【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第798話 迷宮都市 魔族との契約 4

公開日時: 2024年5月26日(日) 12:49
更新日時: 2024年9月17日(火) 14:52
文字数:2,215

 しずくちゃんは、ルシファーに角を触らせてもらっている。

 その際、尻尾はないのかと残念そうにしていた。

 悪魔みたいな種族だと言ったから、尻尾もあると思ったんだろう。

 旭が剣での勝負をいどみ、あっさり勝つとルシファーは意気消沈しうずくまってしまった。

 童顔で子供だと思った旭に負けたのが、余程悔しかったのか……。

 毎週、ガーグ老の部下達に鍛えられているから兄よりも強いんだけどね。


「儂が鍛えてやろう」


 シュウゲンさんが、庭を100周しろと走らせる。

 150坪ある庭を100週させられたルシファーは、息も絶え絶えだ。

 その後、かなで伯父さんから懸垂けんすい100回を課せられる。

 器具がないため急遽きゅうきょ、私が鉄棒に似た物を作製した。

 それを見た早崎さんが、逆上がり100回を注文。

 仕方なく高さを低くした物を再び作製する。

 これは子供達も遊べるから、そのまま残しておこう。


 いつきおじさんと戻ってきた父が、縄跳び100回を指示。

 不器用なルシファーは、何度も縄に引っ掛かり連続で100回続けるのに苦戦していた。

 可哀想かわいそうに思ったのか樹おじさんは、うさぎ跳び10回を願う。

 しかし続く茜の指示は、ほふく前進を10往復……。

 セイさんの願いは腹筋100回。

 最後に兄がサッカーボールを出し、ゴールキーパーをさせていた。

 勢い良く飛んでくるボールをキャッチするのは、慣れていないと怖いだろう。

 顔面を蒼白にさせながらルシファーが震えている。

 虐めじゃないよね?


 メンバー全員の願いを聞いた彼は満身創痍まんしんそういだったけど、まだガーグ老達もいる。

 早崎さんと旭を残してメンバーをホームへ送り、私は茜と一緒にルシファーをガーグ老の工房へ届け、女官長達に契約を済ませたら異界へ帰すよう伝えた。

 家に帰ると、旭が魔物を出し早崎さんのLv上げをしているところだった。

 私はその間、エーテルとハイエーテルを飴にしておこう。

 茜は早崎さんの動きを見ながら指示を飛ばしている。

 人間とは違い、魔物は種族により特性があるから教えているのかな?

 2時間後、早崎さんがLv30になったのを確認してホームへ戻る。

 夕食はアイテムBOX内のピザで済ませ、竜の卵に魔力を与え就寝。


 翌日、月曜日。

 今週はダンジョン攻略を中止して、ルシファーの爵位を上げよう。

 異世界の家には子供達が来るので、メンバーを連れガーグ老の工房へ向かう。

 門を開けると、顔をポーションまみれにしたガーグ老達と女官長達の姿が見える。

 朝から顔に怪我をするような作業をしていたんだろうか?

 樹おじさんの姿を見付けたポチとタマが飛んでくる。

 2匹は両肩に止まり、顔を頬に寄せていた。

 私に向かってガルちゃん達が駆け寄り、尻尾を振り出迎えてくれる。

 よしよしと可愛い従魔達の頭をでてガーグ老に挨拶した。


「ガーグ老、おはようございます。工房の庭を、お借りしてもいいですか?」


「おはよう、サラ……ちゃん。今日はダンジョンを攻略せんのか?」


「はい。青龍の巫女が気になるから、早くルシファーを強化したくて……」


「そうか、儂達も協力しよう」


「よろしくお願いします」


 ルシファーの姿はないため、昨日異界へ帰ったのだろう。

 召喚陣を庭に描き呪文を唱える。


「魔族召喚!」


 召喚陣の上に出現したルシファーは、辺りを見渡し樹おじさんを探す。

 駆け出そうとした瞬間、ガーグ老に転ばされていた。

 魅惑魔法は、まだ効果が切れないらしい。

 ポチの足に1週間ダンジョン攻略を中止する旨を書いた羊皮紙をくくり付け、アマンダさんのもとへ届けるようお願いする。

 白ふくろうは「ホー」と一声鳴き、飛び立っていった。

 シルバーに頼んでもいいけど、Lv500あるガーグ老の従魔の方が速い。

  

 時間が掛かりそうな武闘派の願い事から先に伝えてもらおう。

 シュウゲンさんから長い棒が欲しいと言われ、トレントを1本出す。

 何をするのか見ていると、斧で枝を切り落とした状態にし地面へ突き刺していた。

 そして、ルシファーに登れと伝える。

 木登りですか? しかし、枝を切り落としているため難しそう……。

 出来るかしらと心配していると、女官長達に工房へ案内される。

 何か話があるのかな? そう思ったのも束の間、着替えさせられた。

 

「サラ様。お似合いですわ」


 淡いピンクのワンピースを着せられ、髪は両サイドを編み込まれている。

 これはエルフの正装ではなく普段着なのだろう。

 何故なぜ、私の体に合う服が用意されているのか謎だ。

 でも、満面な笑みを浮かべた女官長達に聞ける雰囲気ふんいきじゃない。

 姫様の代わりに着せ替えを楽しんでいるのかもね。

 その恰好かっこうで工房を出ると、雫ちゃんが「沙良お姉ちゃん、可愛い!」とめてくれた。

 隣にいた父と樹おじさんが、同意するよううなずく。


 ルシファーはシュウゲンさんの課題を済ませたのか、スクワットをしている最中だった。

 暇なメンバーは、ガーグ老の部下達と稽古している。

 シュウゲンさんはガーグ老と、奏伯父さんはゼンさんと、早崎さんは茜と対戦中だ。

 しばらく筋トレが続きそうなルシファーは放っておき、私はセイさん相手に槍を繰り出した。

 セイさんは大槍ではなく長槍を手にして、私の攻撃をかわす。

 回避してばかりで一向に攻撃しない相手にれ、足を狙うとセイさんはフワリと飛び上がり短槍の上に立つ。

 得物えものを押さえられ、攻撃手段を失った私を見たシルバーが加勢に入った。

 飛び掛かるシルバーを避けるためセイさんが移動した瞬間、自由になった槍を振るう。

 渾身こんしんの一撃が、セイさんの指先で止められ唖然あぜんとなった。

 どれだけ力が強いの!? 私、Lv100超えてるんだけど……。

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