【錬金術士】を模倣し、体力ポーションをもらった後に少し店の中を見せてもらった。
店にはアリアが作製した物や、用途がよく分からない魔道具のようなもの物もある。
「アリアは魔道具なんかも作るのか?」
「そうね。作ろうと思えば作れるわ。ただ専門分野ではないわね。魔道具に関しては【魔道具士】ってスキルを持っている人が本職になるの。私のスキルでも作製はできるけど、それこそ火をつけたりする魔道具とか簡単な物に限るわね。スキルレベルが上がれば、その限りじゃないんだろうけど。」
魔道具か。
魔道具については今の技術で作れる魔道具と、遺跡などから発見されるアーティファクトと呼ばれる過去の技術で作られていて再現できない魔道具がある。
今の魔道具も物を冷やしたり、放出魔法が使えない人が魔道具を持つ事で魔法を放出したりする事ができるが、過去のアーティファクトに関してはレベルが違うようだ。
それこそ人を別の場所に転移させたり、水を補給なしで永続的に出す事ができる物まであるらしい‥
しかしそんな貴重な物は王族やら大金持ちみたいな一部の人が持っているとかいないとか‥
しかし【魔道具士】か‥
そんな有用なスキルを持っている人がいれば模倣させて貰いたいものだけどな。
「なに?【魔道具士】とも会いたかったりするわけ?それならセイウットにいる知人に会えるように紹介状でも用意するわよ。」
「本当か?それは助かる。借りはいつか返すから。」
「そんなのいいわよ。ナーシスの恩人に私からのお礼って事で。」
錬金術を模倣するための足掛かりになりそうだから、本当に助かる。
錬金術は模倣では使い勝手が悪いが、統合できれば何か役に立つスキルを得られるかもしれないからな。
しかし魔道具やポーションはかなりの値段はするな。
安価の物もあるが、説明書きが悪い‥
体力劣化ポーション
使用すると傷に唾つけたスピードの10倍くらいの治癒力。
‥‥‥どうなのこれ?
「商品の説明書きってアリアがやってるのか?」
「そうよ。一つ一つ手書きでわかりやすいように説明しているの。でもなかなか売れないから、いつも経営が厳しいわね〜。」
「アリア‥この『体力劣化ポーション』だけどな。せめて『劣化体力ポーション』にしろ。文字の並び方だけで、体力が劣化するポーションに見えるぞ‥」
「え?」
アリアは愕然とした表情でこちらを見ている‥
アリアが気付いてなかった事に驚き愕然とした表情でアリアを見る俺。
何となく2人に合わせて愕然とした表情を装っているナーシス‥
いや、何で君がそんな顔してんの!
「と、とりあえず今度俺の知り合いの商人に来てもらうか?そしたら多分売り上げは伸びると思うぞ‥」
「あ、ありがとう‥か、書き方が悪いなんて‥」
ふつー気づくたろう‥
後で核爆弾商人娘を送り込むか‥
核爆弾ってなんだ?
あ、異世界の知識か‥
ふ〜む、他にたくさん残念な商品が多数ある‥
魔力劣化ポーションだったり腕力劣化薬だったり‥
普通のポーションは高いけど、こっちなら買えるけど、買おうとは思わない‥
「俺の仲間のキリーエって商人に来てもらうから、そいつから売れる方法ってのを少し習ったらいい。さっきの【魔道具士】を紹介してもらうお返しだ。」
「でもそれはいいって‥」
「なに気にするな。助けたお礼は錬金術を見せてもらったのとポーションを貰ったので十分だったからな。」
「ありがとう。」
ふむ。
こうやってしおらしくてると歳相応で可愛いけどな。
「さて俺は帰るけど、ナーシス今日はありがとうな。アリアもいろいろと勉強になった。ありがとう。」
店を出ようとするとナーシスが近づいてきた。
「あ、あのっ!」
おおうっ。近い近い‥
まだ幼いとはいえ、異性にこれだけ近くに来られるとドキドキするな‥
「また会いにきてもいいですか?こ、こ、こ、こ、こ、‥」
ニワトリ?
