【3巻発売&コミカライズ決定!】自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

48歳の主人公が異世界で12歳の少女になり、冒険者として生きるお話です
如月 雪名
如月 雪名

第670話 迷宮都市 地下15階&摩天楼のダンジョン(30階) ギルドマスターへの報告&人魚姫の衣装

公開日時: 2024年1月19日(金) 12:05
更新日時: 2024年5月12日(日) 14:10
文字数:2,372

 入場料を払ってから従魔に騎乗し、30階の往復をすれば数時間で帰還が可能だ。

 洞窟での採掘中、発見したと言えば不思議に思われない。

 シュウゲンさんはドワーフだしね。

 私は祖父にこれから一旦いったん地上へ出て、再度30階層を往復した後にギルドマスターに報告してもらう事にした。

 迷宮都市と同じく、独立採算制を採っている摩天楼まてんろう都市の最高責任者は冒険者ギルドマスターになる。

 

 事前にアシュカナ帝国の動向を知れば、打てる手が増えるだろう。

 シュウゲンさんは黄金こがねに騎乗してもらい、証拠品の黒い箱とマジックバッグを渡した。

 黄金こがねにシュウゲンさんを30階まで送った後、再び地上まで戻ってこれるか確認すると賢い従魔は「ウォン!」と一声鳴き、その場で飛びねた。

 攻略を中止しメンバー全員で地上に戻る。

 

「シュウゲンさん、後はよろしくお願いします。4時間後、迎えに行きますから冒険者ギルドで待って下さいね」


「あぁ、任せてくれ。帝国の思い通りにはさせん!」


 そう力強く言い切り、シュウゲンさんは黄金こがねに騎乗しダンジョンの入口へ消えていった。

 少し早いけど迷宮都市ダンジョンに戻ろう。

 地下15階の安全地帯へ移動し、しずくちゃん達がテントに戻ってくるのを待つ。

 その間、治療を受けに来た冒険者には兄と旭が対応した。

 攻略を終えた雫ちゃん達とホームへ戻り、摩天楼のダンジョンで見付けた物を父が3人に報告する。

 それを聞いたいつきおじさんが、ダンジョンに呪具を設置するとは卑劣ひれつだと言い怒っていた。

 

「帝国を滅ぼすか……」


 おじさんの少々物騒な発言は、聞かなかった事にしよう。

 隣で父が必死になだめていたけど、1人じゃ無理だと思います。

 テントから出て夕食の準備を始める。

 メニューは、ハイオーク肉の『カツサンド』と『フライドポテト』に『シチュー』。

 ダンクさんとアマンダさんのパーティーは、『ハンバーグ』と『キッシュ』にパンとスープのようでリリーさんとケンさんが仲良く作っている。

 食後、リリーさんに人魚姫の衣装を見せると顔を真っ赤にしうつむいてしまう。

 それを見たダンクさんが、困ったような表情で口を開いた。


「あ~、サラちゃん。この衣装は、ちょっとリリーには着せられないな。そのなんだ、少し見せすぎと言うか……」


 やっぱり異世界では人魚姫の衣装が破廉恥はれんちに見えるらしい。

 でも、人魚姫は服を着ていないんだよね。

 衣装の変更をどうしたらいいか悩んでいると、ダンクさんがセイさんと旭を交互に見つめ出した。

 そして心が決まったのか、


「アサヒ君。リリーの代わりに、この衣装を着て劇に出てくれないか?」


 爆弾発言をかます。

 言われた旭は目を大きく見開きギョッとしている。

 女性が着るには問題がある衣装だけど、男性なら大丈夫なのかしら?

 リリーさんは旭より背が高いし体格もそれほど変わらない。

 胸の部分に詰め物をして、金髪のウィッグを着ければ童顔で可愛らしい旭は人魚姫役をこなせるだろう。

 折角せっかく作った衣装が無駄にならずに済むし、これは案外良い方法かも知れない。

 それに前回、急に振った剣舞は仕返しにならなかったし……。


「旭、人助けだと思って人魚姫の役を受けたら? 私も可愛い姿を見てみたいなぁ~。大丈夫! 絶対似合うから!」


「あら、そうね。うちの子……兄に似合いそうだわ。主役なんて素敵じゃない!」


 雫ちゃんのお母さんが同意を示す。


「わぁ~、尚人兄なおとにいが人魚姫をやるの? 楽しみだね!」


 更に妹の雫ちゃんからキラキラと期待した目を向けられて、旭が折れた。


「やっ、……やらせて頂きます」 


 涙目になっているのは見ないフリをしよう。

 それに、どうせ原作通り話は進まないだろうし……。

 リリーさんは人魚姫から、海でおぼれた王子様を助けたと嘘を言い結婚する女性役へ変更になった。

 王子様役のダンクさんは、勿論もちろんそのままだ。

 台詞を覚える必要があるため、旭はダンクさんに連れられ劇の練習へ強制参加させられている。

 兄は苦笑しているけど、助けたりはしないみたい。

 旭の人魚姫姿を見てみたいのかもね?

 

 遅くまで続きそうな練習を途中で抜け出し、私達は先に就寝すると伝えテントへ戻った。

 その後、父と樹おじさんと一緒に摩天楼の都市へ移転する。

 冒険者ギルドで待っているシュウゲンさんを迎えに行くと、綺麗な受付嬢にギルドマスターから話があると部屋まで案内された。

 黄金こがねは私の従魔なので、同じパーティーメンバーだと気付いたのかしら?

 証拠品として渡した、呪具とマジックバッグの中身は分かっただろうか……。

 部屋に入ると、ギルドマスターのヒューさんとシュウゲンさんがいた。

 私達はヒューさんの対面に座り話を待つ。

 

「サラさん、報告ありがとうございます。提出して頂いた物を確認した所、箱の中には呪具が120個入っておりました。しかも全て色が黒い物です。マジックバッグの方は使用者権限の解除に時間が掛かるため、まだ把握はあく出来ておりませんが……」


 黒色の呪具は、確か一番効果が高い物だったはず

 それが120個もあったのなら30階の隠れ家は当たりだ。

 多分、それ以外の呪具はないと思う。

 マジックバッグの中身は、あまり気にしなくても良いかな?

 

「偶然ですが、私のメンバーが発見出来て良かったです。呪具も沢山回収したし、犯人確保に向け頑張って下さいね」


「はい。これから冒険者にふんしたギルド職員がダンジョンへ潜入し、犯人の特定作業を急ぎます。何とか水際で食い止められるよう尽力じんりょくする所存しょぞんです」


 うんん? 何か最後の方は、やけに改まった言い方だったな。

 深々と頭を下げ、お礼を言うヒューさんのもとし部屋を出る。

 この時間、普段は冒険者の少ないギルド内に綺麗な人達ばかりいた。

 ハーフエルフの人達だろうか? 摩天楼の冒険者ギルド職員は何故なぜか綺麗な人が多いようだ。

 皆冒険者の恰好かっこうをしているから、ギルド職員がダンジョンへ向かう所らしい。

 犯人が早く捕まるといいなと思いながら、私達はホームに帰った。

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