「闘技会出るの?」
ギルドの受付に行きドラゴン討伐依頼の報酬をもらって、今日はとりあえず一旦宿に戻る事にした。
ギルドから出るとアキーエが先程の闘技会について聞いてきた。
「う〜ん、今はまだわからないかな。自分がどの程度強いのか興味はあるけど、あんまり目立ちたくない気もするしね。まだ2ヶ月あるからその間に決めるよ。アキーエとミミウはどうする?」
まあ獣人国の催し物だからおそらく参加者は脳筋ばっかりだろうし魔法を使うアキーエは向いてないかな‥
「そうね。闘技会は主に武技を競うものだから、わたしは参加しないと思うわ。もしわたしが魔法以外にも戦う術を覚える事ができたなら参加するかもね。」
「私も参加は厳しそうですぅ。モンスター相手ならいいんですけど、対人になると攻撃方法に自信がないですぅ。」
ミミウは少し残念そうな表情をしてそう話す。
確かにミミウも防御に徹したら負けないけど、勝てはしないからな。
それぞれの分野で闘技会があればいいんだろうけど。
「もし参加するなら俺だけか。まあ参加するかわからないけどな。」
スキルの模倣次第にはなると思うけど、経験するのもいいかもしれないな。
翌日マルコイは仲間に依頼を2〜3日受けずにスキルの模倣を試す事を伝え宿から街に出ていた。
アキーエは本屋探しでミミウは屋台巡りをするそうだ。
キリーエは朝から忙しそうだったので、報告だけしといた。
ドラゴン討伐で一緒に戦ったパーティには別れる際に拠点としている宿の確認をしていた。
それぞれの拠点を回って滞在しているパーティに話をして模倣をする事ができればと思っている。
とりあえず今日は『獅子の立髪』が滞在している宿に来た。
別に女性ばっかりだったから最初に選んだわけではない。
選んだわけではないよアキーエさん‥
宿に着き、『獅子の立髪』が滞在しているか聞くと、ちょうど遅めの朝食をとっているとの事だったのでお邪魔する事にした。
「おっ!確かマルコイだったか?どうしたんだ偶然か?それとも私達に会いに来たのか?」
さっそくお目当てのアマンダさん達を見つける事ができた。
「今日はアマンダさん達に相談があってきたんです。少し時間もらってもいいですか?」
「なんだ?愛の告白か?可愛い子達を連れてたのにハーレム希望か?」
依頼の時とは違いラフな格好をしているが、3人とも綺麗だな‥
愛の告白でもいいかもしれん‥
むっ!アキーエの殺気が‥
「い、いや違いますよ。ギルドから闘技会に出てみないかってお誘いがあったのです。それでどんなものなのか聞いてみたくなったので高ランクの冒険者の人たちに話を聞いてるところなんですよ。よかったら聞かせてもらえないですか?」
「な〜んだざんねん。闘技会の話か。私も数回参加したが、Aランク上位となると化け物ばっかりだからな。でも相手がBランクだったらマルコイもいいとこいけると思うぜ。ドラゴン討伐の時の動きをみて私もギルドに推薦したからな。」
「そう言えばイザベラさんがアマンダさんも推薦してくれてたって聞きました。それで参加するにしろしないにしろ強くなるために努力しようと思って。それでもしよかったらアマンダさん達のスキルの使い方を勉強させてもらえればと思ってるんです。」
俺はさっそく本題に入る事にした‥
「自分のスキルは【剣闘士】ってスキルなんです。スキル自体出現者がいないみたいで、訓練するにしてもどうやっていいのかわからなくて。それで『獅子の立髪』の皆さんがどんなスキルでどんな訓練をしてきたのか参考にさせてもらえればと思ってるんです。」
そう言って俺は自分のスキルカードを見せる。
マルコイ
冒険者ランクC
スキル【剣匠Lv.1】【剣闘士Lv.4】
スキル【剣匠】を覚えた時にわかったのだが、スキルがトリプルになってからは2つ目以降のスキルが表示されなくなっていた。
実際は表示されてはいるのだか、基本的にダブルまでしか表に表示されないようで、トリプルになるとカードの裏側に表示されている。
今の俺のギルドカードは表は【剣闘士】【剣匠】が表示されており裏に【模倣】【鑑定】が表示されている。
そのため自分が手に持ったままであれば裏を見られる事はない。
そこで考えたのは自分からギルドカードを提示する事で相手にも違和感なく同じように提示してもらう事ができるのではないだろうかと思いついた。
懸念しているのは新しく統合したスキルから表示されるようで、模倣したスキルが統合すると表の表示が変わってしまう事だ。
パーティ同士が仲があまり良くないなら情報的には伝わらないだろうが、念のために統合する事ができたら、一旦中止するべきだろう。
「なるほどなぁ。でも私達のスキルが参考になるかわかんないぞ。それでもいいのか?」
アマンダはそう言いながらギルドカードを提示してくれた。
「私のスキルは【身体能力向上】と【強化】になる。だから常時発現スキルでもないしな。アムテル達の方がいいかもな。」
(ピコーンッ)
『模倣スキルを発現しました。スキル【身体能力上昇】【強化】を模倣しました。』
ヨシっ!