「今度はご飯でも食べに行きましょうっ‼︎」
なんかわからないけど凄いプレッシャーを感じる‥
「お、おう。それくらいでよかったら、いつでも付き合うぞ。いつでも誘ってくれていいからな。いなかったら宿に言伝してもらってたらいいから。」
「はい!ありがとうございます!」
お店を出で帰路に着く。
「ナーシスにしては頑張ったわね。」
「だからそんなんじゃないって!」
「でもいつでも誘っていいなんて少しは‥」
歳頃の女の子たちは話のネタが尽きない物だな。
あまり聞こえないが楽しそうでなりよりだ。
マルコイは鈍感レベルが1上がった‥
夜が明けて次の日。
今日は1日サミュウさんの作業場を借りれる事になっている。
借りれる時間が限られてはいたが、借りれる時はフルに時間を使って作業をしてきたおかけでようやく9割程度は完成している。
今日はなんとしても完成まで漕ぎ着けたいと思っている。
【剣匠】のスキルを使用してもダマスカス鋼の鍛造は一筋縄ではいかない。
もちろん【鍛造】のスキルを持っているサミュウさんにも手伝ってもらっているが、それでも通常の刀剣の倍以上の時間がかかっているらしい。
「どうもサミュウさん。今日こそは完成させたいと思ってるので、時間がある時でいいので手伝ってもらってもいいですか?」
店に着き、サミュウに声をかける。
「おはようマルコイさん。もちろんいいですよ。私もあの剣の仕上がりが気になりますからね。今日も客はあまり来ないと思いますから、ガッツリ手伝わせてもらいますよ。」
サミュウさん‥
それは言ってて悲しくないか?
あ、自分で言って自分で落ち込んでる‥
その日はやはりあまり客が来なかったので、サミュウさんにかなりの時間付き合ってもらって作業を行った。
作業を始めて何時間たっただろうか‥
日が沈みかけて茜色に空が染まった頃に、ついに作業が終了した。
ついに俺の剣、ダマスカス剣が完成した。
ダマスカス鋼を鍛造して作製した剣で、その剣身の表面には独特の縞模様が浮かび上がり見るものを惹きつける。
実際には異世界の知識でも正確なダマスカス鋼の作製方法は判明していない。
炭素量の多寡で結晶速度と、結晶の形状に差ができ、しなやかな鋼の樹状結晶の間を硬く、脆い鋼の結晶が埋めるような構造になったものと言われている。
その構造は鉄鉱石に含まれる微量のバナジウムが働いているからだとかなんだとか‥
しかしその異世界でもわかっていないダマスカス鋼を俺のスキル【剣匠】の力で無理矢理作ってやったわけである。
あとはこのダマスカス剣が本来のダマスカスブレードのように高い硬度を有しながらしなやかで折れず、欠けず、鎧を紙のように切り裂く仕上がりになっているかどうかである。
「これだけの剣は私も見た事がないですね。国宝級と言っても過言ではないと思いますよ。」
サミュウさんがそう言ってくれるので、おそらく大丈夫だろう。
店の外に出で、古びた廃棄予定の鎧を試し斬りしてみる。
エンチャント:火はもちろんのこと、さほど力も込めていないのに鎧はそれこそ紙のように斬る事ができた‥
「これどうぞ。鎧の留め具が壊れているのですが、鎧の強度自体はかなりの品です。」
サミュウさんに用意してもらった鎧に再度剣を振るう。
その鎧もやはりさほど抵抗なく斬る事ができた。
「やばいなコレは。斬れ味が良すぎて持っているのが怖くなるほどだ‥」
迂闊に扱ったら自分も怪我してしまいそうだ‥
片刃の剣に浮かぶ独特の縞模様。
俺は唯一無二の剣を手に入れる事となった。
「マルコイさん、同じのを作製する事はできそうですか?」
サミュウさんが尋ねてくる。
サミュウさんには物凄くお世話になったからな。
しかしミスリルを使用して同じ物をとなると十中八九失敗するだろうな‥
「ミスリルを使用しないで鉄鉱石で作製するのであれば可能かもしれません。ミスリルを使用するなら失敗覚悟で山のようにミスリルを用意してもらわないとダメでしょうね。」
「なるほど。しかし鉄鉱石で作製したとしても、今ある出回っているのもよりも一線を画す物が出来上がると思います。」
サミュウさんは確信した目で頷く。
「わかりました。それでも作製には俺のスキルが必要になると思います。なので俺が時間がある時にこちらにお邪魔してインゴットを作りますね。」
「ありがとう!インゴットを作ってもらった分の代金は支払うから。」
「いいですよ。ダマスカスで商品を作るにしても先立つ物が必要になりますよね。だから料金はいりませんが、ダマスカスで作製した武具を俺の知り合いの商人に少しおろしてもらえませんか?」
サミュウさんは驚いた表情でこちらを見ている。
「いいんですか?それだと無料でインゴットを作ってもらった上に商品まで買ってもらえることになりますよ?」
「いいんです。商売については信頼している仲間かいます。彼女なら十分過ぎるほどの成果を上げてくれると思います。そして多分サミュウさんが作るダマスカスはすぐに有名になって生産が追いつかなくなると思いますよ。」
「そんな‥‥ありがとうございます。必ず期待に応える品を作ります!」
「それじゃ時間がある時にインゴットを作りにきます。そして1番最初に俺の仲間のショートスピアの穂先を作ってもらっていいですか?」
「もちろん!お安い御用です。」
サミュウさんのお店は多分‥いや絶対に首都で1番の店になるだろうな。
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