『ミミウちゃんのホットケーキ屋さん』は確かホットケーキがメインだったから甘い物しか置いてないと思っていたけど‥
まあ他の3人が嬉しそうだからいいか。
「マルコイさん。ホットケーキ屋だから甘い物しかないと思ってるやろ?」
はっ?
キリーエに考えを見抜かれた‥
顔に出てたかな?
「そうじゃないのか?」
するとキリーエはドヤ顔をする。
「ふっふっふ。ホット商会のメニューは日々進化してるんよ。いつまでも同じ物を作ってると思ったらいかんよ。今までなかった食材やから新メニューの開発を1週間で数種類考えて品評会をして、いい物をお店に出してるんやから。」
そう言えば飯処も色々メニュー考えてたもんな。
さすがというか何というか‥
よく見たら看板に本店って書いてある。
支店も出してるんだろうか?
「キリーエこのお店って何店舗か出してるのか?」
「お?さすがマルコイさん。良いところに気づいたやん。実は『ミミウちゃんのホットケーキ屋さん』はこの首都に2店舗で王都と共和国に1店舗づつ出店しとるよ。」
なんとまぁ‥
さすが商人。
ここぞって時の行動力が半端ない。
「ささ。それじゃどうぞどうぞ。」
キリーエに先導してもらい、席に着く。
「まずは定番のホットケーキからや。」
前にキリーエに教えたホットケーキが最初に出てきた。
しかし以前よりも豪華になっている。
「これはホットケーキにベーキングソーダを混ぜて膨らましてるやつで、前のホットケーキよりもふんわりしてるんよ。」
確かに俺が教えたやつよりも食感がふんわりしている気がする。
それに一緒に出してある炭酸水にも変化があっている。
レモンっぽいやつだけじゃなくてグレープとかオレンジなんかも種類が増えてた。
「祝勝会やから少し小さめにしているけど、コース料理みたいにたくさん出すから、お腹いっぱい食べてや。」
その後にさまざまな料理が出てきた。
ホットケーキの生地を薄く焼いて異世界のクレープっぽくしたやつや、たこ焼きみたいに丸くなってる物なんてのもあった。
それにキリーエが言っていた甘くないホットケーキも美味しかった。
焼く時に蜂蜜を少量しか入れていないようで甘さが控えめの生地だったが、それにお肉や魚系の物を挟んだ物が出てきた。
正直合わないんじゃないかと思っていたが、思いの外というか、かなり美味しかった。
塩っけのある具材に少しの甘みがある生地が絶妙にマッチしていた。
気を利かせてキリーエに、「これって持ち帰りとかで売っても売れるんじゃない?」って言ったらキリーエが何処かに行って30分くらい戻って来なかった。
戻ってきたと思ったら、明後日から食べ歩きできるように片手で食べれる、生地で具材を巻いてる物を出すらしい。
さすがだ‥
そんなこんなで平和なひと時を過ごしていたが、アキーエのとある一言でまた騒がしくなった。
「甘くないやつってお酒と一緒に食べても合いそうよね。わたしそんなに飲まないけど、これだったら
お酒もすすみそうね。」
アキーエがそんな事を言うもんだから、ついつい俺も調子に乗って言ってしまった。
「そうだな。美味しいお酒を考えてみてもいいかもな。」
「マルコイさん!その話よ〜く聞かせてもらおうか?」
あっ、やってしまった気がする‥
「そうだな。アキーエの希望だから、女性が飲みやすいお酒とかどうだろうか?」
今お酒として飲まれているのはエールというお酒だ。
それ以外のお酒はないため、アルコール好きの一部の人しか飲んでいないのが現状だ。
しかしエールという飲み物があるのであれば酵母を使った発酵するといった手順は確立されているわけだ。
それならば発酵の手順は出来ているのだから、後は蒸留機を使用して蒸留酒を作る事はできる。
蒸留は、混合物を一度蒸発させ、後で再び凝縮させることで、沸点の異なる成分を分離・濃縮する操作するものだ。
蒸留機がどういったものかはスキル【異世界の知識】を調べればわかる。
【異世界の知識】さまさまだ。
しかしウィスキーなんて作ったところで喜ぶのは酒好きのドワーフくらいなものだろう。
女性が喜ぶようなお酒となると果実酒やリキュールといったところか。
あとはキリーエの人脈で廃糖蜜なんかを確保する必要がある。
しかし果実酒なんかを作るのは甲類の焼酎が必要になるから連続式蒸留機なんかが必要になってくるけど、その辺はキリーエに丸投げしたら商人根性で作り出しそうな気がする。
少し説明したところで、キリーエから待ったがでる。
「少し待っとって。今からデザートが出るから、その間に準備しておくから。」
何の準備かはわからないけど、キリーエの目が尋常じゃないくらいギラついていたので、素直に従うことにする。
キリーエがすぐに人を呼んで、何か話をしていると思ったら何人かが走って店を出て行った。
何か店中が慌ただしくなってるんですけど‥
なんかすいません。
デザートは最初に食べた気がするけど、最後に出てきた物も美味しかった。
薄いホットケーキを何枚も重ねて、その間に甘いソースや白いクリームみたいな物が挟まれている甘いメニューだった。
クリームは卵の白身と蜂蜜で作ったメレンゲみたいなもののようだった。
美味しい料理に舌鼓を打っていると、キリーエが1人の男性と戻ってきた。
キリーエより背が小さいがとても筋肉質のようだ。
近くまで来ると理由がわかった。
ドワーフ族の男性だったようだ。
「あなたが新しいお酒を作り出す事ができる神か?」
はい?