心の中でガッツポーズを取る。
するとアムテルさんとカリーンさんがギルドカードを出してくれる。
カリーンさんは【剛腕】だったな。進化前のスキルは【腕力】のはずだ。
1度模倣して統合したスキルだが、模倣できるのかも検証できるな。
「私も【剛腕】だから常時発現ではない。だからアムテルに聞いてくれるかな?」
(ピコーンッ)
『模倣スキルを発現しました。スキル【腕力】は統合しています。スキルを模倣できません。』
やはりと言うべきか、無くなったわけではないから統合したスキルは模倣できないか‥
同じスキルを何度も模倣できるなら、スキルのレベルが上がらなくても能力を高める事ができると思ったが‥
「私は【槍鬼】で常時発現スキルよ。でも参考になるかしら?自分で理想の動きを頭の中で描き、されをトレースする動きをずっと訓練しているわ。それが正しいのかはわからないけど、戦ってなくても理想の動きを追い求めて動きをしていた方が、ただ闇雲に振り回すよりレベルが上がると思うわ。」
(ピコーンッ)
『模倣スキルを発現しました。スキル【槍士】を模倣しました。』
これで戦闘系のスキル模倣が3つ目だ。
運がいいのか悪いのかわからないけど、統合はしなかった。
俺はもっと強くなれるようだ。
『獅子の立髪』のスキルを模倣した後、しばらくアムテルさんに槍の取り扱いを見せてもらった。
やはりBランクで槍鬼までスキルを昇華している冒険者だ。
動きに無駄がない。
俺は今まで剣のみを鍛錬してきたから、槍についてはよくわからない。
そんな俺が見てもはっきりとわかるほどである。
円の動きというのだろうか、動作の合間に淀みがない。
流れるような動きで、打ち込む隙が見当たらない。
さすがだな‥
「あんまり見つめないでくれないかい。少し恥ずかしいのだけど‥」
さすがだな‥
男をドキッとさせるのもBランク冒険者ゆえか‥
少しアマンダさん達と話をして参考になりましたと告げ、次の目的地へと向かう。
次はBランクパーティの『雷鳴の音』が滞在している宿に来た。
お昼も過ぎ夕刻になっていたため不在の可能性も考えていたが、運良く今日は依頼を受けていないようで、パーティ全員が宿で休んでいた。
さっそくアマンダさんたちに伝えたのと同じように闘技会に参加するように勧められた事と、自分のスキルの事と訓練の仕方を学べないかと尋ねた。
ドラゴン討伐時に他のパーティの手助けをした事で印象が良かったのか、何の疑いもなく相談に乗ってくれる事となった。
「俺は【下肢筋力向上】で発現確認型のスキルだから参考にならないな。」
「私も【属性魔法:水・土】だからな。どちらかと言うと私の訓練方法は君のパーティにいる赤髪の子がいいんじゃないかな?」
スコルさんとストールさんがギルドカードを見せながら、そう言ってくれる。
(ピコーンッ)
『模倣スキルを発現しました。スキル【下肢筋力上昇】を模倣しました。』
(ピコーンッ)
『模倣スキルを発現しました。スキル【属性魔法:水】【属性魔法:土】を模倣しました。』
よし。
属性魔法は四属性だったとしても、同じでなければ模倣できるようだ。
それにストールさんの申し出はありがたいな。
今度アキーエに伝えてみよう。
「俺は【格闘鬼】で常時発現スキルではあるけど、【剣闘士】は盾も使うんだろう?だとしたら俺よりオーファンの盾での立ち回りの方が役に立つんじゃないか?」
アックレさんは徒手空拳での戦いのため、教える事ができないと言われた。しかし無手での立ち回りならばアックレさんの事もアキーエに伝えるべきだろう。
「そうだな。俺は【盾鬼】で基本的なところは伝える事は出来ると思うが、どちらかと言うと立ち回り的にはマルコイのパーティ小さな女の子の動きになるからな。それでもいいならいいぞ。」
(ピコーンッ)
『模倣スキルを発現しました。スキル【盾士】は統合しています。スキルを模倣できません。』
ピコーンッ)
『模倣スキルを発現しました。スキル【格闘士】を模倣しました』
『模倣スキルのレベルが上がりました。模倣スキルを譲渡出来るようになりました。』
『対象に模倣スキルを譲渡しますか?』
うんうん。やっぱり盾士も同じく模倣できないか。
格闘士は模倣できたからよかったな‥
は?
模倣スキルを譲渡出来るようになりました?
読み終わったら、ポイントを付けましょう!