スキルを模倣しまくって最強無敵!魔王?勇者?どっからでもかかってこいやー!

オギコン
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イレイスという名の魔道具士

公開日時: 2021年11月25日(木) 12:00
文字数:3,741

その女性はアリアに声をかけるなり、アリアに飛びついた。

しかしアリアがサラリと躱したのでそのまま盛大にコケた。


「も〜アリアちゃんたら恥ずかしがって。」


いろんな物を盛大に倒しながら起き上がる女性はアリアに向かって話しかける。


「イレイスそうやって抱きつくなら泊めないっていったでしょ。」


「ごめんごめん。久しぶりだったから、つい我慢できなくて。」


イレイスと呼ばれた女性がアリアに頭を下げて謝っている。

年齢は俺よりも少し歳上のようで20歳にならないくらいだろうか。

肩くらいの金というよりも黄色がかった髪の毛をふたつに分けて束ねている。

そしてこっちでは珍しいが眼鏡をかけている。

しかし真面目そうな印象ではなく、どちらかというと活発そうな顔をしている。


アリアに満面の笑みを向けていたが、突然此方を振り返り睨みつけてきた。


「んで、こっちの眠そうな顔している男が最近アリアに寄ってきた悪い虫かい?」


おいおい。

悪い虫て‥


「手紙で読んだけど、最近私のアリアと随分と仲良くしてるみたいじゃない?どこの馬の骨かしらないけど、アリアのどこが気に入って近づいてきたんだ?」


今度は馬の骨て‥

イレイスはそのまま睨み殺すほどの勢いで此方を見つめ言葉を続けてくる。


「この子が希少な【錬金術士】だから囲おうって魂胆か?それともこの子の容姿が可愛いからか?この可愛らしいそばかす、愛おしい狐耳、愛くるしい顔立ち‥」


うん。やばい人だったようだ‥


「‥‥‥った腰つき、少女らしい薄い胸‥はぁはぁはぁ‥」


この人犯罪を犯す前に捕まえた方がいいんじゃないだろうか?

そんな事を考えているとイレイスの後頭部をアリアが持っているスリッパではたいた。

なかなかの音である。


「もうこの人はそんなんじゃないって。私の友達のナーシス知ってるでしょ?あの人の命を助けてくれた恩人なんだよ。だから失礼な態度とらないの。」


「でも‥アリアに近づくのが目的でナーシスちゃんを助けたんじゃないの?」


「だから私の事も知らないでナーシスの事助けてくれたの。いくらイレイスでもこれ以上言うんだったら怒るよ。」


するとみるみるイレイスがしょげる。


「わかったわよ。悪かったわね恩人さん。もう言わないわ。仲直りに握手でもしましょう‥」


イレイスは明らかに反省しているようには見えない悪い笑顔をしたまま握手を求めてきた。

何か仕掛けるつもりだとしても握手なら何もできないだろうとたかを括り握手をする。

すると握手をしたと同時にイレイスのはめている指輪が淡く光る。

次の瞬間、イレイスの握力が急に強くなった。


なるほど。【魔道具士】だと言っていたから力を増幅する指輪か何かをはめていたわけだな。

かなり力を増幅しているようだ。

このままだと指の骨が折られかねない。

警告なんだろうが、やましい事もないし、やられっぱなしなのも癪に合わない。


(エンチャント:火)


スキル【エレメントナイト】のエンチャント:火を使い筋力をアップさせる。

思わぬ抵抗を受けたためかイレイスの笑顔が引き攣る。

そのまま2人して笑顔でお互いの手を潰しにかかる。

そして‥

イレイスの頭に再度アリアのスリッパが飛んできた。



握手バトルはアリアからのツッコミが入ったため引き分けとなった。


「私の名前はイレイスよ。改めてよろしく。」


横でアリアが睨みを効かせているせいか、イレイスが素直に挨拶をしてくる。

いや、唇がヒクヒクしているから素直ではないようだ。


「俺の名前はマルコイ。確かにアリアの【錬金術士】には興味があるが、俺は冒険者だからどちらかと言うとアリアのポーションやイレイスが作る魔道具に興味がある。だからアリアを囲うとか考えてないから心配しないで欲しい。」


「ふ〜ん。とりあえず信じてあげる。でも少しでも私のアリアに何かしようとしたら後悔させてやるから覚悟しておきなさい。」


すぐに後ろからスリッパが飛んでくる。


「誰が私のだ!」




話をしてみるとイレイスはかなり優秀な【魔道具士】のようで、先程使用していた力を向上させる指輪をはじめ、さまざまな魔道具を作り出しているそうだ。

しかし魔道具はかなり高価なのと、1つの魔道具を作るのにかなりの日数がかかる為冒険者レベルだとランクSかランクAでもかなり稼いでいる人くらいしか持っていないようだ。