この筋肉はいきなり何を言ってるんだろう?
「そうこの人がこの世界のお酒を改革することができる酒の神、マルコイ神なんよ。」
すいません、キリーエさんが何を言っているのかわかりません。
「おお!マルコイ神様!どうかワシにその技法を教えてくれませんでしょうか?もし私どもが、そのお酒を作り出す事ができたなら神様を祀る銅像を作り街に飾らせていただきます!」
「ご遠慮させていただきます?」
そう返事をすると、筋肉はこの世の終わりのような顔をしている‥
「いやいや、銅像とかいりませんて!俺はお酒の作り方をお伝えしますけど、それを製造するのあなたになるんですから。丸投げするだけですよ?」
すると筋肉の顔に輝くような笑顔が戻った。
だれ得なん?
「そうですか!粉骨砕身頑張らさせていただきます!」
なんかまた濃い人がやってきたな‥
「それで神よ!自分は何をしたらいいんでしょうか?」
近い近い。
「だから神じゃないって言ってるだろ!俺はマルコイでただの冒険者だ。」
筋肉は俺の手を握りしめようとしてくる。
もちろん避けますよ。
だってあんな筋肉ゴツゴツしてる手で握られたら俺の手壊れますもん。
「マルコイ様!私奴はロバットと申します!鍛治ギルドに所属はしておりますが、武具は作っておりません。主に生活に必要な道具を作っております。」
俺の手を握る事ができなかった手がワキワキしている。
そしてその手が懐にいきギルドカードを取り出した。
「スキルも【直感】であまり鍛治向きではないのですが、この【直感】に従って物作りをやって生計を立ててました。それで今回のマルコイ様の発案されるものは必ずつくるべきだと【直感】がいいよるんです。お酒の未来が、国の未来が変わると!」
何言ってんのこの人。
仮にお酒の未来変わっても国の未来は変わらんでしょ‥
(ピコーンッ)
『模倣スキルが発現しました。スキル【直感】を模倣しました』
あ、スキル模倣した。
暑苦しくてかなわないが、とりあえずスキル【異世界の知識】で調べた事を伝える。
エールを作成する時に使用している酵母や発酵といった工程のこと。
それらエールなど醸造酒を蒸留する事でできる蒸留酒のこと。
特に蒸留酒についてはウィスキーやブランデーといった酒好きにはたまらない物になるからな。
しかし目的の果実酒ついては、目指しているのはホワイトリカーという蒸留酒になる。
ホワイトリカーは単式蒸留法ではなく、連続蒸留法で連続的に蒸留してアルコール度数を高めたモノに加水して作成するものだ。
これによりアルコール度がある程度高く、尚且つ大量のお酒を作る事ができる。
廃糖蜜を使用して風味や色がついていないお酒を作り、それに果実類をつける事で果実酒を作る事ができる。
これなら女性にも飲みやすい果実のお酒が出来上がり今まであまりお酒を嗜む事がなかった人もお酒をのむようになるだろう。
自分で好きな果物入れて果実のお酒作れるって最高じゃないか。
あれ?
確かにお酒の革命だし、国のお酒というか経済事情も変わってきそうな気がするぞ。
これってさっき模倣した【直感】のせいなのか?
というかキリーエが商人として世界を牛耳るような未来が見える気がする‥
「おお!マルコイ様はやはり神だ!必ず!必ず神の仰ったものを作り上げてみせます!」
うーむ‥
確かに作り方に迷ったとしても、最善をスキル【直感】で導き出して作ってしまいそうだな。
物作りのスキルを持っていないと聞いたが、未知なる物を作り上げるのは彼のようにスキル【直感】を持っている人なのだろうな。
もしかしてキリーエはそこまで考えて彼を連れてきたのだろうか。
人としての中身はどうかと思うけど‥
もし本気で銅像とか作らないように時々見学とかいったほうがかいいのかもしれない。
あんまり近寄りたくないけど‥
後日、ロバットは蒸留機を作り上げてウィスキーやホワイトリカーを使った果実酒がホット商会で提供されるようになる。
キリーエが世界を征服する日は近い‥
やだこわい。
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