次の日に早くからギルドに向かった。
もちろんスキル検証のために討伐依頼を受けるためだ。
ギルドまでの道のりを歩いていると、何故かチラチラと視線を感じる‥
気のせいだろうか?
首都には朝早くから朝食を出している店がチラホラある。
ほとんどが昼から夜遅くまでやっている店だが、軽食を出しているような店は朝からやっているようだ。
その中で長蛇の列を作っているお店があった。
看板にはデカデカと『ミミウちゃんのホットケーキ屋さん』と書いてある‥
看板には似顔絵が書いてあって、うちのミミウさんによく似ている‥
「誰がやってるかは想像できるけど、ミミウは知ってたの?」
「はいですぅ。名前と似顔絵出したら、いっぱいホットケーキ食べていいって言ってくれたんですぅ。キリーエさんは優しいですぅ。少し恥ずかしいけど‥」
なるほど‥
キリーエとミミウの間で話し合いが行われていたなら仕方ないけど‥
「ミミウ。知らない人がご飯買ってやるって言っても、ついて行ったらダメだからね‥」
「そうなんですか?気をつけますぅ。」
ミミウさんが知らない人に連れて行かれそうで怖いです。
しかし昨日、【剣闘士】が解体された時に、【腕力】と【俊足】の模倣スキルが統合されずに残ってたので、ミミウに譲渡してるからな。
よほどの強者じゃない限りミミウを連れて行く事はできないだろうから大丈夫かな‥
しかしそれでもお兄さんは心配です。
ギルドに着き依頼を探していると、イザベラさんが声をかけてきた。
「あら〜んマルコイちゃん。今日は依頼探し?」
「そうですね。何か手頃なB〜Cランクの依頼がないか探してます。」
後ろから近づいてこないで欲しい‥
今戦っても正当防衛が成り立つような気がする。
勝てる気がしないけど‥
「じゃあこれなんかどう?レッドオーガの討伐。Bランクだけど下位になるわ。ブルーオーガはBランク上位になるけど、発見されたのはレッドオーガだから、マルコイちゃん達のパーティで倒せると思うわよ。」
「ありがとうございます。それじゃその依頼受けさせてもらいますね。」
「わかったわ。ところで闘技会の話だけど考えてくれてる?」
イザベラがススっと顔を近づけて聞いてくる。
もちろん近づかれた分離れたが‥
「もういけず。」
「まだ日数も立っていないので決めかねてますよ。前向きには検討してますから、待っててください。」
イザベラに依頼受付をした紙をもらいギルドから出ようとする。
「わかったわ。それじゃ気をつけていってらっしゃい。」
イザベラに軽く手を振りギルドを後にした。
なんか色々とツッコみたいが身の危険しか感じない。
身体が防衛反応を起こしているのだろう‥
首都から離れ、オーガが発見されたとされている付近に着いた。
そこで模倣スキル【探索】を使用する。
身体から薄い波のようなものがでるような感じだ。
それが物に触れると、どういったものか頭の中に入ってくる。
スキルを使用した場所から、そう離れていない場所に人よりも大きな動いている物を発見したので、アキーエたちに確認する。
「オーガらしきものを発見したよ。でも戦う前に少しスキル検証してもいいか?」
依頼対象らしきモンスターも発見できたので、少しスキルの検証をして向かうとしよう。
すぐにオーガをらしき物を探すのではなく、開けた場所でスキル検証を行う。
まずは一通りエンチャントを試してみるとしよう。
最初にエンチャント:風を発現させる。
浮遊感を感じる。
少し身体が浮いたような気がするが、足にはしっかりと地面の感触がある。
身体の具合を確かめて前に進む。
後ろから風を受けているような猛スピードがでる。
んぎぎぎ‥
す、すこしスピードが速いな‥
とりあえず慣れるまでは全力ではなくて加減して走るとしよう‥
次はエンチャント:火を発現する。
身体が急に熱くなる。
身体に流れる血のスピードが速くなった感じだ。
近場の石を拾い力を込める。
石は2つに割れた‥
もっと力を込めると粉々になるかもしれない。
後の2つのエンチャントは必要時に使用するとしよう。
エンチャント:土の検証をアキーエに試してもらうと致命傷を受けるかもしれないし‥
軽くスキルを試したところで、オーガらしき物のもとに向かう。
赤い身体をした、俺よりも2まわり程大きな身体をしているモンスターを発見した。
報告であったレッドオーガのようだ。
オーガは此方を見つけると顔を緩めた。
餌を見つけたと思ってるんだろうな。
しかし残念ながらお前は今から俺に倒される。
ここらで人を襲った自分を責めるんだな。
エンチャント:風を発現させ、オーガに向かって軽くダッシュする。
自分でも驚く程のスピードがでる。
オーガには俺の姿が急に消えたように見えたのではないだろうか。
オーガの懐に入るとエンチャント:火を発現させ、剣を斬り上げる。
硬いはずのオーガの皮膚を軽々と斬り裂く。
思わぬ負傷にオーガは狂ったように腕を振り回す。
!!