実際、魔道具を作っているイレイスでさえ持っているのは指輪と緊急時用の魔道具の2種類くらいだという。

だが魔道具の有用さはさっきの握手で嫌というほどわかった。

特に筋肉質とかではなく、一般的な女性と同じ程度の体型であるイレイスが、エンチャントを使用した自分と同程度の力を発揮したのだ。

たとえ時間がかかるとしても、模倣して魔道具作製を行う事は必要だと思う。


「イレイス、会ってすぐにこんなお願いするのはおかしいと思うかもしれないんだけど、出来たら【魔道具士】の作業を見せてくれないか?」


「そうね確かにおかしいわね。何が目的なの?別に作業途中の魔道具も持ってきてはいるから見せるのは構わないけど、なぜ見たいのかが気になるわね。」


やっぱりそうだよな。

もうアリアやナーシスには伝えてもいいかなと思うくらいにはなっているが、いくらアリアの友人とはいえ初おな対面の人に教えるのは抵抗がある。


「勉強のために見てみたいって感じだけど納得できるか?」


「ふーん。普通なら嫌だけどね。別に見せたからって減るものじゃないし、アリアからも事前に見せてやってほしいって聞いてたから別に構わないわよ。」


イレイスは少し考えたように見えたが、特に気にする様子もなくそう答えた。


「それは助かる。詳細は言えないけど、俺のスキルは少し特殊でね。色々なスキルを見る事がスキルの成長に繋がるんだ。」


アリアには触り程度の説明はしていたので特に驚きもしなかったが、イレイスがまったく驚いた様子がない事が気になった。


「驚かないんだな?」


「そうね。いろんなスキルがある中で、そんなスキルがあってもおかしくないんじゃない?それにちゃんとその辺の事を教えてくれてのは好感持てるわよ。あ、でも私は男は好きにならないから惚れたらだめよ。」


イレイスは変な人ではあるけど、根はいい人なんだろうな。



アリアの工房でイレイスに魔道具作製を見せてもらえる事となった。


「魔道具作製の基本は3つね。素体を用意する事。素体に埋め込む魔力を溜めるとこができる魔力槽となる物を用意する事。一般的には魔石が用いられているわね。あとは魔力回路を素体に書き込む事。それで魔道具は完成するわ。」


魔力回路を書き込む?

他は何となくわかるが、その行為については見当がつかない。


「言葉にすると簡単なんだけどね。この魔力回路の書き込みが【錬金術士】か【魔道具士】しかできないのよ。」


「魔力回路は簡単にいうと何の特性もつけていない魔力を回路を通す事で、指定した属性だったり人体に対する効果を発現させたりする魔力に変える事ができるの。」


異世界の知識でいうところの電気を流して様々な道具を動かすような事なのかな。


「そして火をつけたり、冷風を出したりする回路は魔力の属性を変更するだけで可能なんだけど、人体に効果を出すような回路になると複雑な物になってくるの。体内の魔力と融合させてその魔力をその効果にあった魔力に持っていく必要があるからね。」


イレイスは自分の指にはめている指輪を撫でる。


「だから放出系の魔力回路は【錬金術士】でも作る事ができるけど、身体効果系の物だったり魔力がある物に対して効果を発現できるような回路を作製する事ができるのは【魔道具士】だけって事になるのよ。」


なるほど。

だからアリアも簡単な魔道具なら作れると言ったわけか。

だがスキルの恩恵があっても回路の作製はやはり時間がかかるものなのだろう。


「作製にはどれくらいの時間がかかるもんなんだ?」


「そうね。品物にもよるけど、簡単な物でも数ヶ月。複雑な物になると数年とか数十年なんてのもあるわよ。だって魔力回路は1日の使える魔力を全部使ったとしても数ミリ程度しか作製できないからね。」


そ、それはまた気の長くなる話だな‥


「だから私も移動の時には幾つか作製途中の魔道具を持参して移動するようにしてるわ。今回ロッタスに来るのにも2個程持参してるしね。」


イレイスは懐からペンダントのような物とピアスを取り出した。


「このペンダントはセイウットにある商会の会長から頼まれている物なの。数年前に世代交代をするって決めて受注されたんだけど、身体に入った毒物を無効化するものよ。世代交代する事で毒殺なんかを警戒したんだろうけど、かなり魔力回路が複雑だから恐ろしく時間がかかってるわね。ただその分法外な報酬がもらえるんだけど。」


セイウットの商会か‥

キリーエの実家だったりしないよな‥?


「それじゃ作業を始めてもいいかしら?」


イレイスは少しズレた眼鏡の位置を戻しながら確認してきた。

こうやってると普通に綺麗なお姉さんって感じなんだけどな‥

中身はだいぶ残念な人だからもったいない。

俺に説明しながらもアリアの方をチラチラ見てたし。


「ちょっと聞いてる?」


おっと。

いかんいかんイレイスの残念具合の確認じゃなくてスキルの模倣が目的だった。


「すまない。その前にギルドカードを見せてもらってもいいか?」

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