【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第564話 迷宮都市 地下15階 秘密のLv上げ10(摩天楼のダンジョン11階~12階)&亡くなった冒険者

公開日時: 2023年10月2日(月) 12:05
更新日時: 2024年1月24日(水) 07:53
文字数:2,226

 翌日、水曜日。

 午前中は、いつもの薬草採取と果物の収穫をして、午後からは摩天楼まてんろうのダンジョンへ移動する。

 摩天楼の都市に着くなり、ポチが上空から父を目指し飛んできた。

 昨日は迷宮都市に帰らなかったのかな?

 一緒にダンジョンを攻略するか聞くと、羽をバタバタさせ答えるので今日も父の右肩に乗ったままらしい。


 さて11階からの攻略開始。

 迷宮都市のダンジョンは地下11階から森に変わっていたけど、ここはどうかな?

 マッピングを使用し11階まで移動すると、やはり森のダンジョンになっていた。

 それなら生っている果物があるかも知れない。

 シルバーに乗ったまま安全地帯へ到着後、直ぐにテントを設置して中へ入る。

 11階を上空から俯瞰ふかんすると、初めて見る魔物の姿を発見。


 森の中にリスの魔物とムササビの魔物がいる。

 そして木には何かが生っていた。

 この形は……胡桃くるみだろうか?

 アイテムBOXに収納し取り出してみると、テニスボール大の胡桃だった。

 どうやら摩天楼のダンジョンでは、木の実が生るようだ。

 ランダムに生る物があるのか探したけど、ここには胡桃しかないらしい。

 へぇ~。

 ダンジョンマスターは、ナッツ好きな人だったのかも?


「お父さん、摩天楼のダンジョンは木の実が生るみたいだよ~」

 

「知らなかったな……。それがあれば……、いや何でもない」


「全部収穫するから、少し待ってね!」


「あぁ、全部か……」


 私は視界に入った胡桃を次々とアイテムBOXへ収納していく。

 これも、お菓子の材料になるから嬉しいなぁ。

 アプリコットと一緒に子供達の巾着へ入れてあげよう。

 全ての胡桃を収穫し、安全地帯から出て攻略に向かう。

 森に近付くと、先程見たリスの魔物が木の枝を移動している姿が見えた。

 

 5m程の高さにいるので、冒険者達は相手にしないだろうなぁ。

 ドレインで昏倒させると、枝からドサッと落ちる。

 体長30cmの小さな魔物で可愛い。

 私がでようとした所、急に父から手をつかまれた。


「沙良、テイムした魔物以外を触るのは危険だ。毒があるかも知れん」


「リスの魔物なのに?」


「日本の動物と同じとは限らない」


 父の顔がやけに真剣だったので、私は言われた言葉に従い手を引っ込めた。

 見た目が可愛い魔物を槍で突き刺すのは躊躇ためらわれ、脳を石化する。

 リスの毛は、化粧筆として高級品だ。

 傷がない状態の方がいいだろう。

 父はその間、飛んできたムササビを切り落としていた。

 魔物だけど容赦ようしゃないな……。


 他は見知った魔物ばかりでLv上げに適さない。

 1時間程で切り上げ12階へ移動。

 安全地帯に到着後、テントを設置し中へ入る。

 木の実を探すとアーモンドを発見!

 こちらも全て収穫する。


 初見なのは、キツツキの魔物とカエルの魔物だった。

 キツツキの魔物は体長1m。

 長いくちばしで体を突かれると穴が空きそう……。

 脳を石化させ倒す。

 カエルの魔物は体長1m。

 見た目は緑色で、アマガエルのような姿に見える。


 王都のダンジョンにカエルの魔物がいると聞いていたけど、摩天楼のダンジョンにもいるのか……。

 鳴き声を聞くと眠ってしまうらしいから注意が必要だ。

 と思っていると、父が首を切断した。

 うん、魔物だしね。

 父は首を切断するのが一番早いと思っているんだろう。


 他に初見の魔物は見当たらず、1時間が経過したのでポチをテント内に置き迷宮都市のダンジョンへ戻った。

 地下15階の安全地帯に入りテント前までいくと、兄からするどい制止の声が掛かる。


「沙良、こっちにくるんじゃない!」


 普段とは違う厳しい表情をした兄を見て、足が止まり動けなくなった。

 

「お兄ちゃん。……何かあったの?」


 私は震える声で、そう尋ねるのが精一杯だった。

 分かってはいたけど……。

 ついに冒険者が亡くなってしまったのかと思ったからだ。

 異世界にきて8年間。

 兄と旭が治療し続けた理由だ。


 私に亡くなる人を見せたくなかったんだろう。

 正直冒険者をしていれば、それは避けられない事だ。

 いつも治療が間に合うとは限らない。

 今までは、ただ運が良かっただけ……。

 覚悟を決めて動かない足を1歩踏み出そうとすると、隣にいた父が私の肩を抱き寄せ兄の方へいかせないようにする。


「沙良、賢也けんやの言う通りにしよう」


 父は落ち着いた静かな声でそう言った後、私を抱き締め離さなかった。

 私はその間、アマンダさんとダンクさんのパーティーメンバーがそろっている姿を見て気分を落ち着かせる。

 しばらくすると、黒い布で包まれた人をパーティーメンバーが沈鬱ちんうつな表情で運び出す。


 テント前から私達のパーティー以外いなくなると、ようやく父が体を離してくれた。

 そこに1人の姿だけなかったのは、母を思い兄がテント内で待機させたのか……。

 しずくちゃんとお母さんは、冒険者活動をしている間に何度も経験があるんだろう。


「待たせたな。テントに入ろう」


 兄は先程とは違い普段通りの声で、私達をうながす。

 テント内に入ると誰も何も言わなかった。

 私は全員をホームへ移転させ、休憩している旭に小声で何があったか尋ねる。


「俺達の所に運ばれた時点で、既に脈がない状態だったんだよ。残念だけど、助けられなかった」


「そう……。怪我の状態がひどかったの?」


「うん。大きな血管が切れていたから、流れた血が多すぎたんだろうね」 


「分かった。教えてくれてありがとう」


 15分後、再びテントに戻りそれぞれ攻略へ向かった。

 戦争では、もっと多くの人命が失われる。

 そこには知り合いの冒険者や子供達も含まれるかも知れない。

 やはり早急にLv上げが必要だ。

 1階層毎に攻略するのは時間が掛かりすぎるかも……。

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