「ミミウ、君ダブルスキル持ちだったの!?」
「あ!はい。一応ダブルスキル持ちです。」
俺もこの村でダブルスキルが2人もいるとは思っていなかったから、勝手にシングルスキルだと思いこんでいた。
一緒に戦って戦いやすさを感じた。それに話をしてミミウの裏表のない人間性に好感を持った。俺はミミウの俺はもうミミウに仲間に入ってもらうつもりになっていた。
アキーエにも相談して、ギルドに戻りながら自分のスキルの事を話す事にした。
「俺たちはミミウに仲間になってもらおうと思っている。ただ俺たちはしばらくしたら王都に行ってみるつもりだから、この村を離れる事になる。それでも構わないならパーティーに入ってくれないか?」
「こちらこそお願いします。実家は兄弟が継ぎますし、王都には前から行ってみたいと思ってましたから。」
「そうなんだ。それはよかった。じゃあ今日からよろしくなミミウ。」
「じゃあ今日から仲間ね、よろしくミミウ。」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
「ところで何でミミウは王都に行きたいと思ってたのかしら?」
「王都には美味しいご飯屋さんや、デザート屋さんがあると聞きましたから。一度は行っていろんな物を食べてみたいと思ってました!」
目をキラッキラさせて言うミミウ。口元もキラキラしているのはヨダレじゃないと信じたい‥
「じゃあ仲間には隠し事なしだ。アキーエしか知らないんだけど、俺のスキルは少し特殊で【模倣】ってスキルなんだ。模倣する条件は少しややこしいけど、多分殆どのスキルを模倣する事ができると思う。まあレベルは1でそれ以上は今のところ上がらないんだけどね。」
ヨダレを垂らしたまま固まるミミウ。
「ほえぇぇぇ、それって凄くないですか?いろんなスキルを使えるって事ですよね?」
「条件をクリアできたらってのがあるからね。なかなか難しいんだよ。スキルカードを見せてもらつて、さらにスキルを持ってる人からそのスキルを見せてもらって名前を教えてもらう必要があるんだ。」
「それに冒険者しかスキルカードを持っていないし、誰がどんなスキル持っているかわからないから簡単にいかないんだ。でも凄いスキルだとは俺も思ってる。」
「あっ!じゃあ私のスキルも真似出来るんですか?」
「そうだね。じゃあ【盾士】から。ミミウスキル名を言ってもらっていいかい。その後に大楯を渡してくれる。」
ミミウの盾は通常では持つ事ができないサイズと重さであり、【盾士】の補正があることでミミウも持つ事ができている。
「わかりました。それでは【盾士】」
(ピコーンッ)
『模倣スキルを発現しました。スキル【盾士】を模倣しました』
ミミウから渡してもらった盾を構える。
「補正があっても結構重いな。ミミウは凄いな。」
「その盾は私もレベルが上がってから持てるようになりましたから。」
なるほど。【盾士】の補正は盾を持つ時の筋力なんかに影響するんだな。
新たな発見をしつつ、次のスキル模倣を行う。
「それじゃ【遠視】の模倣をしてもいいかな?」
「もちろんどうぞ。えっと【遠視】は頭の中で切り替える感じです。頭で遠くを見ようと思ったら視界が開けて、遠くが見えるようになります。近くを見ようとするとすぐに戻ります。」
「ありがとう。じゃあ使ってもらってもいいかな。」
ミミウは、はいと頷くと遠くを見る。すると目が少し揺らいだように見えた。
「今【遠視】を使ってる状態です。」
(ピコーンッ)
『模倣スキルを発現しました。スキル【遠視】を模倣しました』
「ありが‥」
『模倣スキルのレベルが上がりました。スキル統合ができるようになりました。スキル【判別】と【遠視】を統合します。スキル【鑑定】に統合しました。』
「はい?」
どゆこと?
