとても残念な絵面だ。
兄と旭なら見てもいいのに……。
体格のよい男性2人のキスシーンには価値がない。
意識を取り戻したダンクさんが、唇を塞がれた状態で相手の顔を見るなり勢いよく跳ね起きた。
「あ~出来れば治療のお礼は、お金だけにしてほしい」
と少々見当違いな事を言っている。
父はかけられた言葉に怪訝な顔をし、少し経って意味に気付いたのか渋い表情になった。
「ダンクさん。父に、お礼は必要ありません」
私が苦笑しながらそう伝えると、安心したのかほっとした顔をする。
父にキスされたとでも思ったんだろうか? ポーションを口移しで飲ませただけですよ?
それにしても今回の件は、かなり気になる。
ダンクさんもダンジョン内で冒険者が襲ってくるとは、思っていなかっただろう。
パーティー全員の治療が済み、ダンクさんから頭を下げられた。
「悪い、マジックバッグを盗られたから手元に金がないんだ。治療代は地上へ帰還した後でいいか?」
「ええ、いつでも大丈夫ですよ。それより大変でしたね。犯人達を捕まえないと!」
「迷宮都市に他領の人間が来ていたのは知っていたが、直接襲ってくるとはな。やるなら、『MAXポーション』の転売くらいかと思ってたよ。サラちゃん達も気をつけるんだ」
「はい、うちは大人数パーティーだから問題ありません。襲ってきたら返り討ちにしてやります」
多分……好戦的な茜が先陣を切り、続いて武闘派組が容赦なく叩きのめすだろう。
相手が悪いとしかいいようがない。
「まぁ、従魔が15匹もいるパーティーを襲おうとは思わないだろうがな」
「ダンク、クラン内に通達を出すよ。同じ冒険者を襲うなんて、どこから来たやつらだろうね。早く捕まえないと、落ち落ちダンジョン攻略も出来やしない。ギルドに報告も入れた方がいいね」
話を聞いていたアマンダさんが、険しい表情で口を出す。
「あぁ、顔はバッチリ覚えている。明日、帰還したらギルドに人相書きを作成してもらう心算だ」
マジックバッグがないとダンジョン攻略は難しい。
ダンクさんのパーティーは、予定を早め明日地上に帰還するようだ。
一度、テント内からホームで休憩を済ませ安全地帯へ戻ってくる。
マジックテント以外、何もなくなってしまったダンクさんのパーティーに、水・食料・ポーション類を入れたマジックバッグを渡してあげた。
「サラちゃん、悪いな助かるよ。マジックバッグを取り返したら、ちゃんとお礼をするから待っててくれ」
「ダンクさん、中身はもうないかも知れませんよ?」
私が懸念している事を伝えると、ダンクさんはニヤリと笑う。
「サラちゃん達と階層の移動を続けたお陰で、かなり稼いだから使用者登録付きのマジックバッグを購入したんだ。今頃、犯人達は盗んだマジックバッグから何も取り出せず悔しがっているだろうさ。使用者登録の解除は、ちゃんとした理由がない限り頼めないしな。既に使用者登録してあるマジックバッグは売れないから、犯人にしてみれば只の荷物だ。その辺に捨てているかも知れないが、魔法士が探せば見付かるから安心していい」
へぇ~、自分達のマジックバッグを探せるんだ。
魔力を辿ったりするのかな?
魔道具屋の店主から、マジックバッグの容量は魔法士なら気付くと教えてもらった覚えがある。
見た目に違いがないマジックバッグの容量を、どうやって当てるのか不思議だったけど……。
私は大きさ意外、判断出来なかったなぁ。
ショックを受けているリリーさんは食事を作れる状態じゃないだろうと思い、今日作ったチーズハンバーガーセットをダンクさんのパーティーにあげた。
減ってしまった分は、また明日作ればいい。
私達のメニューは『ミートパスタ』・『シチュー』・『チーズナン』。
アマンダさんパーティーは『お好み焼き』とスープのようだ。
皆で夕食を食べながら、HP/MPの低い雫ちゃんが心配になった。
樹おじさんとお母さんの3人で攻略をしているから、ダンクさんを襲った犯人に狙われる可能性がある。
付与魔石を渡してあるし、ドレインの魔法とアイテムBOXを使用出来る2人がいれば、そうそう危険な状態にならないと思うけど……。
ダンクさんとアマンダさんにシャインマスカットを2房渡し、甘い物を食べて気分を落ち着けてもらおう。
夕食後、劇の練習に連行された旭を兄が笑顔で送り出し、私達はその様子を見て楽しんだ。
旭はアドリブとか出来そうにない。
劇の当日、ダンクさんが暴走したら会話は噛みあうだろうか?
健気な人魚姫を演じる旭を見て茜が大笑いしている。
この2人が仲良くなる日はくるかしら?
遅くまで続いた練習から帰ってきた旭が、げっそりしている。
子供達のために頑張ってね。
テントからホームの自宅へ戻り、竜の卵に魔力を与えたら1日は終了。
茜に、お姫様抱っこされた記憶を最後に眠りに就いた。
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