翌日、獣人国に出発するために準備をしているとギルドからの呼び出しがあった。
出発の準備は別にそこまで急ぐ必要もなかった為、呼び出しに応じてギルドに寄る事にした。
「マルコイ呼び出ししてすまんな。」
受付からバーントさんがやって来る。
相変わらずのゴリマッチョだ。
「何か失礼な事を考えてるな。」
「そんな事はない。要件はなんだ?」
「いや、お前達が獣人国に行くって言ってたから、出来れば護衛依頼も兼ねてもらえなかいと思っての相談なんだ。」
護衛依頼?今まで受けた事なかったな。模倣スキルの件もあったから、なるべく避けてた事もあったし。
「護衛依頼は受けた事がないから、ギルドからの紹介のような大事な護衛は無理だぞ。」
するとバーントがすすっと寄って来る‥
寄ってきた分離れる‥
「なんでだよっ!」
「いや、ゴリマッチョがうつりそうで‥」
「うつらないよっ!おじさんの筋肉は病気じゃないよっ!」
いや、うつりそうだ‥
「いや、そうじゃなくてだな。実は依頼主が俺の友人の子供でな。商人として独り立ちしたんだが、今回が最初の仕入れになるんだよ。それで獣人国まで行くんだが、変な冒険者に依頼受けられるのも困るんだ。だからお前達が獣人国に行くんなら、護衛して一緒に連れて行ってもらえないかと思ってよ。」
「ん?そういった理由なら受けない事もないが、ギルド職員がそんな事はしていいのか?」
「本来は指名依頼って形になるが、今回は依頼主はお前達の事を知らないからな。ギルド職員の依頼推薦ってとこだ。」
アキーエとミミウを見る。
「別にいいんじゃない?どうせ獣人国に行くんだし、今後の事を考えると商人と懇意になるのも悪くないと思うけど。」
そうだな。バーントのおっさんの紹介なら変な人じゃないだろうし、今後の事を考えると信頼できるかもしれない商人と知り合いになるのは悪くないだろう。
「わかった。その依頼受けるよ。しかし行きだけの護衛になるけどいいのか?」
「助かった。帰りは別の冒険者に頼む事になるが、その時に相手が問題なさそうか確認してくれると助かる。それと本人が今日来てるから会ってもらっていいか?」
「別に構わないよ。」
はっ!バーントのおっさんの知り合いってことはゴリマッチョかもしれない‥
し、しまった‥会ってから考えた方がよかった‥
獣人国まで長い道のりでゴリマッチョとずっと一緒なんて考えただけで暑苦しい‥
「こっちだキリーエ。この3人が最速でCランクまで上がった新進気鋭の冒険者達だ。」
バーントから連れてこられたのは‥
薄い青色の髪の毛を短めのショートカットにしている、どこからどう見ても女の子だった。
少し垂れ気味の目ではあるが、右目の下にある黒子が少し大人っぽく見せている。
歳は15歳前後くらいだろうか?
「どもども紹介に預かったキリーエです!ウチも獣人国で香辛料とか仕入れに行く予定やったんよ。でも初めて行くから、できれば信頼できそうな人がよかったんだ。だからバーントのおっちゃんにお願いしてて。よろしくお願いしますわ。」
うん。なんか商魂逞しそうな感じだな‥
「よ、よろしく。俺はマルコイ。仲間はアキーエとミミウだ。」
2人を紹介しようと思ったが、アキーエがなぜか固まっている。
「よろしくお願いしますぅ。」
ミミウは相変わらず人見知りもなく元気だな。
アキーエは珍しく人見知りかな‥?