いきなりの事で事態が把握できていない。【遠視】を模倣できたので、遠くでも見てみよっかなと思っていたら、スキル【模倣】からのびっくりプレゼントである。
【模倣】のレベルが上がったら、模倣したスキルがレベルアップするのだと勝手に思っていたが、別角度から変化球がやってきた。
変化球は王都で最近流行っている‥
いやそんなのはどうでもいい。とりあえずスキルを確認してみる。
マルコイ
スキル【模倣Lv.2】【鑑定Lv.1】
模倣スキル
【属性魔法:火】【盾士】
「んなっ!」
あまりに驚きすぎて変な声がでた。
スキル【鑑定】が模倣スキルじゃなくなっている。
確かに【鑑定】は模倣したスキルじゃない。模倣したスキルは【判別】と【遠視】だ。この2つのスキルは模倣スキル欄からなくなっている。
しかしまさか統合したスキルとはいえ新たなスキルを発現するとは思ってもいなかった。
もっとこのスキル【模倣】を検証していく必要がある。様々なスキルを模倣していったらもっとスキルを発現する事ができるのかもしれない。
【模倣】スキル自体まだLv.2であり、レベルが上がる事でもっとできる事が増えると思えてきた。
もしかすると他にも統合できるスキルがあるのかもしれない。さらに強くなれるのかもしれない。そう思うとこの【模倣】というスキルの可能性に身震いしてくる。
底辺だと、使い物にならないスキルだと勝手に思い込んでいた時もあった。
自分に【模倣】を与えてくれた神様に感謝しつつ、開けた自分の未来を、可能性を信じて高みに駆け上がる事を決意した。
マルコイはスキル統合での新たな可能性に身震いしている横で、怪訝な顔でこちらを見つめる人に声をかける。
「アキーエさんや。なんでそんな顔をしているんだい?」
「突然変な声を出して動かなくなったから、ついにおかしくなったのかと‥」
「なんでだよっ!」
アキーエの誤解を解くため、今起こった事を一から説明する。
「それじゃ、本当のダブルスキルになったって事?」
「そうなる。多分だけどダブルどころかトリプルもクアドラプルもありえるかもしれない。」
「ちょ、ちょっと規格外すぎるんじゃない!?」
「俺もそう思う。でも模倣条件がレベルが上がってどうなってるかは確認が必要だし、条件が変わらないのであれば、スキル発現まで長い時間がかかると思う。」
「そっか、じゃあ模倣スキルを試すために、王都行きは変わらずってとこね。」
アキーエと話していると、ミミウの顔が百面相している。
「どうしたのミミウ。さっきから顔が驚いたり安堵したり面白い顔になったりで百面相してるけど。」
「すいません。マルコイさんに凄い事が起きた事はわかったんですが、王都行きがなくなると残念だなと思ったりして。でもよかったですぅ。」
うーむ、ミミウの口の端に涎が‥
じゅるりとかしてるし。食いしん坊キャラなんですね。わかりました。
「王都までは20日くらいかかるから、村に戻ってからそれぞれ準備しよう!」
村で保存食やポーションなどを準備して、王都行きをギルドに報告しに行く。
昼過ぎのギルドは閑散としており、受付嬢のナーシャさんも手持ち無沙汰のようで、ギルド内の掃除をしていた。
「ナーシャさんこんにちは。」
「あら?マルコイさんこんにちは。ミミウさんとは仲良くやれてる?」
「はい。おかげさまで。今日はちょっとご報告があって来ました。」
「俺たちそろそろ王都に行って冒険者活動をしてみようと思ってます。ここらのモンスターは粗方1人でも倒せるようになりましたし、冒険者をするからには王都で一旗上げてこようかと。」
「そっか。寂しくなるわね。でもこの村はモンスターもあまり出ないし、冒険者活動するなら王都の方がいいのは確かだもんね。わかった。ちょっとギルドマスターにも伝えてくるわね。」
数分後にガチ‥ギルドマスターのギバスさんがやって来る。
「ナーシャから話は聞いた。ここらのモンスターなら問題はないとは思うが、王都に行けば高ランクのモンスターも出てくる。特にマルコイはスキルが使えないのだから重々気をつけるんだぞ。」
「わかったよ。無理はしない。守る人達もいるからな。」
そんな言葉を聞いて顔を真っ赤にしているアキーエが何かぶつぶつ言っている。
「守る人って‥」
「どうしたアキーエ?」
「な、な、なんでもないわよっ!」
いきなり怒鳴られた。思わず腰を落として衝撃に備えてしまったではないか。
するとアキーエが側に寄って来る。
「スキルの事は言わなくていいの?使えないスキルどころか、ものすごいスキルだって。」
「別にいいよ。まだ可能性があるってだけだから。」
「でもマルコイのスキルが使えないと思われてるのが何か嫌なんだけど。」
「別にいいんじゃない?本当にもっとスキルが成長するのなら、絶対王都で活躍できると思う。そうしたらこの村にも俺たちの名前が広まるだろ。そう考えると楽しみになってこないか?」
「そうね、わかった。この村どころか、この大陸中に知れ渡るくらい頑張ってやりましょ。」
そう言ってとても綺麗な笑顔で笑いかけてくれるアキーエ。
その隣で深く頷くミミウ。
3人でならやれる気がする。高ランク冒険者になって、俺たち3人はこの村出身だと自慢できる冒険者になってやろう。
「すぐに出るのか?」
「準備もしたから明日にでも出るつもりだよ。」
「マージスにはもう伝えたのか?」
「冒険者になると言った後はもう会ってないよ。俺は家を出たから、もうアンバーエスト家の人間じゃないし。」
「そうか‥。王都のギルドはここみたいに緩くないからな。十二分に気をつけるんだぞ。」
マルコイはギバスとナーシャに別れを告げギルドを後にした。
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