【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第536話 椎名 響 12 Lv上げ?

公開日時: 2023年9月4日(月) 12:05
更新日時: 2023年12月26日(火) 21:37
文字数:2,688

 冒険者登録をし、武器と防具をそろえた後は再びホームに帰ってきた。

 沙良はこれから稽古を付けてもらっている家具職人に、俺達の事を頼みにいくそうだ。

 何故なぜ、家具職人に武術を習っているのか不思議だが……。

 引退した騎士達なんだろうか?


 その日の夜、妻の手料理を食べに子供達が家へやってきた。

 昨日は色々ありあわただしい再会だったので、美佐子みさこが賢也と沙良に会えて喜んでいる。


 2人だけの食事時より品数が多く、子供達の好物が並んでいた。

 俺の前には、沙良が鰻の蒲焼と肝焼きを追加してくれる。

 2日続けて鰻を食べられ、俺はご機嫌だ。

 食事の最中、尚人なおと君からバイクの運転の仕方を教えてほしいと頼まれた。

 

 聞くとバイクを購入したのはいいが、運転の仕方を知らないそうだ。

 ホーム内には人がいないのを忘れていたのか……。

 俺は若い頃、バイクに乗っていた経験があるので教えられるだろう。

 ちなみに何を購入したのか確認したら、〇ーレーだった!


 おいおい、無免許で〇ーレーを購入してどうするんだ……。

 それは俺のあこがれのバイクだぞ?


 食事が済むと、早々に家へ帰るという沙良に妻が寂しそうな顔をし引き留めていた。

 亡くなったと思っていた娘が生きていたと知り、もっと一緒に過ごしたかったんだろう。

 子供達が帰った後、俺は若返った所為せいか久し振りに頑張ってしまった。

 異世界に召喚されてから、やたら息子・・が元気なのが謎すぎる。


 翌日。

 今日はLv上げをする予定だと聞き、昨日準備した冒険者の恰好かっこうに着替える。

 沙良に連れていかれたのは、森の中だった。

 最初に妻がスライムを槍で突き刺すと、簡単に倒せるのが分かったのか楽しそうに次々と突いていく。


 この魔物はE級冒険者の討伐対象だ。

 基本、誰にでも倒せる。

 俺にはつのウサギの倒し方を、尚人君が披露ひろうしてみせた。

 首を楽々と切断したあの剣は、結構な業物わざもののようだ。


 沙良に購入してもらった剣で同じ真似は出来ないだろう。

 俺はひとつうなずき、次に発見した角ウサギへ走り出し首筋に剣を走らせた。

 あっ……。

 魔物を見て、つい条件反射のように剣術を使用してしまった!


 魔物相手に手加減するなど考えた事もない。

 気を抜けば討伐には命の危険が伴うからだ。

 ここは、何事もなかったフリをしておこう。

 俺は倒した魔物を片手に持ち、沙良達のもとへ戻る。

 驚いた顔をした沙良に、予想通り尋ねられた。

 

「お父さん、剣を使うのは初めてじゃないの?」


「あぁ、昔……ちょっと習っていた時期があるんだ」 


 そういう事にしておこう。

 もうあれだ、ここは変に誤魔化さず強い父親をアピールした方がいいだろう。

 その方が何かあった時、家族を守れるからな。

 冒険者活動をするなら強いに越したことはない。


 2時間程、角ウサギを狩り上がったLvを聞かれた。

 角ウサギでは、既にLvが125ある俺は上がらない。

 妻がLv2になったと答えたので、スライムよりはLvが上がるだろうとLv3と言っておいた。

 沙良よ、現在のLvを聞かないでくれるとありがたいんだが……。


 俺は、その度に言葉に詰まりそうで非常に困る。

 多分一緒に活動している間、俺のLvが上がらないだろう。

 今日はもう終わりかと思っていた所に、沙良が属性スライムをアイテムBOXから出し驚愕きょうがくする。


「さっ……沙良、もしかしてアイテムBOXには生き物も収納出来るのか?」


「うん、そうだよ。2人はまだダンジョンに入れないから、色んな魔物を収納してきたの」


「それは……ちょっとまずいな」


 まさかアイテムBOXに生き物が入るとは思わなかった。

 その能力の有効性に、俺は直ぐ気付いてしまう。


「沙良。理解していると思うが、お前の能力は規格外過ぎる。それは、ともすれば戦況を一変させる力だ。知られれば、利用したいと思う人間が多くいるだろう。いいか、絶対に秘密にするんだ!」


「うん、お兄ちゃんからも言われて注意しているから大丈夫だよ! それにアイテムBOX持ちは、旭とお母さんも一緒だし」


「この国に、3人もアイテムBOX持ちがそろうとは……。何かあるのか? いつきを早く召喚した方が良さそうだな……」


 沙良以外に、尚人君と結花さんもか……。

 樹の家族に3人。

 これは偶然だろうか?


 それにしても、属性スライムから魔法を身に受けただけで同じ魔法を習得出来るとは驚いた。

 沙良に召喚された俺達だけの特殊能力なのか?


 カルドサリ国王時代、俺が魔術書で覚えたのは4属性魔法のボール系のみ。

 それも、Lvが10までしか上がらないものだった。

 Lvが70だった樹は、魔法Lvが20まで上がっていたのに……。


 やはり魔法に関し、教会は秘匿ひとくしている事項が多そうだ。

 あの長ったらしい呪文を唱える必要もなく、妻は覚えたばかりのアースボールを撃っていた。


 これは、俺も魔物から習得すれば呪文が不要になるかも知れない。

 高Lvの魔物相手に、いちいち呪文を唱えて発動する必要がある魔法は役に立たなかったんだよな。

 そんな時間があれば接近して倒した方が早いし……。


 次は魔石取りの練習をするらしい。

 俺はLv上げで散々魔物を倒し、マジックバッグに入らない分は魔石を取っていたため慣れた作業だ。

 哺乳類系は、大抵心臓付近に魔石がある。

 植物系は魔物の特徴を知らないと、どこにあるのか分からない事が多かった。


 あぁ、これも普通に取ってしまった!

 沙良がジト目で俺を見ている気がする……。

 不審に思われただろうか?

 

 最後は大型魔物の討伐だった。

 沙良が妻に与えられた光合成の能力を使用するよう、小豆を渡している。

 あんな小さな豆で、魔物を倒せるんだろうか? 

 疑問に思いながら見ていると、小豆がバカみたいに成長し牛くらいある大きなボアを拘束した!


 いやいや、どうなってるんだその魔法はっ!

 大体、小豆はそんなに大きくなる品種じゃないだろう!

 俺は妻の特殊魔法に目をいた。

 どうして俺に与えられた3つの能力は、攻撃性皆無なんだ……。


 どうせなら、俺も攻撃に使用出来る魔法が欲しかった。

 沙良がベアを倒せと言うので、まだ魔法を習得していない俺は接近し首をき切った。

 娘よ、初めて魔物を倒す日にベアは危険だと思わないのか?


 一度昼食を食べにホーム内へ戻り、肉系は遠慮したいという妻の意見を聞きパスタ屋に向かう。

 ホーム内は完全に日本と同じ仕様らしく、飲食店で注文も可能だった。


 電子メニューで注文すると、テーブルに料理が出現する。

 人がいないため待ち時間もなく、直ぐに食べられるのか……。

 もうホームの能力に驚きっぱなしで、開いた口が塞がらない。

 きっと俺の能力は、このホーム内で使用出来る日本円が必要になるから与えられたんだろうな。


 異世界にきてから、あの不味い料理を食べなくて済むと知り、俺は安心したのだった。

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