「ゆ、油断したわ。商人と聞いて勝手に男と思ってたわたしが悪いんだけど‥」
なんかブツブツ言ってるけど‥
「アキーエ大丈夫か?」
「だ、だいじょうぶよ。何も問題ないわ。そ、そうよね女性の商人もいるわよね。」
うん。なんだか知らんがテンパってらっしゃる。
よくわからないけど、アキーエも大丈夫みたいだ。
「マルコイさんにミミウさん、それにアキーエさんね。歳も近いし助かるわ〜。おじさんばっかだったらこのセクシーさで血迷ったおじさんが出てきて、身の危険感じる思ってたもん。」
キリーエは動きやすい格好のためか、上がシャツにベスト、下はショートパンツのため長い脚がスラリと出ていた。
健康的な少女らしい姿だった。
胸は‥
まだまだ発展途上中なのだろう‥
実に活発的に見えるが、セクシーさはないような‥
「護衛依頼は初めてだから、拙いとこもあると思うがよろしく頼む。同じ歳くらいと思うから気兼ねなしにいろいろ言ってくれ。」
「よろしく!でもマルコイさん。ウチもう22歳になるから、同い歳くらいってのは失礼じゃない?」
「え?」
バーントさんを見ると大きく頷いていた。
「そ、そうなんだ。それじゃ出発はいつにする?」
「ウチはいつでもいいけど、マルコイさん達は準備がいるでしょ?明日の朝でいいかな?」
「了解。それじゃ明日の朝に王都の北門に集合で。」
「わかった。じゃあまた明日ね。」
女性の年齢はわからない‥
「それじゃマルコイ。よろしく頼むな。」
バーントさんから依頼書をもらったのでサインをする。
ミミウとまだブツブツ言ってるアキーエとともに明日の準備のためギルドを後にした。
翌朝、王都の北門に向かうと荷馬車と荷馬車を引く馬と共にキリーエと数人の人が待っているのが見えた。
「悪い待たせたか?」
「いや、ウチも今来たところだから大丈夫だよ。」
キリーエの他にはバーントさん、ガッツオさんが見送りに来てくれていた。
「マルコイ。キリーエの事よろしく頼むな。また王都に戻ってくるか?」
「ああ。サベントさんとの約束もあるから、戻って来るよ。」
「わかった。どれだけ強くなってるか楽しみに待ってるぞ。」
バーントさんが肩を叩いて来る。
もちろん避ける。
「最後までっ!」
避けた先にガッツオさんがやってきた。
「マルコイ。お前達ならもっと強くなるだろうな。俺も負けずにもっと上のランクにいくからな。また会うのを楽しみにしている。」
相変わらずガッツオさんは男前だ。
朝日に眩しいけど‥
「それじゃ行ってくる!」
王都での活動は短い間だったが、濃い冒険者生活だったな。
次来る時はもっともっと強くなって帰ってくるとしよう。
どこまで遠く離れても眩しいガッツオさんを眺めながらそう思うマルコイだった。
獣人国に行くには1か月程度の日数がかかる。
野宿や立ち寄った街や村で休みながら道中を進んで行った。
道中ではキリーエの身の上話などをして結構仲良くなれたと思う。
キリーエは王都で2番目に大きいアシット商会の次女で、アシット商会自体は長男が継ぐ事になっているそうだ。
他の兄妹は長男を補佐するためにアシット商会で商いをするらしいが、キリーエは自分で商会をやっていきたいらしくアシット商会でしばらく学び、今回独立したそうだ。
「やっぱり人の店を手伝うより自分で商いしておっきくしていった方が夢があるやんか!」との事でした。
商売に関してはしっかりしていて、今回の獣人国に売りに行く予定の干した果物をミミウが欲しがっていたら、しっかりと販売してらっしゃった。
かなり割安にはしてもらってたみたいだけど‥
その道中で獣人国との国境近くの村に寄った際に、見覚えのある穀物と出会った。
いや、正確には見た事はないのだが、頭の中に知識としてあるものだった。
村の人に話を聞くと家畜用にされている物で人が食べる物ではないそうだが、スキル【異世界の知識】が食べれるかも?ではなく、これは食べておけと言っている気がする。
このスキルもそのうち言葉を話しそうだな‥
「みんな、あの家畜用の穀物なんだけど調理すると美味しくなるみたいなんだけど‥」
「美味しいですか?どれがですか?どうしたらいいでふか」
噛みながら迫ってくるミミウ‥
あ、涎が滝のようになってる‥
「へえ〜、初めて見る穀物ね。この辺でしか採れないのかしら?」
アキーエが興味深そうに穀物を見ている。
「え?どういう事?なんでマルコイさんはそんな事わかるの?」
あ!キリーエがいるの忘れてた。
しばらく一緒に旅をしていたのだが、スキルについては話していなかった。言ってしまった手前誤魔化すのも難しいそうだ‥
どうするべきか‥この旅で信頼できる人物だとは思えているのだが、自分の秘密を話すべきなのか迷ってしまう。
「なんかスキルがあるんやろ?スキルにはそんなに興味ないから大丈夫。ウチが興味あるのはスキルの内容じゃなくて、それを使う人やから。それに家畜の餌になってた物が調理次第で美味しくなるとか、なんかお金の匂いめっちゃするんやけど!」
おう?思ってた反応と違った。
キリーエに秘密にするのは少し心苦しいが、本人が興味ないのなら、わざわざ伝える必要もないか。
穀物は保管されていたためか干してあったので、幾つかもらい実を穂先から落とす作業をする。
「道具がないから全部手作業だな。」
千歯扱きや石臼、米つき臼といった道具があればもっと楽になるんだけど。
手作業でするため、時間をかけて一合分くらいが確保できた。
水を多めに入れて炊く。
しばらく待っていると、いい匂いがしてきた。
ミミウさん‥下が涎で水溜りになってますけど‥
「できた!これがご飯って食べ物だ。」
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