思った以上のスピードでオーガの懐深く入ってしまった事で振り回す腕を避けられそうにない。
すぐにエンチャント:土を発現させて、横殴りの攻撃に対して盾を滑り込ませる。
物すごい音がして身体が吹っ飛ばされ‥ない?
盾にはエンチャントしていないので、歪に曲がっている。
しかし身体能力が上がっているためか数歩ほど後退させられただけだった。
盾を持っていた腕にもダメージはない。
これって凄くないか?
身体一つでオーガと渡り合えそうな気がするぞ‥
しないけど‥
エンチャント:火を発現したままオーガの腹に剣を横薙ぎする。
するとしばらくたってから、オーガの上半身と下半身がズレて上半身が地面に落ちる。
こ、これは思ってた以上にすごいスキルだな。
このスキルなら魔族とも十二分に渡り合えそうだ。
エンチャント:水は検証できなかったけど、オーガ討伐でエレメントナイトのスキルの凄さがわかった。
「思っていた以上にすごいスキルだったよ。それじゃ依頼も完了したし街に戻ろうか?」
アキーエ達に伝えて戻ろうとすると、【探索】に別の生物の反応があった。
此方に向かって来ているようなので、しばらく待ってみると先程のオーガと同じくらいのサイズのモンスターが現れた。
さっきのレッドオーガと違うところは、色が青い事。
Bランク上位のブルーオーガがマルコイ達の前に現れた。
ブルーオーガは俺たちに目もくれず、死んでいるレッドオーガに近づいていく。
そして動かないレッドオーガの前でしばらく佇み、突然咆哮を上げた。
そして此方を物凄い形相で見ている。
「もしかして番だったのか?」
ブルーオーガは問いかけに答えるはずもなく、此方に迫って来た。
そして腕を大きく振りかぶり叩きつけようとする。
すると俺とブルーオーガの間に小柄な人影が入り込む。
ミミウはタワーシールドを軽々と持ち、ブルーオーガの攻撃を受ける。
俺がレッドオーガに攻撃された時のように、後退する事もなく微動だもせずに攻撃を受け止めている。
ブルーオーガは自分の攻撃が止められた事に苛立ったのか、逆の腕で攻撃しようと振りかぶるが、その腕にミミウのショートスピアの連続した突きが刺さる。
痛みに後退したブルーオーガを追いかけるように迫るアキーエが魔力を放つ。
「炎球!」
炎の塊がブルーオーガの上半身にあたり燃え上がる。
ブルーオーガはたまらず地面を転がって炎を消す。
炎をようやく消し止め立ち上がったブルーオーガにエンチャント:火を発現させて斬りつける。
ブルーオーガの硬い首を斬り裂いた事で、ブルーオーガは絶命する。
「ふぅ。Bランク上位のモンスターもなんとかなったな。」
「そうね。でもこのモンスターって‥」
「番だったかもしれないってことだろ?だとしたらギルドに報告しとかないとな。レッドオーガとブルーオーガが2体出てくるとか、Bランク依頼じゃないだろ。別々だったからよかったけど。」
「そうね。一応報告しときましょ。でもやっぱりマルコイのスキルとんでもなかったわね‥」
「スキルレベルが1だったけどこれだけ戦えるなら、レベルが上がったらとんでもないだろうな。系統進化からは外れているスキルだと思うし、スキル進化はないかもしれないけど、十分過ぎるな。」
「しばらくはスキル能力の把握とレベルアップしたいから付き合ってくれるか?」
「わたしも【格闘士】に慣れときたいからいいわよ。」
「私も感覚が違うからもう少し訓練したいですぅ。」
その日はもう少しモンスター討伐を行い、今後も定期的に訓練とモンスター討伐を行うことを決めて首都に戻る事にした。
ギルドに戻りイザベラ‥さんのもとに向かった。
「レッドオーガの討伐終わりました。それと番と思われるブルーオーガも現れたので依頼にはなかったけど討伐したよ。」
「え?レッドオーガとブルーオーガが同時に現れたの?」
「いやレッドオーガを討伐した後にブルーオーガが現れたんで1体ずつ討伐する事ができた。同時だったらヤバかったかもしれないな。」
「それでなんで番って思ったの?」
「そうだな。明らかにレッドオーガを倒した俺たちを見て激昂していたからな。全くの無関係じゃないと思う。」
「なるほど。番の可能性も考えとく必要があるってことか‥」
驚くとおねえ言葉が男に戻るのか‥
顔もおっかない‥
「あらやだ〜ん。わかったわギルドマスターには報告しとくわね。それにしてもBランク上位のブルーオーガまで討伐出来るなんて、やっぱりマルコイちゃん達闘技会でるべきよ。」
顔は変わらず怖い‥
「考えとく。」
【剣闘士】の時はバラックスさんに負けたけど、今ならいけるかな?
闘技会に出るのも面白いかもしれないな。
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