【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第771話 迷宮都市 地下15階 シュウゲンさんとの会話

公開日時: 2024年4月29日(月) 12:05
更新日時: 2024年8月23日(金) 23:20
文字数:2,200

 昨日のお礼も兼ねて、2パーティーの夕食は私が作ろう。

 メニューを聞いたダンクさんとアマンダさんが、嬉しそうにしていた。

 リリーさんとケンさんへ、ミノタウロスの肉を薄切りにするようお願いして『すき焼き』の準備を始める。

 白菜とネギを切り、かさ増しにじゃが芋を追加。

 『すき焼きのタレ』を渡したら、後は各パーティーで鍋を囲み好きに食べてもらう。


 鍋奉行ぶぎょうをした兄が肉を取り分け、私のパーティーは溶き卵に潜らせて、お肉を味わう。

 いつ食べても、ミノタウロスの肉は美味しいなぁ。

 ダンクさんのパーティーは、相変わらずリーダーそっちのけで肉の取り合いをしていた。

 アマンダさんのパーティーとは本当に対照的だ。


 肉好きな旭もしずくちゃんも、次々と口に運んでいる。

 それを見たあかねは、兄が食べられるようにと鍋奉行を交代。

 私は締め用の冷凍うどんをで、2パーティーの鍋に入れた。

 食事の後は、口の中をさっぱりさせるためにシャインマスカットを出す。

 美味しい食事とデザートで、お腹を満たしたら情報収集だ。


「アマンダさん。別大陸に行くなら、どんな方法がありますか?」


 ダンクさんより、貴族令嬢のアマンダさんの方が知っていると思い声を掛ける。


「そうだね、海を越える必要があるから船が一般的だろう。ただ、海には魔物も多いから安全とはいかない」


「金を惜しまなければ、飛竜を調達した方が速いと思うぞ?」


 話を聞いていたかなで伯父さんが口を挟む。


「調教された飛竜に乗せてもらうには、かなり金を積む必要があるだろうけどね」


「そんなに高いんですか?」


「1日で金貨1枚(100万円)は掛かると思った方がいいよ」


 うわっ、高い!

 別大陸なら何日も払うお金がないと無理そう。


「他の方法はないんですか? 国同士をつなぐ魔法陣とか……」


「あ~それは……あったら便利だとは思う」


 おや? アマンダさんの表情が変わった。

 なんだか彼女らしくなく、はっきりしない言い方だ。


「そういうのは国に秘匿ひとくされているから、王族でもなければ使用出来ないだろうな」


 奏伯父さんはそう言い、否定しなかった。

 魔法陣があるんだ……。

 秘匿されているなら、これ以上聞き出さない方がいいかも?

 私は追及するのを止めメンバーとホームへ帰った。

 一度自宅に戻り、兄へ母の様子を茜と見に行くと告げる。

 本当は、シュウゲンさんから話を聞く予定だけどね。


「あぁ、分かった。あまり遅くなるなよ」


「うん。お父さんがいなくて心配だけど、シュウゲンさんと奏伯父さんがいるから大丈夫だと思う。顔を見て安心したいだけだから」


 茜と実家へ移転すると、シュウゲンさんはリビングにいた。


「おや? こんな時間にどうしたんじゃ」


 私と茜が来たのに気付いた祖父が声を掛ける。


「少し話があって……。ドワーフの国は北大陸にありますよね? シュウゲンさんは、カルドサリ王国にどうやって来たんですか?」


「そうだの……。ダンジョンから他国へ繋がる魔法陣がある。これは100階以上を超える大型ダンジョンにしかないが、ある条件を達成すると利用可能になるんじゃよ」


 やっぱり、他のダンジョンにも移転可能な魔法陣があるらしい。


「それは、例えばボスのような魔物を倒したりとかですか?」


「ふむ、まぁ似たようなものだ。儂は、ドワーフの国にあるダンジョンから直接カルドサリ王国へ来たでな。特級冒険者は、ダンジョンの魔法陣で移転可能な者だけがなれる。守秘義務もあるが、時空魔法を持つ沙良ちゃんに内緒にしたところで意味はなかろう。アシュカナ帝国へ行った父親が心配なのか?」


「ええ、それもありますが……。ちなみにドワーフの王は、どんな方ですか?」


「……国一番の鍛冶師じゃの。世襲制ではなく、火竜が認めた者が王になる」


「ではドワーフの国は、ケスラーの民達をイフリートが守っていたように、火竜が守護しているんですね」


「あぁ、沙良ちゃんには見えておったか」


 昨日の襲撃時、イフリートが顕現けんげんしたのを冒険者達は知らない。

 兄達が何も言わないのは、見えなかったからだろう。

 リーシャはエルフの血を引いているから、精霊の姿が見えたのかしら?

 何を話しているか言葉は分からなかったけど……。


「ドワーフ王は火の精霊王から加護を貰っておる。そろそろ、代替わりしていい頃だがの。まだ奉納の儀で認められた者がおらんみたいでな、ずっと変わらぬままじゃ」


 う~ん。

 ここまで聞いても、自分が王だと話さないのは何か理由がありそうだ。

 探し出した妻との身分差を考えての事だろうか?

 ドワーフ王は鍛冶の腕が良い人物との認識で、国のまつりごとには関わってなさそうだけど……。


「鍛冶の腕なら、シュウゲンさんが王になれそうですね!」


「そうか、嬉しい事を言ってくれるの」


 にこにこと笑うシュウゲンさんは、ボロを出しそうにない。

 自分が王だと忘れてしまってるんじゃないかしらね。


「ダンジョンから行ける魔法陣の移転先は、どれくらいあるんですか?」


「見つけたダンジョンの階層により変化するようだが、儂が移動出来るのは20ヶ国ある」


「南大陸も含まれてますか?」


「いや、中央大陸と北大陸に西大陸だけだの」


「そうですか、教えて下さりありがとうございます」

 

 シュウゲンさんにお礼を伝え自宅へ帰る。

 私達が発見した隠し部屋にある移転陣は、移動先が100あった。

 これは、ダンジョンマスターが召喚した大型魔物を倒した特典だろうか?

 明日は111階層から調べよう。

 そう思いながら竜の卵へ魔力を与え直ぐ眠りにいた。

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